軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

886話 事件発生

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

いきなり人の悲鳴が聞こえた。絹を裂くようなとは正にこのことって感じの、女性の悲鳴である。

て、敵襲? それとも何か事件か?

というか、変だな? 船室の中から外の音が聞こえるわけないのだ。今までだって騒音に悩まされたことなんてないし。

ということは、何かイベント発生かね?

「とりあえず見に行くか」

「キキュ!」

「ヤー!」

「……お前ら、変ないたずらしないで大人しくしてるんだぞ?」

「ラ」

「フマ」

みんなシリアス顔で頷いてるけど、それが信用できないってことはよーくわかってるんだからな!

「えーっと……? 向こうがなんかザワザワしてるな」

船室を出て、人が集まっているっぽい船長室の方へと向かってみる。すると、部屋の前に大勢の人が集まっていた。

プレイヤーよりも、NPCの方が多いな。船員に加え、普通の乗客っぽいNPCたち。そうなのだ。実はプレイヤー以外にも乗客がいるのである。

賑やかしのためのモブNPCかと思っていたら、何らかのイベント要員だったらしい。NPCがバリケードとなっているせいで、問題の部屋には入ることができない。

俺は集まっているNPCの中に親方を発見して、話しかけた。

「親方。何があったんですか? 凄い悲鳴が聞こえましたが」

「……殺しだよ」

「はぁ? こ、殺し? 誰か殺されたってことですか?」

「ああ、船長が……」

「せ、船長?」

なんと、船長さんが殺されてしまったらしい。実はほとんど船長を見かけなかったので、顔も知らないけど。だって、出航式のまとめ役とか、船長っぽい役割の所を親方がやってたからさ。

でも、イベントで殺される役割ならそれも納得だ。ただ、これからどうなるんだ? もしかして犯人捜しパートが始まる?

何とか部屋の中を覗けないかとNPCたちの後ろで背伸びしていたら、おなじみのアナウンスが聞こえてきた。

ピッポーン。

『船内で、特殊イベントが発生しました』

同時に、体が動かなくなり、ウィンドウが自動で立ち上がって映像が流れ始めた。ムービーシーンに入ったらしい。

ムービーには最初、船長室の扉が映し出されていた。数人のNPCが部屋をノックするが、返事がない。どうやら彼らは会議の為、船長室にやってきたようだ。

何度ノックしても船長からの返答がないので部屋に突入すると、そこではうつ伏せに倒れる男性の姿があった。

女性の悲鳴と、男性たちの困惑の声。慌てて近づいた副船長が船長を抱きかかえると、何と船長はこの時点でまだ生きていた。

しかし、声を上げるほどの余裕はなく、すぐに息を引き取ってしまう。ここでも顔が良く見えんな。船長の扱いよ。

短い暗転の後、背中から血を流してうつ伏せに倒れる男性と、その脇に立つ白衣の老人が映し出される。老人はどうやら船医であるらしく、船長の遺体を検分しているようだ。

「副船長。船長の死因――致命傷は、この背中の傷じゃね」

「……背中ということは、自殺ではあり得ない。他殺で間違いないということですか?」

「そうなんじゃが……。普通の刃物ではないな。何かの牙のようなもので刺されとる」

「牙、ですか?」

「うむ。かなり太い肉食獣の牙のような傷跡じゃ」

船医さんと副船長の会話が続く。船長は間違いなく他殺で、死因は背中から何かの牙で刺されたこと? じゃあ、犯人はモンスターってことか?

『プレイヤーの皆様、船長の命を奪った殺害者を探し出してください。制限時間は最初の寄港地へと到着する24時間後。寄港地へと辿り着いてしまえば、殺害者は逃げおおせてしまうでしょう。ぜひ皆様の力で、船長の無念を晴らしてください』

アナウンスがそう締めたところで、体が動くようになった。イベントムービー終了ってことだろう。

これは、ミステリー系のイベントきたんじゃないか?

客船の密室での殺人事件! 謎めいた死の真相を追え! 驚愕の犯人とは! みたいな?

まあ、犯人はモンスターっぽいけど。船長室に何か手掛かりはないかな? 闇雲に探すには、この船は広すぎるのだ。

「あのー、中に入りたいんですけど……」

「申し訳ないが、船員以外は立ち入り禁止です」

ダメか。まあ、ムービー見れば船長室の状況は分かるし、そっちを見ろってことなんだろう。そもそも、乗船しているプレイヤーが全員押しかけてきたら大混乱になりそうだしね。

「ユート君!」

「アリッサさん。現場見に来たんですか?」

「一応ね。何か手掛かりはないかと思って」

「そもそも部屋に入れないんですよね」

アリッサさんも中に入ろうとしているが、やはりNPCに止められている。これは、特にモンスターのヒントとかなしで捜索しなきゃいけないっぽいな。

仕方ない。地道に捜索しよう。

「じゃあ、俺はいきますね」

「期待してるわ」

「いやー、俺はこういう推理ものとか苦手なんで。でも、やれるだけやりますよ」

「うん。それでも、期待してるから!」

「は、はあ」

何故かアリッサさんの期待の言葉に見送られる。アリッサさんとか検証班の方が絶対に得意だと思うんだけどな。

とりあえず部屋に戻ってきた。個人の部屋にヒントが隠されていることはないと思うが、一応ね。逃げたモンスターが広い特別船室に潜んでいるとか、可能性ゼロではない気がするし。

「みんなこの部屋に怪しい物がないか探してくれー」

「スネ!」

「ニュー」

「デビ!」

モンスたちが部屋の探索を始める。

探せと言ったけど、荒らせとは言ってないんだけどな……。布団の中には何もないと思うよ? 絨毯の下も多分違うかなぁ? タンスを開けたら閉めなさい!

「でも、やっぱり個人の部屋を探しても意味なさそうだな。倉庫とか――」

「キキュー!」

「うん? どうしたリック?」

「キュ!」

リックがブンブンと手を振って俺に手招きしている。え? もしかして本当に何か見つけたの? マジで?