軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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一時間ほど緩やかな斜面を登って来ただろうか。

ひとまず山頂といえるような場所に辿り着くとそこには石造りの台が置いてある。何も書いてないが、山頂のモニュメントかしら。脇には倉庫のような小屋が建っている。

王子は馬を反転させ下へ目をやった。

眼下にポリオリの畑が広がっているのが見えた。

なんとまあ美しい眺めか。

「馬も休ませてやろう」

王子は馬から降りて手綱を木の枝に掛けた。

馬は早速下生えを食み出した。

「春になると馬の飯がそこら中に生えてるのがありがたい」

ああ、冬の間は飼い葉を持ち歩かなきゃいけないのか。

俺も馬を降りて手綱を木の枝に掛けた。

茶ブチは若葉よりも花が好きみたいだ。

明らかに選んで食べてる。

手近な花を食べ終えたら顔を上げて俺を見てブフンと鼻を鳴らした。

「ああ、はいはい」

俺は手綱を引いてもっと多く花が咲いてる場所へ連れて行った。

いい具合の木がないので手綱を持ったまま馬が花を喰むのを眺めていた。

「オミはだいぶ馬に慣れたな」

「ですねえ。慣れると王子の言う通り可愛いですね」

「そうだろう」

デカくてムキムキで恐えと思ったのはほんのひと月ほど前だろうか。

空いた手で馬の首を撫でていたのだが、鞍の脇あたりまで下がってくると手に何か付いた。

見ると、鞍の下から泡が流れ落ちている。

え、何コレ。

「王子、なんか鞍から泡が出てるんですけど、、、」

「うむ、ずっと上り坂だったからな。汗をかいたのだろう」

「ええ、汗?」

「お主は騎士団の稽古に付き合わんから初めて見たのだろう。馬の汗は粘り気が強くてな。鞍の隙間で揉まれて泡立つのだ」

「そうだったんですね」

首や脚は汗をかいてないようだが、やっぱ毛布と鞍を置いて人間が乗ったら蒸れて暑いのか。

「すぐにでも拭いてやりたいところだが、まだ進むから暫し待ってもらおう」

そう言いつつも王子は馬の食事が終わるまで待つつもりのようだ。

遠くを指差して続けた。

「オミ、見えるか。あの辺りがバルベリーニ領だ」

「おお、隣国ですね。何処です?」

「そこのなだらかな山が3つ並んでいるのの真ん中。よく見るとこれと同じような焚火台があるのが分かるだろう」

ええ?

ああ、言われないと分からないが不自然に山頂だけ森が切れてハゲになっている。

そこによく分からないが、しかし白い四角い台があるような気がする。

「見えるような見えないような、、、何なんです?」

「敵が攻めて来たり、魔物が大発生したりなど重大な問題が起きた時に火をかがって教え合うのだ」

「おお、なるほど」

「騎士団の中でも目の良い何人かが日に三回、ここへ来て火が灯っていないか確認することになっている」

そんな係がいたのか。

でも重要だよな。

電話もメールもないもんな。

火が点いてたら、とりあえず戦に備えて準備しておいて特使が来るのを待つのか。

「あの山の向こう側がバルベリーニだ」

「交流は盛んなのですか?」

「そうだな。商隊やイリスに向かう巡礼者の通り道だしな。バルベリーニ産で多く入ってくるものの代表はワインだな」

「ははあ」

「こちらからは主にガラスだな」

「なるほど、ワインといえば瓶ですもんね」

こないだ通報されたドワーフの工房にもガラス瓶が大量に並べてあったな。

「そう。ワインをガラス瓶に詰めるようになったら長期保存ができるようになり価格が大高騰した」

「そうなんですか?」

「うむ、出来が良い年のものが貴族の間で取り合いになってな」

「ポリオリではブドウは難しいですか?」

「この辺りは川が多く土が肥えているからな、植えれば育つだろうが、先ずは人が飢えぬためには麦だ」

そりゃそうか。

ブドウは土地が痩せてて水が豊富じゃなくても育つんだっけ?

「あとはワインの栓になるコルクという木材があるのだが、あれはバルベリーニのノヴェッロ村でしか取れん」

「それは強いですね」

「うむ、惜しいことをした」

「といいますと?」

「ウチの領地にすることも可能だったらしいのだが、なにしろウチはドワーフの国だ。木に詳しい者が居なかったらしくてな。その価値が分からなかった」

あちゃー。

「薪にも建材にならぬ、切るのに難儀する木の生える山村なぞ、と譲ってしまったのだそうだ」

「ガラスとコルクの両方を押さえてたら凄いことになってたでしょうね」

「うむ。しかし祖父が言うにノヴェッロを手に入れなかったから王都から放ってもらっているのだそうな」

「なるほど。どっちもあったら価値が高すぎて直轄地にしたくなっちゃいますもんね」

「だからまあこれで良かったのかもしれん」

王子は手綱を持った。

俺も馬に跨る。

「そういえばバルベリーニとの交流といえば、そろそろ道の落ち葉はらいが行われるぞ」

「なんです、それ?」

「両国を繋ぐ街道があるのだが、秋になると木の葉で深く埋もれてしまってな」

「ああ、カイエンともそれで行き来ができないと聞きましたね」

「その道を掘り出す毎年恒例の行事だな」

「いつです?」

「春分の日だな」

それって来週じゃんね。

年間イベントカレンダーとか配ってないの?