軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

889話 副船長と待ち伏せ

ホワイトホーンラットを逃してしまった俺たちだが、食べ物で誘き寄せる作戦は上手くいった。

これを網の無い空調穴の前で行えば、やつの身柄を確保できるかもしれない。船長室に入れたら話は簡単なんだが……。

そう思って船長室へと向かうと、なんとNPCたちの姿が消えているではないか! イベントが進行したのかね?

船長室の扉のノブへ恐る恐る手をかけてみると、あっさりと開いた。中では相変わらず船長のご遺体が床に横たわり、船医と副船長の姿があるのだ。それ以外のNPCは姿を消しているな。

「筆頭船主殿か? 何か用事かね?」

「え、えっと、そうなんですが……」

船長が殺された直後だし、NPCたちもピリピリしているんだろう。副船長は、一見すると怒っているのかと思うほど不機嫌な表情でこちらを見てくる。

このゲームのNPCって基本フレンドリーだし、いつもニコニコで友好的だから、こんな威圧感がある対応をされてちょっとキョドっちゃったよ。こえー!

「く、空調穴をですね? 見せていただけないかなーと思いまして……へ、へへ」

圧倒的下手に出ながら、副船長にお伺いを立てる。ずっと睨まれているの、マジで恐いんですけど!

「空調用の穴を見て、どうすると?」

「その、ですね――」

三下ムーブしながら空調穴の前に食べ物を仕掛けて、ホワイトホーンラットを誘き寄せて捕まえたいと説明した。

「ふむ……」

難しい顔で唸る副船長。ダメ? ダメですか?

「……それは良い作戦だ。ぜひこちらからお願いしたい」

よかった! OK出ました! 怖い顔で「そんなこと許すわけなかろう! 去ね!」とか言われずに済んだよ!

「では、私も手伝おう。どのような形で罠を仕掛けるのだね?」

「え? あ、これを穴の前に置きまして……」

「ほう? 刻印入りの皿か? 準備がいいのだね。さすが旅人だ」

「あ、ありがとうございます?」

急に副船長の当たりが柔らかくなって、またキョドッてしまった! 好感度上がったのか? こう露骨に態度変わると逆に恐い!

浴室へと案内してもらい、副船長と一緒に食べ物を設置した。その後は先ほどと同じように、浴室の入り口から監視するだけだ。

「……」

「……」

ち、沈黙が辛い……。多少対応が柔らかくなったとはいえ、副船長と並んで待つとか気まずすぎる!

リックやファウでさえ、ずっと無言になって大人しくするほどの威圧感なのだ。今副船長に命令されたら、即座に従うんじゃなかろうか。

あれ? 俺に足らないのってこれか? この威圧感を身に付ければ、モンスたちはもっと大人しくなるのか?

「ぬん」

威圧感よ出ろ! どうだ! さぞかし恐ろしかろう!

「キュ?」

「スネ?」

ほっぺムニムニするな! そんな変な顔だったか? くそ! 副船長のような威圧感は、俺みたいな優しいダンディさんにはハードルが高すぎる!

そんなことをしていたら、浴室で反応があった。

「チュー?」

「今のは……!」

「うむ」

副船長と共に浴室を覗くと、そこにはチーズを齧る白いネズミの姿があった。額には角が生え、間違いなくこいつがホワイトホーンラットだろう。

「ど、どうしよう。倒しちゃっていいのか? それとも捕獲?」

俺が悩んでいると、副船長が先に動き出したではないか。

「船長の仇ぃぃぃぃぃ!」

「は?」

ちょ! 副船長ぉぉぉ! あんた冷静なキャラだと思ってたのに! 急にバーサーカーにキャラチェンジですか!

「だらぁぁぁ!」

「チュチュー!」

強いぃぃっ! インテリキャラかと思ってたら、一撃でネズミさんを倒したよ! さすが海の男! 細く見えるけど服の下は細マッチョに違いない!

「ふぅぅぅぅ。船長、仇は取りましたよ……」

「……こ、これでイベント終了?」

副船長の豹変ぶりに戦慄していたら、アナウンスが聞こえてきた。

『ホワイトホーンラットの撃破、おめでとうございます。現在の撃破数は、17匹です』

おっと、当然だけど撃破に成功したのは俺だけじゃなかったか。まあ、俺が倒したわけじゃないけど。

ウィンドウには、今まではなかった項目が追加されている。ホワイトホーンラットを撃破した人数と、その名前が記されているのだ。

これ、制限時間までに一定数のホワイトホーンラットを倒さなきゃいけないってことじゃないか? 撃破数でイベントの成否や報酬が変わる的な?

だとしたら、他のプレイヤーに情報を教えてあげないとダメだよな。

ただ、掲示板を軽く覗くとすでに情報拡散が始まっているようだ。俺が何かしなくても大丈夫そうだね。

副船長たちに挨拶をして、船長室を後にする。その直後だった。

「ぬわ!」

「おお?」

誰かの背中にぶつかってしまった。まあ、ハラスメントブロックが働くので、俺が相手を押し出すような形になってしまったが。

イベント時には各プレイヤーが個別に船長室へと入る形になっているせいで、ほぼ同時に部屋を出たプレイヤー同士がぶつかってしまったのだろう。

「おや? 誰かと思ったらユート殿ではござらぬか」

「その喋り方、ムラカゲか?」