軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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翌朝、朝食を食べてすぐに宿を出ると出会す人の殆どが同じ方向へ向かっていたので門の場所を聞く必要すらなかった。

そして宿場町を出るのには手続きは必要なかった。

まあ国じゃないしな。

宿場町の門は夜明けと同時に開いたらしく、混雑はしていない。

それより何より俺が驚いたのは王都へ向かう上り坂の斜面が全て葡萄畑だって事だ。

地形がのっぺりしていることでかなり遠くまで見通せるのだが、遠景の山以外の視界が全て葡萄畑なのだ。

今までだって葡萄畑を見なかった訳ではないがこれだけの規模となるとなんだか壮観だ。

ビシッと列を作る濃い緑と地面の薄茶色が細やかな縞模様を作っていて、もはや美しいとかを通り越してキモい。

微妙にうねる地面のせいで縞模様の見え方が変化していて、テレビに縞模様の人が映った時みたいな妙なうねり感を感じる。

モアレ現象だっけ?

ジッターだっけ?

葡萄は既に小ぶりな実を付けていて緑の実が赤っぽくなりつつある時期のようだ。

袋をかけていたりはしない。

こんだけ数があったら袋なんて無理だよな。

手間もコストも膨大過ぎる。

それに葡萄に袋なんて被せるのは日本だけなのかも。

ありえる。

日本人は狂ってるもんな。

道と畑の間には申し訳程度の道草が生えており、ところどころに立て札に『畑に入るな厳罰』とそっけなく書いてある。

危険だ。

だって茶ブチ、もといフルミネが葡萄をチラチラ見ている気がするのだ。

コイツは花とか果物とか甘いものが好きだからな。

そうこうしていると王都を囲む石壁が見えてきた。

そんなに高さのあるものじゃない。

しかしその連なる長さよ。

具体的な長さは分からないが何十キロと続いているに違いない。

どうやってこれだけの石を集めてきたのか。

王都ってのはいちいち規模が凄いな。

近くで見れば塀の高さは二メートル程度。

馬で飛び越えるにはちょっとキツいくらい。

高さよりその素材だ。

板状の石がひたすらに積まれているのだ。

石といっても厚さが三〜四センチ、長さが三〜四十センチあるから結構デカい。

それを平たく積んで積んで塀を作っている。

デカい岩を割ってこのように加工してるのか、それともこういう石が自然にあるのか。

普通に考えてれば岩を割るなんて、そんな手間は省こうと思う訳だから自然岩なのだろう。

この馬鹿広い葡萄畑を耕す時に出た石を積んだのだとしたら耕すのも壁を作るのもどんだけの労働力が取り組んだのか。

怖い。

王都怖い。

なんでそんなに怖がっているかって?

前に、読みにくい歴史書や家系図の勉強をやりかけて文章が冗長で面倒で投げ出した事は話したと思うが、それでもあの時は読もうと思ったんだ。

あの時読んだ王都についての描写は確かこんな感じだった。

『おお、マシュトマの輝けるドームよ! 世界樹によって命を注ぎ込まれ続ける唯一の城よ! 小高き丘に鎮座す鉄の処女よ!

〜王都に至る丘の斜面は荊棘によって閉ざされ、彼女に愛を囁きたいと思へば針を通さぬ革衣を幾重にも纏て地を這って行くより他はない。南北を貫く街道には鷹の眼を持ち、ベヒモスの如く膂力を持ったゴーレムがそこを守っているのだから。これをもって王都の王、誠の王の家紋は薔薇と荊棘、銀の毛の獅子となったのは諸兄ら周知の通りである』

文章が意味不明なのは置いておいて、これを信じるならばこの丘全部がイバラに覆われてたってことだ。

それを抜くにしろ焼き払うにしろ、どんだけなんだよって事なのだ。

『焼き払え!』

『グモー!』

みたいな場面を想像してしまう。

だって凄い広さなんだ。

正確には違うだろうけど、皇居がその中心にある千代田区くらいのサイズに思える。

皇居を除いた千代田区全域を重機も無しに七十年以内に耕せって、、、

いや、できるか。

しかもこの世界には魔術もあるしな。

王都の魔術師がローテーション組んでイバラを焼いて、世界中から集まった肉体労働者がわっせわっせと耕せばなんとかなるか。

なんか俺は急にスンッとなって興奮してた自分が馬鹿らしくなった。

なんかピラミッドとかギリシャの神殿とかそういうデカい遺蹟を見て圧倒される瞬間ってあると思うんだけど、一瞬、そのデカさに当てられてしまっていたようだ。

ピラミッドができるならこれもできるよな。

ああ、アホらし。

さっさと入ろうぜ。

門を潜ればいつもの検問。

しかし受付カウンターが幾つもあるので待たされない。

異様なのは左右に広がる空き地とその奥に蠢くスラムの民だ。

かつてはここも農地であっただろう土地に流れてきた自由民を閉じ込めて、奥に見える本当の城壁の内部を守っているのだろう。

大量の兵士が並んで壁を作り、難民が乗り越えて来るのを抑えている。

開門が週一で午前中だけってこれが理由か。

野放しにしてたらディーヌベルクのスラムよりも酷いことになってるだろう。

スラムの民は柵に縋り付き、こちらに何か言っている。

それが何百人と集まり怨嗟の悲鳴とでもいうような騒音となって響いてくる。

王子も眉を顰めている。

ロレンツォは平静を保っているがアウグストなぞは怯えた表情になっている。

胸の奥が重くなる。

世界の可哀想な人々をやたらと流す番組とかってあるけど、アレの比じゃない。

音と匂いがリアルなのだ。

早く抜けてしまいたいが先が詰まっていてなかなか進まない。

「先を急げ! まもなく閉門だ!」

内側の城壁の見張り台の兵士が大声を上げ、少し進みが早くなり、なんとかクリア。

王都はなんだか驚いたり、気持ちが落ちたりで忙しいな。