軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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領主夫人、もとい王妃の部屋を辞して俺は大きく息を吐いた。

あれは領主夫人なんて生やさしいものじゃないわ。

人に命令することに慣れた王族の圧だわ。

いや待てよ、アレくらい圧の強いおばちゃんて割と居る気もするな。

どうなんだろ?

「クラウディオ、お主の部屋に強い酒はあるか?」

「ええ、姉君。先日父上からいただいたものがあります」

「お主の部屋に少々寄らせてもらうぞ」

「どうぞ、私にも少し酒が必要です。オミも来い」

確かにこのままベッドに入っても直ぐには寝れそうもない。

いや、しかし長官と結婚とはどうしたもんか。

そんな冗談のやりとりはした事があったが、、、。

王子の部屋に入ると夫人の部屋と同じようにローテーブルを挟んで向かい合わせのソファがあり、長官と並んて腰を下ろした。

王子が棚からグラスとボトルを持ってきて中身を注いでくれた。

グラスはずっしりと重く、カットの入った見事な物だった。流石はガラスが特産の国。

酒は色のない透明。

ウオッカか何かだろうか?

長官がクイと飲んだのでつられて口に酒を含む。

かなり強い。

これは蒸留酒だ。

飲み込むと喉が熱くなり、それが胃に到達すると腹に柔らかな火が灯ったように感じた。

そして香りが良い。

フルーツのような香りが鼻を抜ける。

「このお酒、何です?」

「グラッパだ」

「グラッパ?」

「ワインの搾りカスを更に発酵させ、それを煮立たせて蒸気だけを特殊なガラスの管を通して酒精だけを取り出したものだ」

わお。

ルカにもらった薬酒はこれがベースかも知れないな。

「しかし母君は相変わらずだな。久しぶりに毒気に当てられた」

「母上は姉君のことを溺愛してらっしゃいますから。姉君が坑道に押し込められていた時も大反対して離婚の危機だったと聞いています」

「父は民を思い、必要な事をやったまでだ」

領主氏がやたらと長官に申し訳なさそうなのはそれでか。

相当奥さんに詰められたんだろうな。

あの圧を毎晩受けたら俺なら折れてしまいそうだ。

「それよか長官いいんですか? さっきの話」

長官はグラスの残りを喉に流し込んだ。

「大丈夫だ。母はああいう人だが物事が自分の思い通りにならない事にも慣れている。大枠で自分の希望通りに我々が動けば違った結果になってもキレたりはしないさ」

そうなの?

「だからあまり気に病むことはない。あまり待たさずに孫を抱かせれば子種が誰でも納得してくれる。どうしても相手が見つからなけば適当な船員で手を打てばよい」

いや、確かに長官はセイレーン号のみんなから好かれていたけどさ。

「それよりもだ、オミ。貴様やはり異世界人であったか!」

見ると王子が目をキラキラさせていた。

「さっき言っていた話は何だ? 詳しく聞かせろ。それに姉君、ロンドも異世界人だったのですね?」

「そういえば、クラウディオはロンドに会わせたことが無いのだったな、、、」

ちびりちびりとグラスを傾け、三人で異世界(前世)の話に花を咲かせる。

暫く経って、気付けば紙にエレベーターやエスカレーターの図解をしていた。

「確かにこれがあれば城の暮らしは格段に楽になるな。で、そのモーターってのはどういう仕組みなんだ?」

「王子も磁石はご存知ですよね。あれの力というのは電気で作り出せるんですよ」

「さっきも言っていたフレミングの法則というやつか」

「ええ、電気の作り方とほぼ同じ仕組みでモーターというのは駆動させることができる、のだと思います」

「ふーむ結局、均質な磁鉄鉱と絶縁された細長い銅線が必要という訳か」

「堂々巡りですね」

長官は俺と王子の話を聞きながら呆れたようにグラスをあおった。

「お主らよくそのような話を続けられるな。私にはさっぱりだ」

機械が好きなのはやはり男の子の血がそうさせるのか。

「すみません姉君、退屈な話を」

「まあ、分かる。私もロンドをそうやって問い詰めたものだ」

俺は目の前に乱雑に置かれた紙を摘み上げた。

王子の部屋には黒板が無かったので、こんな箸にも棒にもならない解説に紙とインクを沢山使ってしまった。

五枚あるから約1万円ぶんか。

贅沢な夜だ。

なんとなくその一枚で紙飛行機を折って飛ばす。

「おお! なんだそれは?」

「紙飛行機ですよ。子供の遊びです」

「ちょっと教えろ。あ、それは発電機の解説の紙ではないか。何をする、こっちを使え」

「こんなのは使い古しの紙で充分ですって」

「使い古しとはなんだ、貴重な異世界の技術の資料だぞ」

そういう考え方もできるか。

王子は紙飛行機を広げ丁寧に延ばして他の紙と一緒に革張りの高級そうなファイルに挟み込んだ。

その後は紙飛行機のバリエーションを幾つか作ってみせ部屋で飛ばして遊んだ。

長官は少し退屈そうだったので折り紙で鶴を折ってみせたら目を輝かせていた。

鶴といっても分からねえかなと思って白鳥だと言っておいた。

「白鳥か、渡り鳥ではないか」

そう言って長官は目を細めた。

本当に長官は旅に取り憑かれているんだな。

孫を渡せば新造船というのは夫人もなかなか良いところを突いたな。

しかし長官は自前の船を既に持っているのに新しい船が欲しいんだろうか?

そりゃ欲しいか。

セイレーン号も古びて来たと言っていたしな。

木製で水に浸かりっぱなしだから寿命もあまり長くなさそうだ。

俺は船のニューモデルのカタログを見比べながら真剣な表情をしている長官を想像して笑った。

ちょっと酔ってきたかもしれん。