軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

840話 天望樹の精霊

天望樹の枝を伝って登り続けていると、周辺の様子が段々と変わり始めるのがわかった。

あれだけ鬱蒼としていた樹冠は明らかに密度が薄くなり、柔らかい木漏れ日が無数に差し込んでいる。

そして、さらに上っていくと、頭上から光が差し込む広場へと出たのであった。

周辺の枝葉が絡まり合って、まるで円形のテーブルのようになっているのだ。直径は10メートルほど。広いとは言えない。

そんな円形の広場の中央に、見覚えのあるマークが描かれていた。大きな木をシンボル化した図案。間違いなく、天望樹の種子の発着場であった。

「ここから、種子に乗ってさらに上がるって事?」

「トリ?」

「――?」

見上げると、青い空と白い雲が目に入る。この広場の頭上だけ樹冠に裂け目ができ、遮るものが何もないのだ。

どう考えても、ここから種子でさらに上るってことだよな? でも、上には何もないぞ?

「え? マジ? オレア、サクラ、もっと上があるの?」

「トリー?」

「――?」

オレアとサクラは首を捻っている。2人もここから先の事はわかっていないらしい。

「うーん……。ま、行ってみりゃ分かるか」

「キキュ!」

「ヤヤー!」

両肩のチビーズが、大賛成とばかりに万歳ポーズだ。未知の領域を前に、心が躍っているのだろうか? 眼がキラキラしている。いやー、冒険好きだねぇ。

「よし、みんな乗り込め!」

「デビ!」

「モグモ」

「クマー」

皆で種子によじ登る。

「クマー」

「ちょ、クママ! そんな頭から!」

「クママー!」

「つ、潰れる!」

クママが種子に乗るのに失敗して、頭から俺に突っ込んできた。縁に足が引っかかってしまったらしい。

一度下りればいいのに、無理やり入ろうとするから! 完全に逆さ状態で足をジタバタ動かしている。

「クーマー!」

「一度外に出すぞ、ドリモ」

「モグ」

「クママちょっと大人しくしろ!」

「クマー!」

ドリモと協力して、クママを一度種子の外へと放り出した。3メートルくらいの高さだが、クママは驚きの反射神経を見せつけてシュタッと着地する。ポーズ決めんな! 10点満点じゃないよ!

「はいはい。早く乗り直せ」

「クマー」

「モグ」

ドリモの手を借りて、今度はちゃんと乗り込めたクママ。額の汗をぬぐうポーズしてるけど、お前は汗出るのか?

「うーん? これは……」

「ヤ?」

「キュ?」

「グレーアウトしてて、使用できんな」

種子のウィンドウを開くと、????という項目が表示される。しかも、灰色になっていて選択することもできない。ここまできて、先に進めないってことなのか?

『人の子よ』

「うわっ!」

「キュー!」

「ヤー!」

いきなり誰か出てきた!

俺がのけぞったせいで振り落とされたリックとファウが怒っているが、仕方ないじゃないか! 目の前に透明な男の人が急に現れたら、誰だって驚くだろ!

緑色の髪に、トーガ風の衣装を身に着けた優男である。

天望樹の精霊様だった。

『よくぞまいった』

「は、はい」

「トリー!」

「――!」

オレアとサクラがメッチャ笑顔! やはり巨木の精霊様は植物モンスターからすると大好きな相手であるらしい。

『この魔法陣は現在封印されている。特別な資格を持っている者にしか、使用許可は与えられないのだ』

「特別な資格、ですか?」

『この魔法陣を利用できるのは、希望をもたらすものだけ。そなたは自分がそうであると、示さねばならぬ』

「は、はあ」

希望をもたらす者って、どういうこと? プレイヤーって意味じゃないよな?

戸惑う俺の前で、半透明の精霊様が両手を俺の眼前に突き出してくる。

『動くなよ』

「は、はい」

急展開過ぎて、さっきから間抜けな返事しかできん! このまま待ってたらいいの?

『そなたと人々の絆を確認する。どれだけ人々と交流し、希望の光となっているか、それを明らかにするのだ』

絆って、どういうことだ? NPCさんと仲がいいかどうかってこと?

首を傾げていると、精霊様の掌が薄く輝いた。ちょっと眩しいんですけど……。でも、下手に動けない雰囲気なんだよな。

『これは―――』

え? なに? どうしたんすか? 意味深に驚かないで!

『何と強き光……! 素晴らしい!』

一瞬ドキッとしたが、感嘆の声であったらしい。

『そなたはまさしく希望をもたらす者!』

「えーっと、ここを使ってもいいってことでしょうか?」

『うむ。許可しよう』

なんかよく分からんが、使用許可が下りたらしい。精霊様に、これまでの行動とかを参照されたのか? 希望がどうとか言ってたし、ボス撃破数みたいなもの? それとも、悪魔撃破数とか?

まあ、先に進めるならそれでいいが。