軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

821話 天望樹の使い方

「うわぁ。さすがユートさん。即金で1000万をポンと……」

「サスシロだね」

「サスシロだよ」

雑貨屋で天望樹の種子や、他にも気になったアイテムの支払いを済ませていると、背後でソーヤ君たちが何やらヒソヒソと話をしている。

振り返ると、なぜか半笑いの3人がいた。

「どうした?」

「いえ、それをどうするんだろうなーって思いまして」

「どうしようかねぇ。サクラとオレアが欲しがったから勢いで買っちゃったけどさぁ」

「い、勢いで……。じゃあ、使い道もよく分かっていないんですか?」

「そうだな。浮かぶっポイから、エレベーターの代わりになるとは思うんだが……」

ああ、みんなの半笑いの理由が分かった。部長がお孫さんに超お高い玩具を買い与えているところを目撃した俺と、同じ顔なのだ。呆れているんだろう。

うん、3人の気持ちは分かる! だけど今の俺は部長の気持ちも分かってしまうのだ! あの時は分かってあげられなくてごめんなさい、部長!

「さ、さーて、この天望樹の種子って、どう使うんだろうな!」

買ったからには有効活用せねば。オルトに確認してみたが、株分けしたり育てたりはできないらしい。なら、説明書き通り浮遊させるのか?

「――!」

「トリー!」

サクラが店の外を指し示し、オレアが俺のローブを掴んで引っ張る。2人が使える場所まで案内してくれるってことなんだろう。というか、早く行こうと急かしている。

「ちょ、待て待て! 皆の買い物が終わってないから!」

「いや、僕らはまたくればいいんで。樹精ちゃんたちが何をしたいか興味ありますし」

「そうそう。むしろ早くいこうよ」

「そういうこったね」

3人もこっちが気になるらしい。

まあ、だったら先にこの種子の実験をしちゃいますか。

「2人とも、案内してくれ」

「――♪」

「トッリリー!」

サクラとオレアが、テンション高めに歩き出す。店を出てからもズンズンと進む2人の後について歩き出したんだが、今度は上ってきた階段を下り出した。

「おいおい、今度は下か」

「――♪」

「トリー!」

階段を二段飛ばしで、急げ急げと言わんばかりにピョンピョン下っていく2人。結局、1階まで戻ってきてしまった。まあ、エレベーターみたいに使うなら、上昇する邪魔になる物がない場所じゃないと危険だしな。

「トーリー!」

「――!」

1階の中心にある広場に向かって駆けて行ったサクラとオレアが、こっちに手を振って早くこいとアピールしている。

「ここで使うのか?」

床には、直径2メートルほどの緑色の二重円と、その中央に芽の出たどんぐりの絵が描かれている。ここが種子を使うための場所ってことかね?

「――!」

「分かった分かった」

サクラに急かされながら、天望樹の種子を取り出す。すると、目に見えて不思議な効果が発揮された。

なんと――というか説明通り、巨大な種子が少し浮いているのだ。しゃがんで下を覗き込むと、床から10センチほど浮かんでいる。

「トリ!」

「え? 乗れって?」

「トリトリ!」

「わ、分かったから押すなって! いや、フリじゃないから!」

ダチョウイズム受け継ぎやがって! 押すなっていったら、もっとグイグイ押し始めたんだけど!

「どう登ればいいんだ? うぉ!」

種子に触ってみると、体が軽くなる感覚があった。そのまま足に力を込めて床を蹴ると、体がスーッと浮き上がる。

「おわっ、と……! よいしょっ! おお、なんかフワフワしてるな」

少しワタワタしてしまったが、そのまま何とか種子に乗り込めた。内部は平らで、乗り込む部分の深さは1メートルくらいだろう。

乗船時の感覚とも違う、不思議な浮遊感があった。種子に乗った状態で揺すってみると、案外揺れない。

「えっと、どうすればいいんだ?」

「――!」

「トリ!」

「おっと! え? これ全員乗れるか?」

サクラとオレアはまだ問題ない。ファウとリックは小さいし、ペルカもなんとかなる。

でも、ドリモ大丈夫?

「モグモ」

「ちょ、おわ! 潰れ――ないな! ああ、拡張されるのか」

「モグ」

どうやらパーティメンバーの数によって、内部が拡張される仕様であるらしい。限界はあるのかもしれないが、プレイヤー6人程度までならどうにかなるんだろう。

「……モグー」

「どうしたドリモ? 別に狭くないだろ?」

「モグ」

なんか、いつもよりも明らかにテンションが低い。しきりに上を確認し、ため息を吐いているのだ。

「もしかして、浮いているのが怖いのか?」

「モグ!」

「ご、ごめんて! 怒るなよ。恐いんじゃない? ちょっと苦手なだけ?」

「モグ」

どうやら高所恐怖症の気があるのだろうか? それとも、地属性だから浮くのが嫌? ともかく、これから起こることを想像して、憂鬱になっているらしい。

「どうする? クママあたりと交代するか?」

「モグ!」

ち、力強く頷くね! だったら、クママとチェンジしよう。にしても、虫嫌いのヒムカといい、今回のドリモといい、モンスにそれぞれ個性があって面白いね。