軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「姉君の頼みか。ならば直ぐに向かえ」

「済みません急に」

「いや、エルフに使いなどと何か大事なのだろう。ところで試験はどうだった?」

あ、そうだ。

忘れてた。

「合格しました。騎兵を目指すのも大丈夫みたいです」

「そうか」

「これでもう戦地だろうと何だろうとお供させていただきますからね。覚悟してくださいよ」

「悪いな」

「何を言います。あ、あと僕のフィアンセですが、別の奴と結婚して子供も授かったみたいなんでそっちもケリがつきました」

王子が目を見開く。

「え、大丈夫なのか?」

「平民同士の口約束なんてこんなもんです」

「いや、お主の気持ちの方は、、、」

「まあ、ちょっとショックでしたけど。これで王子のドワーフ通いに同行できますね」

「う、うむ、、、」

俺はロレンツォに向き直った。

「入学までに用意するものが少々あるみたいなんですがお願いしてしまってよろしいでしょうか?」

入学案内を手渡す。

「お任せください。それよりもありがとうございます」

ロレンツォは深々と頭を下げた。

珍しい。

「オミ殿がついて下されば我々も安心してこちらの仕事に専念できます」

「いえいえ、こうやって長官のお使いがまた来るかもしれませんが、それ以外はしっかりとお守りさせていただきます」

そんな感じで説明は済ませたので旅の準備を始める。

折角王都に着いたのにまた堅パンと干し肉かあ、、、、

少しばかり思いやられる。

煮炊きができるように鍋やら、鍋を吊るす鍋吊るしやらと荷物を考える。

しかし考えてみれば人目につかなければ煮炊きに火すら要らないのだった。

となると必要なのはフルミネの飼い葉と水やりの桶、後は食料だけだった。

鍋はいつものマグカップで代用だ。

街を幾つか経由するようだが、子供一人で宿に泊まると変に目立つ気がするので出来るだけ野営で済ましたい。

野営糧食セットをふたつと生米、ベーコン、チーズがあれば何とかなりそうだ。

何日かぶんのパンも買っておこう。

テキパキと荷物を鞄に詰めていると、いつの間にか旅慣れてしまったなと思う。

リロ氏に色々と教わっておいて良かった。

王子は寝てしまっていたのでロレンツォに旅の支度が終わった事を告げ、明日の朝出る事にした。

部屋をロレンツォと交換してアウグストと一緒の筈だったのだが、奴は朝まで帰って来なかった。

きっと天使の腕の中で微睡んでいるに違いない。

あの男もブレないな。

小僧さんに鍵を開けてもらいまだ暗いうちに宿を出る。

開門は七時らしいが北門までがそこそこの距離があるので多分ちょうどいいだろう。

都会だけあって農村よりは朝が遅いのか、まだひと通りは少ない。

しかしあちこちで火をおこし始めているようで薄煙で街全体が白く靄っている。

平民街を抜けていけば、時々臭う。

ブロック毎に公衆トイレがあると言う話だったからそういう事なのだろう。

ちょうど開門されて官庁街へ入る。

夜のあいだは閉ざされて平民街との行き来はできないのだ。

官庁街を抜けてドームの脇を通ればまだドームは照明で照らされていた。

柵沿いにも街灯があり、ここだけは前世の街のようだ。

ちなみに、イオタからの手紙に返事を書いてロンド船長に渡してある。

トンマーゾ司書から渡された紙の使わなかったぶんを持ってきていて良かった。

インクと羽ペンは領事館のを貸してもらった。

羽ペンはポリオリでも使っていたが、軸が細すぎて使いにくい。

今になって思いついたけどガラスペンなんかオラヴィ親方に頼めば簡単に作ってくれるのではないだろうか。

だって複雑な凸凹の付いた水差しとか作ってたもんな。

てか、王都の文房具屋で手に入れられるかもしれないよな。

でもまあペンはそこら辺の木でも代用できるし先ずはインクだな。

高いとは聞いてるけど相場は知らないのだ。

色んな色とかあるのかな?

