軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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宿に着いた。

内側の壁を出て外側の壁のちょい内側辺り。

程よく裏路地に入ったところ。

「ここが我々の定宿で、いわばポリオリの領事館のような役割も果たしている場所です」

領事館と名乗るにはあまりに普通な宿なのでポリオリ県民会くらいの感じではないかと思うのだが、それでも王都で何事かをしようとするポリオリ出身者には心強いよな。

「今回、我々の任務はおふたりの護衛を無事終えたのちは王都での基盤拡大という使命が与えられてます」

「あ、じゃあアカデミーの入試が終わったらトンボ帰りじゃなくて暫く王都に居るんですね」

「ええ、少なくとも来年の新商品発売くらいまでは王都に留まる予定です」

そうか。

挽肉器の販売やメンテの要員を受け入れなきゃいけないもんな。

長官が船で運んでくる在庫の受け取りや保管なんかもあるのだろうし。

知らぬうちにビジネスが動いているな。

「ひょっとしてアウグストさんはご実家が商家だったりします?」

「ご名答! 正確には仲卸ですかね。ドワーフのガラス製品などを預かってカイエンや流しのキャラバンなんかに納めさせて頂いてます」

「そうだったんですね」

「強欲な商人とドワーフを直接取引させると手練手管で丸め込まれて安売りさせられかねませんからね」

酒樽を見せればドワーフはチョロそうだもんな。

「いやはや。剣の道に行きたいとわがままを言ってやっとの思いでお城に入ったのに、やっぱり求められるのはこっちだった訳です」

そう言ってアウグストは肩を落とした。

「いやいや大事ですよ。国は剣だけでは守れないのです」

「分かっておりますとも。しかし、周りがチャンバラをしていた頃から読み書き計算を叩き込まれて辛い幼少期を過ごして来ましたから、、、」

ちなみに、今俺たちは宿のベッドに腰掛けて王子の甲冑を磨いている。

部位ごとに袋に入れて持って来てはいるが、ずっと馬の背に揺られていたせいで埃まみれになっているし細かな傷も増えている。

王子は王族としてフルアーマーの剣術と騎馬戦の試験を受けなければいけないのだ。

「そんなお主が王子の護衛を任されるところまで登り詰めたのだから誇りに思えば良かろう」

「そうだぞアウグスト。お主は我々と共に盗賊と戦い、黒狼と戦いここまで来たのだ。胸を張れ」

「そうですよね! 城の連中なんかよりずっと凄いですよね!」

アウグストは笑顔になった。

「このまま文官になって同期のヤツらと剣を交えなければな」

ロレンツォがそう言えばアウグストは真顔に戻った。

「本当に城の同期を見返したければ剣の鍛錬を欠かさぬ事だ。王子やオミ殿を見ろ。少しの時間があれば剣を振り、足の運びを確認しているだろう?お前にはそういう日々の努力が足らぬのだ。大体、、、」

「おいロレンツォ、それくらいにしてやれ」

「そうですよ、文武両道って大変なんですから」

上司としてロレンツォから見るとアウグストはまだまだ足らない所があるのだろう。

確かに文官ならともかく兵士は暴力装置だもんな。

武士は死ぬことと見つけたり、だよな。

今はアウグストは神妙な顔をしているけど、きっと明日には天使に慰めてもらってご機嫌になっているのだろうから大丈夫だろう。

そういうタフさも大事だよな。

翌朝、俺たちは試験会場の下見に行くことにした。

試験に何か変更がないか、混雑具合はどうかなど確認しておかないと何があるか分からない。

メールどころか郵便すら発達してないこの世界では当たり前の行動だ。

てくてくと歩いて門を抜ければそこは職人街だった。

東側は軍関係の施設が多いと聞いていたから何となく防衛省みたいな感じを想像していたのだが、鍛冶屋と大工が忙しく働いていた。

大工っていうより建具屋?

木工屋?

船で運ばれて来た丸木を製材しているのやら、樽や箱を作る人たち。

鍛冶屋も剣や防具の修理やら、馬具や船のパーツなどを作る所やら、ありとあらゆる職人が働いている。

確かにこれも軍関係か。

そんなエリアを抜けると遠くに海が見えた。

右手には河も見える。

そういえば王都の排水の話を村のギルドで聞いたっけ。

あのエリアが農耕地帯なのか。

王都が鎮座するのは高台ではあるが建物が密集して建ち並び視界が良くない。

階段を降り、坂道を下って、そうこうしていると長い柵に囲まれた大きな施設が現れた。

きっとこれがアカデミーだろう。

柵の内側には高さのある植え込みがあり中は覗けない。

門のところまで来て中を覗くと左右に天幕が立てられ、急ごしらえの受付になっているようだ。

他の受験生は見当たらない。

時間が早過ぎただろうか。

ロレンツォが門に立つ軍服姿の男に声を掛けた。

「明日にでも受験をしようと思う者なのだが、受験要綱や日程に変更は?」

男は首を動かさずに目だけで俺たちを見た。

「お主らか? 今なら空いているから受けて行け」

「準備もありますので明日にでも、、、」

「準備、何のだ?」

「甲冑も馬も用意しておりませんので、、、」

「筆記、剣術、魔術なら受験可能だ」

暇なのかな?

「王からの推薦状もありますので、、、」

「不要だ。そんなものは後で結構」

ロレンツォが困ったように振り返ったので俺たちは頷いた。

さあ、アカデミーの受験だ。