作品タイトル不明
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酒が入った老人たちはあっという間に眠くなってしまい、飲み会(?)はお開きとなった。
俺には客間が案内され、ふかふかのベッドが与えられた。
最高。
浴室に湯船もあるとの事でお借りして湯を張って久しぶりの入浴を楽しんだ。
樽のような縦長の湯船。
脚を伸ばせないのは残念だが、ドラム缶風呂のような感じがして悪くない。
控えめに言って最高。
食事は出してくれなかったので自分の堅パンと干し肉を食べる。
台所を漁れば何か美味しいものがあるのかも知れないが、ひとんちであんまり勝手してもアレなので我慢だ。
めちゃくちゃ疲れていたのだが、世界の秘密にあまりにも驚かされて目が冴えて眠気が飛んでしまった。
ベッドに寝転んでエルフたちに聞いておきたいことなどを整理する。
先ずはおふたりの名前。
昨夜はあちらのペースに飲まれてしまい、ついぞ聞き出せなかったので今後の関係構築のためにも聞いておきたい。
魔術について。
この世界の成り立ちについて知っていたのだから魔術が何かも知っている筈だ。
魔術や魔力が何かも知ることができればもっと効率よく使えたり、今までと全く違う使い方ができるかも知れない。
地理について。
ここが地球だと言うのなら場所についてある程度予測がつけられるだろう。
知ったところで昔と地形が違うのなら役に立たないかも知れないが気になることは気になる。
地殻変動が起きてしまったとなると日本の行方も気になるが、知っているとも思えない。
仮に日本が残っていると分かっても辿り着けるかは別の話だし。
そもそも知り合いなんか生きてる訳ねえしな。
転生者の召喚について。
ドームの技術力で召喚をしているのだろうが、王都ではまだ召喚をしてるのかどうか。
あと元の世界に戻れるのかどうか。
俺は別に元の世界に戻りたくはないが、単純に気になる。
あとは何だ?
知りたいことは山ほどあるが、エルフなら知ってそうな大事なことって何かあったっけ?
ええい!
普段から考えたことや気になったことをメモしておけばこうした時に困らなかったのに!
いや、落ち着け。
つい最近まで紙すら手に入らなかったのだ。
ちなみに今でもインクとペンを手に入れてない。
インクは乾くのに時間がかかるから鉛筆の方がいいな、なんて考えてる間に全てが後まわしになってしまっている。
エルフの爺さん、鉛筆の作り方を知らねえかな。
そんなことを考えていたら眠りに落ちていた。
◇
暑くて寝苦しくて目が覚めた。
掛け布団を跳ね除けて寝返りを打つ。
それでもやはり暑い。
怨嗟の声を上げながら起き上がり窓に取り付く。
この世界には板ガラスなんてものはないので木でできた跳ね上げの押し開きだ。
窓の隙間から外の明かりが入ってきているのでもう遅い時間なのだろう。
しかし窓が開けられない。
今まで跳ね上げの窓といえば押せば開いたのだが押しても開かない。
閂や別のロック機構も見つけられない。
暑くてイライラする。
壊れているのかも知れない。
俺は寝ていたままの姿、つまりパンツ一丁で客間から出た。
すると出てすぐの居間に五〜六人の幼い子供たちが居て、一斉にこちらを振り向いた。
慌ててドアを閉める。
扉の向こうで子供たちが笑っているのが聞こえる。
なんだこれ?
俺は事あるごとに誰かにハダカを見られている気がする。
そういう要員なのか?
そうか、俺はセクシー要員だったのかも知れないな。
すっかり目が覚めたので精霊に頼んで部屋を涼しくしてもらう。
そして急いで服を着た。
早く換気をしないと結露で部屋が濡れてしまうだろう。
俺は頭の回転が速いのだ。
服を着て靴を履き、深呼吸をしてから部屋を出た。
「おはよう、、、」
そう挨拶をしてみると各々控えめに返事を返してくれる。
しかしクスクス笑いは収まらない。
「ええっと、この家のお爺さんは?」
「朝の見回りに行ってる」
見回り?
魔獣とかの警戒か?
「蜂の巣箱が荒らされてないか、あとサトウカエデの桶に虫が入ってないか見に行くんだよ」
なるほど。
朝のお仕事か。
「ええと、君たちはお留守番?」
「そう。勉強中」
ふむふむ。
大人たちが里を離れて仕事をしてる時間に子供が集められて勉強をしてるのか。
「おじさん何歳?」
聞かれてギョッとする。
俺はおじさんていうかまだ少年だぞ?
中身の話は置いといて、だが。
「十三だよ」
「えっ!」
全員もれなく絶句した。
え、何?
俺、見た目より老けてるかしら?
ひとりの十歳くらいの少年がおずおずと手を挙げた。
「僕も十三、、、」
おっと、エルフが長寿なのを忘れていたぜ。
寿命が百とか聞いてあんま人間と変わらねえなと思ったけど、やっぱ違うんだ。
ええと、何を言えば良いだろうか?
「なんだ俺たちタメじゃーん!」とかはそぐわない感じがする。
全員の年齢を訊くのも詰問みたいで嫌な感じだしな、、、
「おお、起きたか」
ドアが開いてジジイたちが帰ってきた。
マジ助かる。
「お主らが起こしたんじゃなかろうな?」
「うん、自分で裸で出てきた」
「そうかそうか。よし今日はそのまま石板を提出して帰って良いぞ。採点は明日だ」
子供たちはジジイたちに石板を渡しながら思い思いに挨拶をして家を出ていく。
何人かは俺を振り返って手を振ったので俺も手を振りかえしておいた。
「さあ、朝飯にしよう。お主も腹が減ったじゃろ」
「あ、はい」
確かに腹が減った。
良い匂いがする。
ジジイが手に持っている籠から焼きたてのパンの匂いがしているのだ。