軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

893話 砂漠の雑貨屋

アリッサさんから情報を買って、すぐに砂海の町へとやってきた。

オアシスの畔に造られた町だ。角度によって、ターコイズブルーやエメラルドグリーンにも見えるオアシスが非常に美しい。

石灰のような白い建材を使って作られた建物が並ぶ様も、異国情緒たっぷりで面白かった。

「前も少し探索したけど、がっつり歩くのは初めてだからな」

「ヒム!」

「ムム!」

メンバーは、砂に強そうなオルト、砂漠の暑さに強そうなヒムカ、砂に足を取られずに済むファウ、アイネ、リリス、メルムに、妖怪の野衾だ。

「ブシュー?」

「ヤー!」

「ニュニュー」

興味深そうな野衾に、ファウたちが色々と説明してやっているらしい。仲が良くていいことだ。浮遊するモモンガにしか見えない野衾の上にファウが乗っている姿は、メッチャ可愛いね!

「お、雑貨屋! なんか面白いもの売ってないか?」

「デビ!」

「フマー!」

「ホットドリンクとコールドドリンクがあるな。情報通り、地下は寒いわけか」

それ以外に、さほど目を引くものはなかった。まあ、普通の雑貨屋だしね。ただ、本命はまだ残っているから、そこで面白いアイテムが購入できるだろう。

暫く町中をあるいていくと、モンスたちが何やら反応を示す。北海の町で裏路地の雑貨屋を発見した時と同じだ。

今回は最初からそこへ向かっているから、勝手に走り出したりはしないけどね。密集する白い建物の間を通る狭い路地を通り抜け、突き当りにひっそりと佇む木製の扉を発見した。

アリッサさんから買った情報通りである。

中に入ると、煌びやかなガラス製品やランプが並ぶ、ちょっとエスニックというか、アラビアンな感じの雰囲気の店内が広がっていた。

特に多いのが、ランプだろう。銀色の、擦ったらランプの魔神でも出てきそうな形をしている。

これらは砂のランプという魔道具であるらしい。使用するとしばらくの間砂に足を取られることがなくなり、一定範囲内の流砂が消え去る。さらに、蜃気楼も見分けがつきやすくなるという素晴らしい道具だ。砂漠を攻略するなら必須のアイテムと言えよう。

コクテンたちもこのランプを使い、砂漠を攻略していったそうだ。また、ランプの効果でも消滅しない流砂を怪しみ、その下の空洞を発見することにも成功したという。

効果範囲別に値段が変わっていて。一番高いやつは2000万もする。ただ、これはレイド用の超広範囲の品で、パーティで使うなら300万や500万のもので十分らしい。

「500万のやつにしておくかね」

「ニュー!」

「メルムはランプが好きなのか?」

「ニュ」

メルムがランプを包み込むように纏わりつき、楽しそうに震えている。ひんやりとした触り心地が気に入ったようだ。

ランプの怪しい雰囲気と、宙に浮く黒いスライムのようなメルムの不可思議な見た目が結構あっているね。

メルムがランプから呼び出されたようにすら見えるのだ。

「ヒム」

「ヒムカは作り方が気になってる感じ?」

「ヒムー」

ヒムカはランプを色々な方向から眺めては、頷いたり首を傾げたりしている。子供が背伸びしてランプの目利きをしているようにしか見えんな。

「ム」

「え? それも欲しいの?」

「ムム!」

オルトが両手でしっかりと抱えて買う気満々なのは、バスケットボールサイズの水瓶だった。中に水を入れておくと、魔法の水に変換してくれるというアイテムだ。渇き状態を癒し、短時間渇き耐性が付くらしい。

アイテム説明欄には「どんなにひどい乾燥肌でもこれでバッチリ!」とか書いてあるのだ。

ただ、入れておける水の量はさほど多くないし、変換にも時間がかかる。さらに言えば、水魔術が使えるパーティなら普通に水を飲んでいれば渇きにはならなかった。つまり、うちには必要がない。

多分、水魔術使いがいないパーティ向けのお助けアイテムなんだろう。コクテンたちもこれは買わなかったらしいが、普通に攻略できてるしね。

「もしかして、農業に使えるのか?」

「ムム」

「え? 違う? 単純にデザインが好き?」

「ム!」

オルト、こういうのが好きだったのか。まあ、粘土で作った土器っぽい外見で、なかなか味があるもんな。

「潤しの水瓶、値段は100万か……」

使い道がほぼないマジックアイテムに、100万は高いよ! でも買っちゃう! だってオルトがめっちゃ見てくるんですもの!

「わかったよ。これも買おう」

「ムムー!」

うむ、オルトが喜ぶ姿が見れるなら、100万くらい安いものだ! いや、高いけどね?

「じゃあ、ランプと水瓶の性能を見るために、砂漠に出てみるか! もうすぐ夕方だし、その前にフィールドの様子を知りたいし」

「ニュー!」

「ヒムー!」

「ムッムー!」

砂漠は相変わらず足が沈み込む感覚があって、歩きにくい。そこで砂のランプを使うと、効果は劇的だった。

俺たちの周りだけ砂が固まったかのように、足を取られずに歩けるのだ。足裏の感触は、石の上を歩いているのと変わらない。

水瓶は……まあ、美味しい水だね!

「よし、これなら戦闘もしやすそうだ。みんな、いくぞ!」

とか言っていたんだけど、最初の戦闘で手ひどい目に遭った。砂の下から襲ってくる敵に、完全無防備で奇襲を許してしまったのだ。

ポイズンスコーピオンという、この砂漠だと一番の強敵と言われるモンスターの群だった。

死に戻りなく勝てたけど、結構ピンチだったのである。

「大丈夫かみんな?」

「ヒムー……」

「お前は相変わらず虫が嫌いか」

「ヒム! ヒムム!」

あんな気持ち悪いの苦手で当然じゃないかって感じのアピールされてもな。

「……俺は蠍結構好きだから」

「ヒ、ヒム!」

ヒムカが「ううぇぇぇっ!」って顔をしている。男の子は虫が好きなんだよ! このシティーボーイめ!

「ムムー!」

「うん? どうしたオルト」

「ムー!」

「お、サボテンじゃないか!」

花の色は――赤か。実は、サボテンにはいくつか種類があるらしい。まずは赤。食用にできるが、効能はさほど高くはない普通のサボテンだ。

次に黄色。これは調薬や錬金に使えるレアなタイプ。10本に1つくらいの割合らしい。

で、最後に虹色の花。これが食わせ物で、実在していないのだ。蜃というモンスターが作り出している、プレイヤーを惑わすための幻なのである。近づけば当然戦闘になってしまう。

なので、虹色は無視するのが吉だった。まあ、今見えている景色が蜃気楼かどうか判別するのに使えるので、役に立たないことはないんだが。

「とりあえずアレを採取するか。できれば黄色の花のサボテンを探してくれー」

「ムム!」

「ヤー!」

モンスたちは砂漠でも元気だねぇ。ヒムカ以外は。

「ヒムー」

「帰りたいって顔すんな。ほら、いくぞ」

「ヒムー……」