軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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翌日の朝は櫂の準備だったので気が重かったのだが、キコたちみんなの機嫌が良くて救われた。

夜間も風待ちということで甲板組は甲板で、櫂組は櫂室で寝て何時でも航行が始められるよう待機していたのだが結局風は吹かなかったのだそうだ。

俺?

俺はベッドでぐっすりだったよ。

だって長官も何も言わなかったしさ。

いや、逆に仲間外れにされた気分よ?

俺だって働く男として甲板で夜露に濡れたかったさ。

、、、実は昨日の夜、昆布を夜露に濡らさないよう回収に来たらみんなポジションに付いたまま寝てるからビックリしたんだよね。

うん、びっくりしたから慌てて作戦室に戻ってベッドに潜り込んだよ。

だってびっくりしたからね。

それはそうと、昨日の飯が美味かったから長官が秘蔵の士官用のベーコンを提供してくれたと皆に告げたら長官の好感度はさらにアップしてたよね。

長官は俺に何か褒美をよこすべきだと思うんだがどうだろう?

本来は俺の手柄を結果的に長官に譲っているのだからさ。

それはそうとして、大砲の弾の錆落としをガリゴリやってたら副船長が「オミ、ボートの用意ができてるぞ」と伝えに来た。

なにやら俺は既に投網&飯係になってしまっているようだった。

まあ、薄暗い艪室に居るよりは網を投げてるほうが気分はいいのだが、投網も厨房もいかんせん孤独なのよね。

せっかくみんなでワイワイしてるのに独りぼっちでチャプチャプしなきゃならんのはどうなのかと思う。

せめて首に笛を下げてスコアボードを持ったメガネが似合う隠れ美形マネージャーとかが欲しい。

ダラダラしてると、

「センパイ☆ サボっちゃ駄目じゃないですか!」

とか叱ってくれるのだ。

部室でふたりっきりなったりすると、

「センパイ☆ あたしセンパイが本気で練習してくれるなら、、、」

みたいな展開がまっているのだ。

と、独りボートで網を投げながらアホな事を考えていると海面の一部が輝き出した。

見ると飛魚が一斉に飛び立ち、一瞬だが空飛ぶ絨毯のようになった。

それがこちらに向かって飛んで来る。

俺はもう既に投網を投げるモーションに入ってしまっていたのでそのまま投げる事にした。

飛魚が入るか、それを追ってる大物が入るか際どいラインだ。

カツオレベルの大物が入ればラッキーだがマグロランクになるとこの網で捕獲は無理だ。

サメだったりしたら、、、。

南無三!

飛魚が俺の身体にぶつかって来た。

かなり痛い!

ボート内にボトボトと落ちる。

あ、網は、、、?

ぐっ重い!

慌てて引き揚げると大量の飛魚が入っていた。

これ全部をひとりで捌いて干すのか?

俺に必要なのはマネージャーじゃなくて一緒に魚を捌いてくれる漁協のおばちゃんだったようだ。

合図を送って船に戻ると満杯になったボートを見て船長も副船長も呆れていた。

「それ、料理できるか、、、?」

「ええ、できますとも!」

何故か俺は怒って答えた。

何なんだか俺にもよくわからない。

とにかく早くコイツらを捌いてしまわなければ。

俺はボートの中に氷をドバッと出して、そのまま甲板で捌かせてもらう事にした。

胸びれから包丁を入れて頭を落とし海に投げ、胸から腹を裂いてワタを出し海に投げ、3枚におろすと身は海水を入れた樽へ、中骨は別の小樽へ。

ひと息に、といっても2時間はかかっただろうか、飛魚を捌き終わると俺は甲板にドバッと水を流して一気に魚の血を洗った。

ボートの中も洗って伏せておく。

身を入れた方の樽の海水を新鮮なものに入れ換えてから、海水を凍らせた氷をドバッと入れて魚を冷やす。

中骨も綺麗に洗い、これはあとで熱湯をかけてから昆布と一緒に出汁を取ろう。

なんとか飯の準備に間に合うように飛び魚を処理できたぞ。

それにしてもなんで飛魚って身体が四角いんだろうね?

そう思って目をあげると長官が立っていた。

「あ、長官」

「お前凄いな。さっきの氷をドバッとやったのも凄いが、今の水の量を出してなんともないのか?」

「ええ、まあ普通です。氷は海水を凍らせただけですし」

「ほう」

長官は魚の樽の氷を手にとり少し舐めた。

「本当だ、海水だ」

「浸透圧をあんまり変えないほうが味が落ちないとかって聞いたもんですから、、、」

「どうしてそんなことができるのだ?」

「どうしてとは?」

「今、お前の技を見たわたしは同じようにやれるだろう。しかし魚を冷やすことを思いついても細かく砕いた海水の氷を大量に出すなんてことは思いも寄らなかった。お前の村ではそのように魔術を使う者がいたのか?」

あちゃ、そういう話か。

今は完全に漁船の水揚げのイメージだったからなあ。

ほら、ニュースであるじゃん?

今年はサンマが豊漁です! みたいなの。

魚がザーッ 氷がザーッ て。

「どうなのだ?」

「いや、あのあんまり考えないで、身体が勝手に動いたって言うか、、、」

「ほう、、、」

「、、、、、」

「誰かに教わった訳ではないのだな?」

「ええ、それはもちろん。だって長官に見てもらうまでウォーターボールも発動しなかったじゃないですか?」

「そうか、、、そうだったな」

長官は何かちょっとふに落ちない様子だったが踵を返した。

俺にとって当たり前のこともこっちの人間には奇異に映ることもあるのだから気をつけなければ。

三つ編みの件で思い知らされた筈だったのだが、魔術で色々できるとなるとちょっとあからさまにヤバイよな。