軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

89

夜明け前に起き、歩き出すとまもなくカルデラの頂に到着したようだ。

ようだ、というのはやはり木が鬱蒼と立ち並んでいて見通しが悪くはっきりとは分からないからだ。

とりあえずキツイ登りはここまでのようだ。

ここから道沿いに峰を歩き進めば右手眼下にポリオリが見えてくるという話だ。

ということは何処かで見晴らしが良くなる筈だ。

そう信じよう。

とりあえず難所は抜けたと思うのでお茶休憩にする。

リロの使ったフレイムピラーを使いたいのは山々だが詠唱を覚えていないし山火事になったら嫌だし急いでもない。

俺は地べたにカップを置いてガスコンロの中火のイメージで湯を沸かした。

沸いたら茶葉を入れ、ある程度冷めるのを待つ。

カップの取手が持てるようになったら飲み頃である。

酸っぱくてあまり美味くはないが温かい飲み物は良い。腹が暖まるし気持ちの切り替えになる。

お茶に息を吹きかけつつ辺りを見回すと近くの木の枝に鳥がとまっているのを発見した。

これまた中サイズの鳥。

横顔でこちらを見ている。

食いたい訳でもないが、魔術で捕まえられるか試してみたくなったので魔力を鳥に向かって伸ばす。

鳥まで届けば脚に氷球を付けてもいいし縛りつけるように精霊にお願いしてもいい。

と、鳥は飛び立ってしまった。

勘がいいのか、たまたま偶然か、あるいは魔力が見えていたのか判断は付かない。

しかし、なんとなく魔力が見られていた気がした。

次は魔力を見られないように地面伝いに這わせて木の幹に這わせて絡め取ろう、そう思った。

お茶の残りを捨て、水魔術でカップの底に残った茶葉を洗い流してまた歩き出す。

ポリオリまであと10日ほどある筈だ。

2日後、木がまばらになり低木が増えた。

道も岩がちになり歩きにくくなってきた。

風も強く、寒い。

そもそもこの道で合ってるだろうか?

どこかで見落としやすい分岐でもあっただろうか?

不安になり、この坂を越えて何もなかったら一旦戻ろうと考えたその先、遥か先に街が見えた。

いや、街ではない。あれは巨大な砦だろうか。

山間というのか谷底というのか、切り立った崖の隙間の向こうに巨大な蟻塚のような歪な塔が見えたのだった。

間違いない。

あれが炭鉱都市ポリオリだ。

道が間違っていないことが分かって良かった。

平らな乾いた場所ならふんだんにある。

しかし風が強くて寒い。

新しい課題が生まれた。

風を避ける寝床を作らねば。

大きな岩の陰、灌木の横、稜線を少し降りた場所。

色々な場所に寝転がってみたが、風の方向が定まらないせいでどれも駄目だった。

今までの寝床を発展させ、縦穴を掘って寝転んでみたところ風は避けれたのだが砂が降って来て顔に掛かり良くないと分かった。

いっそ魔術で小さな小屋を建てるか?

ここらの地面はかなり砂っぽいが水を含ませれば形は作れるだろう。

いや、含ませた水が乾いたら屋根が落ちて来そうだ。

屋根、屋根、屋根。

余分な布があれば縦穴式の寝床の上部に砂避けの布が張れるのに。

テントのように三角斜めの屋根ならどうか?

いや、やっぱり土だと乾いたら崩落するだろう。

ヤバい。

結構、日が傾いてきた。

陽の光を遮る木がないのでまだ明るいのだが、暗くなる前に寝床は確保したい。

仕方ない。

ひとまず今夜は縦穴式で砂には我慢するか。

もう掘ってあるしな。

見ると、これから棺桶を納めるのかというような縦長の四角い穴の脇に、掘り出した土が盛られている。

この土で囲いの壁を作れば砂避けになるのでは?

やってみた。

先に土に水を含ませ、乾燥して崩落しても中に落ちてこないように穴から30cmほど離して高さ30cm、厚み10cmの壁を建設した。

穴の深さは50cmほどあるので足元側には段差をつけてある。

寝転んでみる。

おお、風が避けられ砂も落ちてこない。

これだ。

近くの地べたに置いておいたリュックを取りに出て、振り返って穴を見ると結構大きくて邪魔な感じがした。

朝になったら埋めとかないとクレームが来るかもしれない。

俺は穴に戻り粥を炊くことにした。

寝床に座り込むと、頭のてっぺんには風が強く当たった。

まあ、こんなもんだろ。

鍋を火にかけて驚いた。

すごく温かいのだ。

熱の反射ってこれか。

前に焚き火をした時にリロに反射板を建てないと意味がないとか言われたけど、まさにコレがそうだ。

狭い壁に挟まれて火を使うと屋根がなくてもガスコンロの中火魔術でも温かいんだ。

俺は牛、昆布、ナッツ入りの粥を食ってデザートにドライフルーツを食って満足して寝た。

翌朝、やはりこの寝床を壊して埋めるのは惜しい気がしてこのまま残す事にした。

稜線といってもこの辺は割と広いし馬車も通らない筈だから大丈夫だろう。

落ちて怪我でもされると困るが、この岩だらけの道で足元を見ないで歩く馬鹿はいない。

なんか遺跡の発掘現場みたいで面白いし。

そんなことを考えながら俺は出発した。