軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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俺たちは昼過ぎには領事館を出た。

長居すると酔うまで飲んでしまいそうだった。それに露店で買い物がしたい。

東門の外の港エリアは日曜でも露店が出ている。軍の船は曜日に関わらず出入りがあるので開けている店が多いのだ。ただし職人たちは休んでいるので町は静かだ。露店もいつもよりもずっと少ない。

一杯売りの酒屋なんかを興味深く眺めながら俺たちは干し肉とチーズを手に入れた。少々割高らしいが仕方ない。そして高いのを我慢して牛のを買う。羊の干し肉はハズレを引くと獣臭いのだ。ハズレじゃなくてもそこそこ匂う。

あと気をつけないといけないポイントが加熱済みであること。できれば温燻したものが良い。干し肉とひと口に言っても、こう作るみたいな決まりはない訳で、茹でてから干す「茹で干し」もあれば生のまま干したのもある。安いからと飛びつくと、塩もしてない無加熱だったりしてそのまま食べるのに適さないのだ。

作るところをそこら辺でたまに見かけるが、細切りにした肉を洗濯紐に引っ掛けて干してあるだけである。もちろんそういうところはハエがブンブンしている。

店主に作り方を詳しく聞くだけでなくしっかり匂いを嗅いで、できれば味見をしてから買う。商品に自信がある店はたいてい小銅貨を渡すと味見させてくれるのだ。

買い物を終えてアカデミーに帰ろうと歩いていると、いつものリ行の奴らが道端で口論していた。熱くなって言い争いをしているというよりもぐったり項垂れて責任のなすり合いをしているようだった。

「おい、どうしたのだ」

「あ、ポリオリの、、、いや、実は僕たち王都ではガチョウの羽が高く売れるって聞いて、買えるだけ仕入れて来たんだけど、やっぱり子供だからって足元見られてしまって」

「違うよ、下処理してから出直せって突っ返されたんだ」

「ガチョウの羽の下処理ってなんだろう、知っているかい?」

「どれ、見せてみろ」

リ行たちはリュックから麻袋を出して見せてくれた。毟られた白い羽根が無造作に入っている。

王子はひと目見て言った。

「これでは駄目だ。一度寮に戻るぞ」

一行を引き連れて寮に戻る。リ行たちは四階に来るのは初めてらしく緊張した面持ちであちこちキョロキョロしている。俺たちの部屋に通すと床に車座に座って袋の中身を床に出させた。

王子がデカい羽を一本取り上げる。軸が太く大きく立派なヤツだ。

「この風切り羽、これが羽ペンとして売れる」

別の風切り羽を取り上げてふたつを掲げた。

「こっちの方が高値が付く。こっちはまあ半額以下のゴミ同然だ」

「え、どういう違いがあるんだい。僕らにはさっぱりだよ」

「こっちは左翼の風切り羽だ。右手でペンとして持った時に羽の曲がり具合が手に沿うだろ?」

「あ、本当だ。でもたったそれだけで?」

王子は右翼の羽を手にした。確かに僅かな違いだが、ペンがエビ反る感じになって落ち着きが悪い。見た目に違和感がある。

ちなみに、この世界では左利きは不吉、不浄とされ、幼い頃に右利きに矯正される。農民はともかく、町人や貴族は右利きしか居ない。

「こちらは商人に卸して、こちらは学内で安く提供すれば良いではないか」

「え、学内に露店を開くのかい?」

「いやいや。普段から右翼のペンを使っていれば欲しい奴は声をかけてくるだろう。金のない連中は細くて持ちにくい鶏の羽を使ったりカラスを捕まえたりしてるくらいだからな」

「なるほど」

「そして下処理だったな。まず、軸先だけを一晩水に漬け、その後にあまり時間を置かずに熱い砂に刺してそのま冷ます。こうして軸の中に残る脂肪を抜くんだ」

「脂を抜くのか。じゃあ、かなり熱くないとだな」

「数本だけならコップに洗って乾かした砂を入れてパン窯にパンが焼けるまで入れておいてそこに刺すんだがな」

リ行たちは真剣な眼差しで聞いている。

「凄い詳しいんだな。やった事があるのか?」

「田舎の貴族は狩りを楽しむからな。雉や七面鳥が獲れたらそのようにしてから記念に身内に配ったりするんだ」

「なるほどなあ、、、」

ヤバい。全然知らなかった。辞書の執筆に借りていた立派な茶色い柄の入った羽のペンはそうしたものだったか。ガチョウの白い羽根をペンに使うのは少々ダサいと思ったのだけど、俺が悪かった。ちょっとばかし世間知らずだったわ。

「こんなことも聞くのは恥ずかしいんだけど、下処理をしたこのガチョウの羽ペンは幾らになると思う?」

「ガチョウだと高級品ではないから購買なら銅貨四枚ってとこだろうな。商人への卸値なら銅貨一枚くらいじゃないか?」

店頭価格が四千円でも卸値が千円か。大した稼ぎにはならないな。

しかしリ行たちはパッと表情を明るくした。

「それなら悪くないな。借金しないで消耗品が買えそうだよ。何よりも紙に困らないのはありがたい」

俺はハッとした。彼らはあのディーヌベルクの平民なのだ。彼らは旅費ももらえず、何なら親の反対を押し切って碌な装備もなしに野宿でここまで来たのだ。

それに引き換え俺はといえば、何だかんだとポリオリ王族の庇護の元、ぬくぬくと護衛付きの旅をして、あろうことか紙を無駄に買っているのだ。

なんか気持ちは庶民のつもりだったけど、内情はすっかり上流階級のセレブリティだよな。恥を知れ、恥を。

しっかり感謝の気持ちを忘れずに励まねば。

筋トレ、勉強、女に優しく!