軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

837話 樹界鴉

あと1つレベルが上がれば、新しいスキルを覚える。できればボス戦の前にレベリングをしたいところだ。

俺はモンスたちと共に、ミミックと戦闘した場所から少し先へと進んだ。だが、その先は想像以上に厳しいフィールドであった。

まず、道が細い。それこそ1メートルに満たない場所すら多いのだ。しかも、常に横風が吹いており、バランスを崩すことを恐れて激しく動くこともできなかった。

それでもモンスターは変わらず襲ってくるのだから、質が悪いのである。

まあ、俺たちは天望樹の実のジュースのお陰で浮遊を得ているから、落下はしないけどね。ただ、空中だと身動きがとりづらいので攻撃を食らいまくるのだ。できるだけ、足場に立って戦いたかった。

「またミミックでも出てくれたらいいんだけどなぁ」

「キュー」

「ラー」

「そ、そんな呆れた目で見んでも……。分かってるよ! そんな幸運起こるわけないってさ!」

地道にモンスターを倒していくしかないな。そう気合を入れ直した直後――。

「え? ボ、ボス壁? マジかよ!」

「キキュー!」

「ララー!」

「す、すまん。取り乱した」

俺たちが足を踏み入れたのは、少し広い空間だった。あからさまに普通じゃないんだが、それでもここがボス部屋ではないと考えてしまったのには理由がある。

足元が、スカスカだったのだ。

それこそ、幅1メートルほどの通路が蜘蛛の巣状に張り巡らされているんだが、とてもではないがボス戦を行えると思えるほどの密度はない。

通路が3割に、空間7割ってところだった。通路と通路の間には何メートルもの隙間があるのである。

少しでも気を抜けば、その隙間から落下してしまうだろう。浮遊がなかったら、雑魚敵戦でも苦戦してしまいそうな足場の悪さだ。

「こんな場所でボス戦だなんて、誰が思うかよ!」

「キキュ!」

「ラー!」

「だ、だからごめんて!」

俺の背中にしがみ付くアコラと、頭の上のリック双方にペシペシと叩かれた。怪しいところに無警戒に突っ込んだ俺の油断を怒っているらしい。

「と、ともかく、ボス戦だ! そっちに集中しようぜ!」

「キュー」

「ラー」

ヤレヤレってすんな! しかもダブルで! 最近、アコラがリックっぽくなってる気がするんだよな! 兄貴分の真似してる?

「クアアアアアアァァ!」

「緑のカラス?」

「キキュ!」

「ララ!」

登場したのは『樹界鴉』という名前の鳥だった。そのサイズはクママくらいだろうか。まあ、鳥としては大きいが、ボスとしては小さい方だろう。

突如舞い降りた緑色の鴉は、先制攻撃を仕掛けてきた。やつが甲高い鳴き声をあげると、俺たちの周囲に紫色の花が咲く。

そして、その花が大量の紫色の煙を吐き出した。中範囲に毒を撒き散らす樹魔術、ポイズンパフュームである。

この狭い足場であれば、ほぼ避けることは不可能だろう。まあ、普通であればだけど。

俺たちは浮遊で逃げることができるし、そもそも天望樹の実のミックスジュースには、毒耐性・大が付いていた。俺たちにとっては、ちょっと視界が見えづらくなる以上の効果はないのである。

「今度はこっちの番だ! くらえ!」

「キキュ!」

「デビー!」

「カ、カァァァ!」

おお? だ、大ダメージだ! 水魔術で驚くほどにダメージが入ったんだけど! 5%くらいは削ったか? 覚醒スキルでも奥義でもないのに、このダメージは異常だった。

樹の民の効果? あとは緑の達人も持っているし、想像以上に攻撃力が上がっているのかもしれない。

「ガンガン行くぞ!」

「――!」

「トリー!」

サクラの鞭も、オレアの鎌もやっぱり大ダメージを叩き出しているぞ! それでいて、相手の攻撃は尽く空振りだ。

ポイズンパフュームの次は、毒の蔦を生み出すヴェノムウィップを使ってきたが、これも効果はほとんどない。蔦による殴打ダメージが少し入るだけだ。

アコラが即座に回復してくれるので、ノーダメージみたいなものだな。

また、翼をはばたかせることで強風を生み出したりもしてきたが、防風効果を得ている俺たちには全く意味がない。

本来はプレイヤーを押し出して、落下させるための攻撃なんだろう。同時に、遠距離攻撃を阻害する効果もあるのだと思われた。

本来、このフィールドで戦うには超強敵であるはずだ。相手だけ飛んでいて、こっちだけ足場が悪い。そして、強風で落下を狙ってくるため、迂闊に動けないのだ。そんなプレイヤーを、毒でジワジワと追いつめる。

心底意地が悪いボスだった。

それが、俺たちにとっては非常に手軽というか、相性が良過ぎる相手になってしまっている。天望樹の実のミックスジュース様様だ。

「カアアアアアアアアアア!」

「ムムー!」

「ヒムー!」

「いいぞ! 2人とも!」

唯一、羽を撃ち出す攻撃がダメージも高く恐ろしいんだが、オルトとヒムカの2枚盾を抜くことはできない。

「よし、反撃だ!」

「トリ!」

「デビー!」

いいぞ! ガンガンやつのHPが削れていく! かつてないほど、ボス相手に有利に戦いを進められているかもしれない!

「このまま押し切ってやるぞ!」

「ララー!」

あ、アコラは前に出すぎちゃダメだから、俺の頭にしがみ付いてなさい。

「ラ?」