軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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俺は急いで皿と鍋を洗い片付けた。

皿や鍋はその日のうちに洗ってしまわなければならない。

面倒だなどと放置しておいたら保健所に怒られて営業停止にさせられてしまう。

まだ目にはしてないけどこの世界にだってネズミやゴキブリは居るのだろう。

奴らは何処にだっている。

ユビキタスという言葉は奴らの為にある言葉なのだ。

部屋に戻るとやはり長官は薄着になって待っていてくれた。

こうして見るとやはり若いのだな。

偉い人の口調と、若干の脂の乗りの良さで年齢より上に見えてしまっていたが、まだハタチと聞いた今は、むしろ遅くまで残った処女太りという感じに見えてしまう。

そりゃ体重も気にするよね。

「さあ、今日もやりましょう。昨日のメニューに更にふたつ追加します。先にその動きを説明しておきますね」

「うむ」

「ひとつはバーピー。その場でしゃがみ手をついて脚を後ろに蹴り出して腕立ての姿勢になります。そこからまた脚を引き寄せて立ち上がるだけです」

「むう。また楽な運動と思わせて続けると辛い奴だな」

「まさしく」

前世で俺はバーピーが身体に良いことは百も承知だったが一回だけやってみて即やめた過去がある。

その時トライしたのは腕立てとジャンプが入る奴だったので今度はヘマはしない。

ラクなので始めて、慣れたら強度を上げるのだ。

「もうひとつはジャンピングジャック。その場でぴょんぴょん跳ねながら足を開いたり閉じたりを繰り返します。その時腕も上げたり下ろしたりします」

「滑稽な動きだな」

「バーピーの後はこれくらいが良いのではないかと」

「ふむ」

「では始めましょう」

クランチ、プッシュアップ、ワイドスクワット、バックエクステンション、プランク、マウンテンクライマー、バーピー、ジャンピングジャックの8種目のサーキット・トレーニングだ。

正確な時間は測れないけど休憩を10秒でやればHIITの効果があるはずだ。

それに忘れてはいけない。

階下で聞き耳を立てているパコに激しいギシギシ&ハアハアを聞かせてやらねばならない。

どんな激しいプレイなのかと驚かせなければナメられてしまう。

しかし、やってみて後悔した。

これはスゲー辛い。

特に後半の3種はまさしく地獄。

途中、腹筋に効くメニューが続くのが相当にヤバイ。

俺たちは後半は声を上げながら事に及んだ。

昔から声を上げながら筋トレする奴はキモいと思ってたけど気にしてられない。

だってツライのだ。

俺たちはその場にへたり込んで息も絶えだえだった。

「これは、、、なかなか、、、」

「非常に、、、ツライですね、、、」

床に手を付くとそれがもうツライ。

俺たちは自然と並んで仰向けになった。

「、、、本当に尻が引き締まるのだろうな」

「腹がへこむヤツも追加しましたからね」

「確かに足を引き寄せるのは腹にくるな」

「クランプ、マウンテンクライマー、バーピーの流れは順番変えましょうか?」

「どうするのだ?」

「マウンテンクライマーはプッシュアップの後にして、バーピーとジャンピングジャックを入れ替えましょう」

「うむ、よくわからん。書いておいてくれ」

「はい」

俺はノロノロと立ち上がって地図の横に置いてあった粘土板にサーキットメニューを書いた。

地獄の8分間!

激痩せ注意!

アフターバーン効果で1000キロカロリー消費!

そんなサムネが頭をチラついた。

ああ、プロテインが飲みたい。

光魔術はまたこんどだ。

翌朝、また船長室の時計の鐘の音で眼を覚ますと直ぐに厨房へ向かった。

ロッコを手伝わなければなるまい。

せめて米洗いの水だけでも。

昨夜はやはり爆睡だった。

サーキットトレーニングが効いたのか瞑想が効いたのか。

やっぱ瞑想だろうな。

汗ダラダラの心臓バクバクだったのが瞑想をするとスッと収まるのだ。

ただ座っててもこうまで落ち着くまい。

アフターバーン効果で1000キロカロリー消費のはずだ。

ひょっとして瞑想がアフターバーン効果を消してる?

