軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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やけに忙しい夢を見た。

翼竜と黒狼が同時に襲ってくる夢だ。

複数の光を管理しながら影の中に注意を払い、威嚇音を鳴らしながら急降下してくる翼竜も捌かなければならない。

剣を振るうがそれは届かず、息も上手く吸えない。

王子やロレンツォから指示を受けるが中々その通りに動く事ができない。

皆が疲弊し、イラついている。

汗で張り付く服が鬱陶しい。

袖を捲り上げようとするが、それすら上手くできない。

袖に気を取られると黒狼が迫ってくる。

黒狼を追い払っていると背後に強烈な圧迫感を感じた。

そうだ、翼竜は狩ると決めた相手には威嚇音を鳴らさない。

背後から一瞬で掴み取られるんだ。

ヤバい。

振り返ろうとしたその時に強い衝撃に襲われた。

ドンドンドン!

「旦那方、お約束の昼過ぎになりました〜」

汗だくで跳ね起きると二段ベッドの上段に頭をぶつけた。

頭を抱えてまた横になる。

ドンドンドン!

「旦那方〜」

誰も返事をしないので仕方なく起き上がりベッドを降りた。

裸足のままドアを開けるとさっきの小僧さんだった。

「昼過ぎに起こすようにさっき旦那に言われたんだ」

「はい。ありがとうございます。起こしておきます」

「シャワーの用意もしておいたから、そう伝えておいてくれよな」

「はい。ありがとうございます」

小僧さんは俺のことを小間使い、つまり自分と同じような立場の者だとそう判断しているようだな。

まあ、俺だけローブを着てないし服は泥だらけだし髪も中途半端に伸びてボサボサだからな。

腰に剣は下げてたけどちっちゃいし。

訂正するのも面倒なのでそのまま扉を閉めた。

振り返ると王子は今のやりとりで目を覚ましたようで二段ベッドの上段に腰掛けていた。

頭が天井につっかえている。

まだボーッとしているようだ。

「昼過ぎか」

「ええ、そうらしいです」

王子は窓の外に目をやった。

眩しそうに眉を顰める。

「四時間は寝たか」

「そうですね」

「腹が減ったな」

「そうですね」

そうなのだ。

昨夜はろくな食事も摂らず行動食だけをつまみながら徹夜の夜間行軍だったのだ。

それで朝飯も食わずに寝てしまったのだから腹も減る。

「ロレンツォとアウグストを起こしてくれ」

二人とも珍しく大きくいびきをかいている。

よっぽど疲れたんだろうな。

これだけ大きないびきをかいていて自分で起きないのだからドアのノックくらいじゃ起きないよな。

二人を揺さぶって起こす。

「もう昼過ぎです。シャワーの準備もできているそうです」

「え、、、あ、、、、、、起こしに来ました?」

「ええ」

「それは失礼しました、、、」

めっちゃ声がくぐもっていて鼻も通っていないようだ。

こんなあからさまな寝起きのロレンツォは珍しい。

アウグストもベッドから脚を下ろして腰掛けているが膝の間に頭を挟み込んだまま動かない。

生活リズムが狂うと辛いよな。

王子はベッドから降りてくると身体を捻って背骨をバキバキと鳴らした。

「腹は減ったが食欲がないな。オミは何が食べたい」

「そうですね、、、米のポリッジとかですかね?」

全身が疲れ切っているのなら噛むのも消化も負担の少ないお粥でしょ。

「ふむ、、、悪くないな。この辺りならそうした物を出す店もありそうだな。よし、シャワーを浴びて外へ出るぞ!」

ロレンツォが背筋を伸ばし、アウグストは体勢はそのままでビクンとなった。

座ったまま寝てたな。

馬房の横のシャワー室へ向かう。

シャワーといってもシャワーノズルは無かった。

簾(すだれ) のようなもので区切られた半外のスペースの頭上に大きめな桶が設えてあって、桶の底のコルクを抜くと小さな穴から水が落ちてくるというもの。

水路から小僧さんたちが何往復もして汲んできてくれたのだろう。

いやはや頭が下がる。

早速コルクを抜いて水に触れてみると日光で温められているのか少しぬるい感じだった。

あまりのんびり水浴びしても桶の水が足らなくなりそうなので手早くあちこち洗う。

危うく足らなくなりそうなところで入浴を終えた。

渡されていたゴワゴワの布で水を拭き取る。

魔術で乾かすことだってできるのだが、身体を布で擦るのってそれはそれで気持ちいいよね。

水を吸って柔らかくなった布で髪をガシガシとすると新鮮な血液が頭皮に巡っていく感じがした。

着替えのパンツを履けばすっかり気分は文明人。

やっぱシャワーは疲れをリセットするよな。

脱いだ服の洗濯も洗濯屋にお願いできるとのことで任せてしまう。

何しろ俺たちは疲れているのだ。

ちなみにシャワーも洗濯も全て別料金である。

ついでにいうと毛布やシーツ、枕の貸し出しもあるらしい。

何というか冒険者の宿なのだなという感じがする。

俺は別にこういうのも嫌いじゃないぜ。

「水の追加を頼めるか?」

と隣の王子のブースから小僧さんへリクエストがあったが困った顔をしていたので俺が手で制し魔術でぬるま湯を桶に足してやる。

「お? ああオミか。済まんな、、、ついでに、もう少し温度を上げられるか?」

「はいはい」

小僧さんたちは目を見開いていた。

驚いたか。

俺は小間使いではないのだ。

こう見えて魔術師だったのだ。

、、、いや、小間使いではあるのかも。

魔術の使える便利な小間使い。

宿のカウンターで女主人に訊くと、パンのポリッジを出す店なら近くにあるらしい。

そこはパン屋で、前日に売れ残ったパンをポリッジにして出しているとの事。

なるほど。

四人で連れ立ってパン屋へ向かう。

もちろん帯刀である。

俺なんかは面倒くさがりだから近所なら帯刀しなくて良いじゃんと思ってしまうのだが、そういう所が危機感のない日本人なのだろうな。

歩いて五分のパン屋に行くのに腰に剣を下げていく。

もちろん足元はブーツだ。

宿でサンダルとか貸してくれないのだろうか。

茶色いビニールの便所サンダル。

もしくはサンダル型の下駄。

布の所に宿の名前がマジックで書いてあるやつ。

カイエンの温泉宿にはあったのに。

思えば、あそこには日本人の転生者がいたのかもな。

寒くなる頃にまたあの温泉地に行きたいな。

柔らかめに炊いた白米に青菜の塩揉みはグッとくる美味さがあった。

ここしばらく、米を食っていない。

実はいま本当に食いたいのはコンビニのツナマヨおにぎりだ。

高菜明太も良いな。

混ぜ込みワカメも捨てがたい。

お赤飯のおにぎりもカップ麺のお供に良いんだよな。

この世界でも冒険者街でおにぎり屋さんやったら流行るだろうな。

誰かやってくんねえかな。

やってくれるなら味噌汁はインスタントでも構わない。

ああ、腹が減った。