軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

899話 虹の花

砂に埋もれた遺跡の一室で、俺はルフレと共に調理を行う。

復活した魚人さんのリクエストは金色卵だが、ただ茹でるだけじゃ工夫がない。そこで俺は、自分がこのアイテムを手に入れたら作ろうと思っていたスパニッシュオムレツを作ることにした。

これなら美味しい野菜もたくさん使えるし、卵の嵩増しもできる。もともと大きい卵だから、1つでも十分大きなスパニッシュオムレツが作れるのだ。

「群青ナスに白トマト、黒ジャガイモ、赤ブロッコリーがいいかな。あと、前に作った燻製肉を使おう」

「フム!」

野菜を下ごしらえし、良いサイズに刻んでいく。割った卵に出汁や調味料を加え、卵液を作れば準備完了だ。

「野菜をオリーブオイルで炒めて、燻製肉も投入」

「フムム!」

「卵液を入れるタイミングバッチリだぞルフレ!」

「フムー!」

オルトたちが育ててくれた自慢の野菜に、ルフレとヒムカとサクラが協力して作った燻製肉。さらにレア度が高い岩塩やオリーブオイルと、今できる最高の卵料理が完成した。

名称:スパニッシュオムレツ・金色卵

レア度:8 品質:★5

効果:満腹度を45%回復させる。使用者に50分間、防塵、酸耐性・大、砂の民を付与する。

メッチャ強い! これがあれば、ここのエリアのボスに勝てるんじゃなかろうか? ゆで卵の上位互換だった。

「おお! なんとも美味しそうな香りが!」

魚人さんが鼻をヒクヒクさせながら、満面の笑みで近寄ってくる。いや、笑ってるんだよね? 威嚇してるわけじゃないよね? 顔こわっ!

インベントリから魚人さんでも座れるベンチとテーブルと取り出し、その上にスパニッシュオムレツとフォークを置く。

「どうぞ」

「かたじけない! では、早速!」

卵の匂いを嗅いで我慢しきれなかったのか、魚人は俺の言葉が終わる前に食い気味にスパニッシュオムレツにフォークをぶっ刺していた。

そのままオムレツをガツガツと貪り始める。

「うまい! うまいぃぃぃぃぃ!」

「あ、この味変用のガーリックトマトソースに付けるのもいいですよ」

「こちらもうまいぃぃぃぃぃぃぃ!」

食べ方は少々汚いが、これだけ喜んでくれると嬉しくなってくるね。貴重なアイテムを使ってしまったが、また採りに行けばいいや。

それから3分。魚人はあっという間にスパニッシュオムレツを完食していた。

「まことに美味でござった」

おすまし顔だけど、口の周りに食べかすとソースが付いているぞ。

「これで故郷に帰るための力を得ることができた。本当に感謝いたす」

「いや、喜んでもらえて嬉しいです」

これ、この後どうなるんだろう。コクテンたちのルートだと、ここで魚人を倒すと部屋がセーフティゾーン化し、その後壁が崩れて道が開かれるらしいんだが……。

「それで、だな」

「はい?」

「厚かましいついでにもうひとつ願いを聞いてはもらえぬだろうか? すでに我が家族はなく、残っているのはその子孫たちであろう。故郷に受け入れてもらうためにも、何か手土産が欲しいのだ。貴重なものを持ちかえれば、きっと喜んでもらえるだろう」

貴重な手土産をくれって、本当に厚かましいな! 金色卵も貴重品だったんだけど! でもまあ、乗り掛かった舟だ。ここは言うことを聞きましょうかね。

そもそも、厚かましいお願いを重ねてくるのってゲームキャラあるあるって感じだもんな。お金やアイテムが欲しいと言われて何度も貢いだ挙句、逃げられるようなイベントだってあるのだ。

え? 逃げられたりせんよな?

「……何か欲しい物とかあるんですか?」

「うむ。できれば、虹色サボテンの花が欲しいのだ」

「虹色のサボテンって……。あれって、蜃が作り出す幻影ですよね?」

魚人さんも、実在してないって知らない? だが、彼はゆっくりと首を横に振る。

「いや、あれは特殊な方法を使えば採取できるのだ。知らぬのか?」

「ええ? まじ? あ、あなたはその方法知ってるんですか?」

「勿論だ」

魚人さんが説明してくれる。なんと、俺たちが使っている砂のランプだが、隠された機能が存在していた。砂のランプの蓋を開いてアイテムとして使用すると、蜃気楼に干渉することが可能になるというのだ。

蜃の生み出す幻影を打ち消し、虹のサボテンを現実の物とするらしい。あとは、遠くに町などが見えている際は、その場所への転移もできるとのことだった。

鑑定してもそんなことどこにも書かれていないんだが……。鑑定の上位スキルがあれば、分かることなんだとか。

「尤も、使い過ぎるとランプが壊れてしまうので、数回に抑えておくのがいいだろうが」

隠し機能には使用回数に制限があるのだろう。値段が高い方がたくさん使えるのかもしれない。まあ、1回で壊れるって感じではなさそうだ。

「じゃあ、隠し機能の試運転も兼ねて、虹の花を採取してきます。少し待っててください」

厚かましいとか思っちゃったけど、ランプの隠れた使い方の情報はヤバい。虹の花を採取して渡したとしても、お釣りがくるのだ。

「うむ。頼んだ! ああ、戻るのであればそこの転移陣を使うとよい」

ちゃんとこの部屋をセーフティゾーンとして使うこともできるのね。よかった。

採取自体は簡単だった。ランプの隠れ機能を使いながら、蜃を倒すだけだったのだ。普段であれば消滅してしまう虹色の花を咲かせるサボテンが消えずに残り、触れることが可能である。

「採取も普通にできるけど……あ」

サボテンの花を採取した直後、虹の花を残して他の蜃気楼と同じようにサボテンが消えてしまった。うーむ、儚いぜ。

名称:サボテンの花・虹

レア度:8 品質:★8

効果:素材。食用可能。

効果は分からないが、絶対に強いじゃん! レア度8もあるし! あと何個か採取していって、後で実験してみよう。

30分ほどかけてさらに2つ入手したんだけど、合計3度目の使用で砂のランプが壊れてしまった。500万もしたんだよ?

たった3回で壊れるとは思わないじゃん!

「……とりあえず、一番安い砂のランプを買い直そう」

「ニュニュ」

「慰めてくれるのか? メルム」

「ニュ!」

ああ、慰めてくれてるんじゃないわ。お気に入りの砂のランプを早く買い直せっていう催促だわ。まあ、いいけどさ!

「ニュニュー!」

「はいはい。分かったよ」