いや、考えすぎるな。

トレーニングとマインドフルネスでグーグルのように株価爆上げを狙うのだ。

ジェフ・ベゾスだ。

いや、ジャック・マーだったかな?

まあ良い、とりあえずは米炊きだ。

と、甲板に上がってみると何だか活気がある。

みんな朝の身支度をいそいそと行っていて、両舷に降ろした筏の引き上げを始めている奴もいる。

起床ラッパも吹かれていないのに何事か。

そんな勘の悪い俺もハッと気づいた。

風が吹いてる!

ここ数日ずっと凪でちっとも船が進まなかったのが解消される!

風が吹いてるってだけのことだが、何だか暗雲を吹き払ってくれているようだ。

いや、天気はずっと良かったんだけどね?

みんなずっと口には出さなかったけど風が無いのがストレスだったのだ。

身体は休めて有難いけど、やることがないってのはどうにもキクのだ。

俺は飯作りがあったからまだ良かったが、櫓組はあの暗い部屋でただスタンバイしてるのはさそがし辛かっただろう。

甲板組だってただ半日を日向ぼっこで過ごすのは辛かったに違いない。

「お、オミ。遅えじゃねえか」

声をかけて来たのはロッコだった。

「ロッコさん早いですね」

「おお、昨日の晩から風が出始めてよ。船員は早く船を出してえもんだから船長に詰め寄って大変だったんだ」

「そうだったんですね。全然知らなかったです」

「ああ、でも船長は夜間航行はしないって言うもんだから何人かが長官室に直談判しに行ったんだけどよ。お前がすげえ頑張ってたらしくてみんな青い顔して帰ってきてよ。笑えたぜ」

む、そんな早い時間の話だったか。

「それで朝すぐに船を出すだろうから早めに飯も用意しといたんだ」

ロッコ流石だな。

気が利く。

「ええと、僕が頑張ってたってのは、、?」

「しらばっくれるなよ!」

ロッコは左手で作った穴に右手の指を出し入れするジェスチャーをしてみせた。

下品だぞロッコ。

「魔術も料理もすげえが、そっちもすげえとは驚きだぜ。そんなナリしてよ」

言われて自分を見降ろしてみれば頭と腕を出す穴を開けただけのズタ袋と同素材のフンドシ。

確かに貧相そのものだな。

「陸に上がったら服を手に入れたいですね。今、我々が向かってる先って街はあるんですか?」

「ま、あるけどジロ沿いじゃロクな服は手に入らねえな」

「と言いますと?」

「河の北側は製粉所と軍の施設。南側はサナ人のジロ教信徒の聖地だ」

国境線って感じか。

「危険な場所ということですか?」

「いや、そんなにピリついてはいねえ。ただアーメリアの子供服は手に入らねえかってことさ。ただしサナ人の服なら寄り取り見取りだ」

「へえ」

「なにせサナ唯一最大のバザールだ。最高級が揃ってる」

「はー」

最高級は俺には関係なさそうだ。

何しろ今んとこ無一文だしな。

それとも給料っていくらか出るのかな?

フンドシに隠し持ってる吸魔石を売るのが先だな。

ただ問題がある。

先に着替えを入手しないとフンドシが脱げないってことだ。

フンドシを切り裂かないと吸魔石は出せない。

石がこぼれ落ちないように10個のポケットはガッチリ縫い塞いであるのだ。

フンドシのジレンマって奴だ。

「なんにせよ、早く飯食っとけ。今日は忙しいぞ」

「あ、そうですよね。航行するとなればキコさんの手伝いをしないと」

俺は慌てて食堂に向かおうとしたがロッコの声が俺を引き留めた。

「なんで今更お前が船員仕事をしなきゃならないんだ。お前は俺と一緒にトローリングだよ」

トローリング?

なんだっけ?

詐欺だかコンピューターウィルスの手法?

「風が良ければ引網、そうでもなけりゃ釣りだ」

ああ、流し釣りのことだったか。

「天才少年の釣りの才能をとくと拝見させてもらうぜ!」

ロッコはのけ反ってカカっと笑った。