軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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いよいよ王都へ出発する日がやってきた。

しっかり朝食を食べてから厩舎へ向かう。

なんか夜明けと共に出発するのかと思ってたのだが、初日はバルベリーニ市内まで行けば良いのでゆっくりでいいのだそうだ。

こないだ長官を送りに国境までは行ったので距離感は分かる。

国境から比較的近いバルベリーニの冬城までが今日のノルマ。

明日からはそこから数日かけて北上し山間の夏城の城下町まで向かうのだとか。

バルベリーニがとても大きい国なのだと分かる。

てか、ポリオリが小さいのか。

都市もひとつしかないしな。

都市国家と言うんだっけ?

スパルタとかアテナイだな。

荷物は多い。

リュックには入り切らないので馬の腰の辺りに左右に振り分けるように巨大な長いバッグを取り付ける。

ここ最近は暑い日が増えて来た。

初夏というと、どうしても梅雨のイメージがあるのだがこの地域には梅雨なんてものはない。

ただ、冬場よりは雨は多いらしい。

薄手のズボンに薄手のシャツ、足元は乗馬ブーツでこれまた薄手のローブを羽織る。

このローブが夏の日差しから身体を守り、雨や風も防いでくれるのだそうな。

シャツやズボンは王子たちのお下がりだがローブは新品のようだ。ちょっと嬉しい。

馬は選ばせてくれたのだが、やはりいつもの茶ブチにした。

意地悪はしてくるし俺を馬鹿にしたような態度は取るのだが、神経質に怯えたりイライラしたりする他の馬よりも落ち着いているので安心できる。

馬子さんに聞いたところによるとコイツは 騸馬(せんば) なのだそうだ。

去勢した 牡馬(ぼば) 、つまりオカマちゃんである。

違うかな?

オカマは心の内面の話かしら?

まあ、ポリコレに配慮して言うならトランスジェンダーである。

コイツはかつて、めちゃくちゃ荒くれ者で柵は飛び越えるわ人は振り落とすわ噛み付くわの手の付けられない問題児だったらしい。

ちなみに馬を去勢するのはする側もされる側も命がけらしく、この世界では珍しいのだそうな。

そうだよな、麻酔もないもんな。

後ろから近づくだけで蹴られそう。

馬にガチで蹴られると内臓が破裂したりするらしい。

即死コース。

怖すぎる。

しかも手術が成功しても馬が耐えられなくて死んでしまう事がこれまた多いらしい。

痛いだろうし、碌な消毒薬も無ければ、抗生物質もないのだ。

そりゃ死ぬわ。

この馬はライトニングで気絶させられて手術され、それを乗り越えて来た猛者なのだ。

生命力ハンパねえな。

ちなみに名前は無いらしい。

馬子さんたちは命名権を持ってないし、この馬を気に入って名付けようとする乗り手も居なかったのだそうな。

お前、不人気だったのか。

これから数週間一緒に旅をするのだから名前くらいあってもいいのだがな。

勝手に決めちゃおうかしら。

どんな名前が良いかね、、、

俺の頭に浮かぶのは某ゲームの美少女化された馬名ばかりだ。

そっち系は辞めよう。

競走馬ではないのだし。

他に頭を過ぎるのはローチ、アグロ、エポナ、ラゴス、、、

ラゴスは馬の名前じゃないか。

スーホ、、、

スーホも馬の名前じゃないか。

あ、シルバー、、、

茶ブチに付ける名前じゃないな。

どうも俺は名付けのセンスがないらしい。

「王子のお気に入りの馬は名前は無いんですか?」

「コイツか? 正式に俺の馬とした訳ではないからな」

「良いんですか?」

「うむ、我がポリオリ貴族として戦場に出る時にコイツがまだ元気だったらその時に名付けるかも知れんな」

なるほど。

一連托生になってから名前を付けるのか。

「よろしければ出発しましょう」

声を掛けてきたのはロレンツォ氏だ。

落ち葉はらいの時にコウモリを切ってくれた人だ。

今度の旅の護衛役である。

護衛はもうひとり。

アウグスト氏だ。

彼も同じく第四小隊のメンバーだった人だ。

二人とも何度も一緒に演習をやってきた仲だから気楽である。

ロレンツォ氏は多分三十代前半、アウグスト氏は二十代後半くらいだろう。

二人ともアカデミーは出ていない。

当然、国軍で出兵したこともない。

しかしアダルベルト領主が王都に行った時に同行した事があるとの事で大切な案内役でもある。

ちなみにその際、王子も同行してるのだが馬車の中だったため道はよく分からないらしい。

今日は特に皆さんの見送りとかは無し。

ポクポクと歩いて町を抜けていく。

オラヴィ親方の工房の煙突からは煙が上がっている。

きっと仕事に精を出しているのだろう。

親方の工房の前の粉挽小屋の風車も回っている。

結構音が鳴るんだな。

羽根が風を受ける音、中の機関が軋む音、粉を挽く石臼の擦れ合う音、それらが混じり合って独自のハーモニーを産んでいる。

また、遠くからは槌を打つ音が聞こえる。

鍛冶屋が何かを作っているのだろう。

農具か武器か、あるいは挽肉器のどこかのパーツか。

覗いてみたいな。

平日のこの時間に町に来ることはあまり無かったから新鮮な事ばかりだ。

もっとこの町をウロチョロしておけば良かったな。

町を抜けて門をくぐれば、こないだ種蒔きをしていた畑に緑の苗が芽を出し風にそよいでいる。

生命力を感じる。

美しい季節だ。

「いやー、綺麗ですねー」

「うむ、春小麦は良いな」

「そういやこないだウルズラ様が言ってた冬小麦って、コレとは違うんですか?」

「冬小麦は秋に種蒔きをして越冬させて夏に刈るのだ。もうすぐ刈入れが始まる」

「へー。ポリオリは春小麦がメインなんですか?」

「いや、メインは冬小麦だ。そこの丘の向こうは全面が冬小麦の畑だな。この辺りは落ち葉はらいのための部隊の通り道でもあるから春小麦にしている」

ああ、畑のまん真ん中を踏みつけて通ったもんな。

「北部や雪の多い地方は春小麦がメインで、ウチやバルベリーニのような南部では冬小麦が主流だ」

「はー、なるほど」

「ポリオリで両方を育てるようになったのは飢饉があってからだ。農業は天候不順や病気で収量がひどく落ちることがあるからな」

なるほどな。

そんな事を話していればバルベリーニへと続く街道の入り口が見えてきた。