軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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宿を出て東に位置する夏城門へ向かう。

この街は一番外側の外環道から内側へ寄るにつれて庶民向けから高級店になっていく傾向にあるのだそうだ。

ただし東西南北の城へ伸びる通り沿いはどこも高級店。

目抜き通りという奴だ。

ちなみに殆どの建物の一階は何かしらの店舗になっていてその上が住宅になっているのだとか。

一階二階は石造りで三階から上が木造。

ほとんどの建物が五階建てで一見すると全ての建物が繋がって見える。

昨日泊まった宿がそうであったようにほとんどの建物が口の字型で中庭を持ち、建物の奥側には鍛冶屋だったり洗濯屋だったり職人の仕事場になってたりするのだ。

確かに大きいとはいえこの街が一つの都市国家なのだから効率よく全ての職種が収まっていなければならない。

奥側に迷い込んだら完全に方角を見失ないそうだ。

ちょっとローカルな部分も見て回りたいがそんな時間はないので先を急ぐ。

夏城門へ向かう街道を進むと何やら混雑している。

何だかよく分からないが出国ゲートが閉じられてるようだ。

「何事でしょう、この辺りでお待ち下さい。聞いてきます」

ロレンツォが馬から降りて人混みの奥へ小走りで向かった。

「ここが通れないとなると別ルートですかね?」

「北から出るとクスカではなくディーヌベルクに向かうことになるな」

俺が聞くと王子はそう言って眉を顰めた。

歴史授業で習った都市だ。

ええっと、リンゼンデンのドームが先に潰れて溢れた難民がディーヌベルクに押し寄せたのではなかったか。

ああ、その頃の仲違いが今でも引きずって、あんまり友好的な関係にないのか。

「リンゼンデンとは仲が悪いんですっけ?」

「うむ、別に揉めている訳ではないのだが道の警備が手薄になりがちで魔物が出ることがあるのだと父から聞いたな」

「道の警備ですか」

「ディーヌベルク側が警備に乗り気でないという話だったが、向こうの言い分を聞いた訳ではないから本当にそうなのかは分からぬな」

そうか、ここリンゼンデンはポリオリ王妃のウルズラ様の故郷。リンゼンデン側の肩を持つ言論ばかりが耳に入ってくるか。

「魔物ってどんなのが出るかご存知ですか?」

「俺も詳しくないがコウモリと魔獣の黒狼が出るとか聞いたような気がするな」

そういえばコウモリは魔物だったか。

野生動物じゃなかったんだな。

とはいえ違いが分からないが。

「あの、今更ですけど魔物とか魔獣って何です? 長官から食べても栄養が少ないみたいな話は聞きましたけど」

王子は首を傾げた。

「我も不思議なのだが、明確な定義というものがないのだ。魔族が創り出した邪悪な生物で、遺体から魔石が出るというのがよく語られる定説だが、コウモリからは魔石は出なかっただろう?」

ああ、そういえば。

細かく刻んで探せばちっちゃいのが出るのかも知れないけど。

ひとまず魔石をドロップして消えたりはしなかったな。

「しかし黒狼からはかなりの確率で魔石が出るのだと言うし、何故魔獣とわざわざ別の言い方をするのかもよく分からん」

「ははあ、不思議ですね」

動物学者がちゃんと仕事しないからこうした事態になってるのかもな。

そうか、そういう道に進んだら面白いかもな。

魔物学の第一人者になれるかも知れない。

後世に名を残すチャンスかも。

「あ、戻ってきたぞ」

王子の視線を追うとロレンツォがこちらに向かって歩いて来ていた。

「どうだった?」

「東の街道で魔物が出たとかで、魔物狩りが終わるまで通行禁止だそうです。昨日の夕刻に被害者が出て、今朝から軍が討伐に向かったそうです」

「その感じだと、安全確認が終わるまで数日掛かりそうだな」

「ええ、地元民の話だとこうした場合には数週間掛かることもあるとか」

え、何でそんなに掛かるの?

バーっと行って魔物殺して終わりじゃないの?

「では北か」

「既に幾つかのキャラバンは北へ向かったと」

「ならばそれらに同行させてもらおう、あちらも殿に騎士が居たら安心だろう」

「え、危なくないんですか?」

王子はニヤリと笑った。

「怖いのか?」

「え、逆に聞きますけど怖くないんですか?」

ロレンツォが答えてくれた。

「キャラバンは馬車が数台、護衛も居ます。それが数組いる訳ですからかなりの大人数です」

なるほど。

なら大丈夫か。

「万が一ということはある。しかしそれを言うなら旅には常に危険が付き纏っておる」

確かにね。

実際、盗賊に襲われたもんね。

こっちから襲ったとも言えるかも知れないが。

「ちなみに確認なんですけど、北門から外周を通って東に向かう道とかはないんですよね?」

「無いことはありませんが、そうした小道はそれこそ盗賊が使いたがる道ですから使わないに越したことはないです」

なるほどね。

「では、北へ向かうか」

「行きましょう」

俺たちは春城門からリンゼンデンを出て農地を抜けて行く。

行く先には既に深い森が見えている。

北側の農地の開発があまり進んでいないのはあの深い森が原因なのだろう。

あれを全部切って根っこを抜くのはもの凄い労力が要るだろう。

それに、これは俺の想像だがディーヌベルクに拒否されて戻ってきた人々がこの国を起こしたのだろうからあまりそちらに近づきたくはなかったのではないか。

歴史授業で前史からやるのはとても大事と言ってくれたのはテレジオ様だっかしら?

きっとそれはこういう事なんだよね。

近代史だけの知識では仲違いの火種は見えて来ないのだ。