軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

843話 夜の浮遊大陸

リックの先導が実は適当だったと分かったところで、どうせ進むための目印なんかないのだ。この後も、リックが行きたい方へ進んでみることにした。

夕日が照らす大地を歩き続けていると、無数のモンスターが襲ってくる。ウィングロックだけなら相性の問題で有利に戦えたんだが、それ以外のモンスターはかなり厄介だった。

高速で突進してくる、空飛ぶ魚のような姿のスカイボニート。光魔術を使う植物型モンスターのヒカリホオヅキ。白いモフモフの毛皮を纏った小型犬、クラウディワンワン。

最後のがおかしいって? いやね、何ならこいつが一番強かった。見た目は、羊みたいな毛を持ったスピッツである。

ただ、その毛があらゆる攻撃を弾くモフモフシールドであるのだ。しかも、俺たちの持っている属性では弱点を突けないらしく、全然HPが減らなかった。

そうして手こずっている間に、ワンワンの牙や爪で大ダメージを食らうわけである。攻撃力も意外と高く、こんな可愛い見た目で完全な物理ファイターであった。

回復魔術を使えるヒカリホオズキが一緒だと、さらに戦闘が長引いたね。

「かなり消耗したなぁ」

「――」

「トリー」

天望樹の攻略ですでに消耗していたが、今はかなりギリギリだ。モンスの交代枠ももうほぼ使い切っているし、そろそろ探索は切り上げ時かな?

フィールドの環境ギミックが雲くらいでよかった。もっと厳しいフィールドだったら、もっと早く引き返していた。

というか、エリートテイマーになって居なかったら、多分ここまで来られていなかっただろう。選んで本当に良かった。

「うん? あれは――建物だ!」

「キキュ!」

「モグモ」

引き返そうかと悩んでいた時、遂に視界に変化が現れた。平原の先に、明らかな人工物が見えてきたのだ。

「リック、お前に先頭を任せてよかったぞ!」

「キキュ!」

ドリモの頭の上のリックが、クールな感じでサムズアップする。ドリモの真似か? そもそも、全部分かってた感出してるけど、偶然なのは分かってるんだからな?

「人でもいればいいんだが……」

「モグモ」

近寄ってみると、それは壁や天井が半分崩れた廃墟であった。もう夜なので、ちょっと迫力があるね。

倉庫のような建物だったのかな? 灰色の石を組んで造られた平屋は、すごい高度な技術が使われているってわけではなさそうだ。

扉の無い――失われたのか元々ないのか分からない入り口をくぐり、廃墟の中へと足を踏み入れる。

床は2メートル四方の正方形の石が並べられた簡素なものだ。その上に、崩れた床や天井が散乱していた。目に入るのは、それだけだ。

ここを利用していたであろう何者かの痕跡は全く見つけられなかった。それでも諦めきれずに石をひっくり返したりしていると、ドリモの声が聞こえた。

「モグモ」

「お? 何かあったか?」

「モグ」

「これは……」

「ヤー?」

ファウの召喚した火魔を灯りに、ドリモが見つけてくれた紙片を覗き込む。ボロボロのそこには、空に浮かぶ大地と、その上に点在する町などが簡素に描かれていた。

「地図じゃんか!」

「ヤヤー!」

「モグ」

ドリモが見つけたのは、銀の大陸の地図である。腐食が進んでいて全貌は分からないが、周辺の地形は何となく読み取れる。

「この×印がこの廃墟だとすると、こっちに行けば村か町があるっぽいぞ」

「キュ?」

「デビ?」

「ほら、お前らも見て見ろよ。ドリモが見つけたんだ」

「クマー!」

「トリー!」

地図を皆で見ていると、モンスたちがドリモを囲んでワッショイし始める。小さくともオレアやリリスは腕力が高いし、クママもいるからな。大きなドリモでも、簡単に持ち上げられるのだ。

「ヤーヤ!」

「クーマ!」

「モグ」

クール! 胴上げ状態なのにドリモさん超クール! さすがハードボイルドモグラ! 動じないぜ。

「とは言え、もう夜だ。何が出るか分からんし、転移陣まで戻るぞ」

「――♪」

「トリー!」

大発見でテンションが高いモンスたちを引き連れ、夜の平原を進む。ただ、これがマジでヤバかった。

隠密能力が高いモンスターが大量出現したのだ。

ウィングロックの翼を黒くして、闇魔術を使えるようにしたフォールンウィングロック。黒い霧のダークミストスピリッツなど、昼のモンスターを黒くしたタイプのモンスターもいれば、骨の翼が生えたフォールンエンジェルスケルトンなど、夜っぽいモンスターも多い。

多分、昼が天使系の敵で、夜が堕天使系の敵なんだろう。

本体が黒いから目立たないうえ、攻撃方法も夜では視認しづらいものが多い。しかも数も昼より多く、マジで難易度が倍くらいに跳ね上がっている。

結局、転移陣に戻るのは諦めて、超帰還の玉を使ったよ。リリス、お前の尊い犠牲のお陰で決断できた。ありがとう。

「デビー!」

まあ、畑に戻ったらすぐ出迎えてくれたけど。黒いスケルトンに倒されたのがよほど悔しかったらしく、すぐに浮遊大陸へ戻ろうとアピールしている。

「リベンジはするけど、今は体を休めなきゃ。すぐには無理だって」

「デビー……」

「リリスは必ず連れてくから、元気出せって。な?」

「デビー?」

「本当だから」

「デビ! デービーデビーデビデビー」

俺の小指を持って、上下に振るリリス。多分、勝手に指切りげんまんしてるな。これ、約束させられたことになってるの?

悪魔の指切りとか、破ったら何があるか怖いんですけど!