自分のオリジナルの色とかちょっと憧れるよね。

万年筆はロマンなのだ。

使ったことないけど。

そんな事を考えていたら空がすっかり明るくなり、北門まで来た。

城壁のせいで日の出が見えないのが残念だが安心とトレードオフなのだから仕方ないのかも知れない。

壁がないと魔物や敵だけでなくスラムの難民まで入ってきちゃうもんな。

ええっと、、、移民/難民問題についてはコメントは差し控えておく事にする。

ちょっとセンシティブな事柄だからな。

俺はポリコレに配慮する男なのだ。

あ、男とか言っちゃポリコレ的に不味いか。

えっと、自立した個として配慮したのだ。

プロナウンスはhe/theyで頼む。

それはさておき門を出る時は身分証チェックとかは無し。

そしてバリケードで石垣の門まで道が作られ兵士が守ってるのは西門と同じだが、こちらの難民の皆さんは元気がない。

いや、お行儀が良い。

バリケードの柵に掴まってこちらをじっと見てはいるが声は上げない。

これはこれで胸に来るものがある。

うるさくすると虐待とかされるのかも知れない。

そもそも疑問なんだけど「やっぱ地元に帰ろう」と思ったら出してもらえるのかな。

出したら出したで隣の街で問題になりそう。

これだけの人数がいるのだから炊き出しくらいはあるのかも知らないけど、どうなっているのか心配になる。

ふと、近くを歩いていた男たちの声が耳に入った。

「臭くてたまらんな。奴隷として売ってしまえば良いのに」

「だよな。自分らの作った決まりのせいで自分らの首を絞めてるんだから王都の連中は全く馬鹿だよ」

なるほど、そういう意見もあるか。

奴隷として売買できれば人手の足らない地方に安い労働力として売れるか。

どっちが幸せなんだろうか。

仕事と最低限の食事があるけど奴隷である状態と、やる事が一切なくて炊き出しを待つのと。

いやいや、疫病や飢饉から逃げて来た農奴なのだろうから奴隷として売られたら元の木阿弥、というよりもっと酷い状態になりそう。

現代社会は貧困をどうやって解決したのだっけ?

誰だか偉い学者が「我々は貧困と戦争、疫病を克服しつつある」みたいな事を書いてベストセラーになっていたよな。

読んでおけば良かった。

いや、俺みたいなクソガキが何かできるとは思わないけどさ。

こういうのに出くわしてしまうと何かできないかって考えてしまうじゃないか。

でもまあ、必要なのは農業改革だよな。

求められてるのは農薬と肥料か。

キンチョールの成分て何?

蚊取り線香でも良い。

防虫菊だっけ?

そんな都合いい草生えてるかっての。

そのうち誰かが見つけるだろう。

じゃあ肥料か。

窒素、カリウム、リンだっけ。

リンはリン鉱山があるんだよな。

どこに?

どんな石?

全く分からん

カリウムは、、、腐葉土に多いんだっけ?

落ち葉を土に混ぜとけ。

窒素は、、、なんか凄い難しい作り方をするんだよな。

しかも発明した奴はナチスのヤバい毒ガスを開発した野郎だったハズ。

そんなん作ったら王都に閉じ込められるわ。

無理無理。

やっぱ俺は何の役にも立たねえわ。

せっかく異世界人なのに俺は何をやってるんだろうな。

やれやれ。

門を抜けるとお馴染みの石畳が続き、その両脇は森だった。

あまり濃い森ではない。

灌木ではないが背の低めの木が斜面を覆っている。

何種類かあるようで、白い花をつけてるのもある。

こっちはブドウじゃないんだな。

何の木なんだろうか。

あ、、、

これイバラか。

確かイバラって名前の固有種がある訳じゃなくて棘が生えてる木の総称なんだっけ。

改めてよく見ると薔薇は見分けがつく。

葉っぱが特徴的だもんな。

王都を守るための一種のバリアなのだろう事は分かるが、何だかさっき見たスラムの難民を閉じ込める檻のように感じて俺は嫌な気持ちになった。

ドームや世界樹はキレイだったけど、やっぱ王都はあまり好きになれないな。

先を急ごう。