軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

817話 ヘルグリーン

エルフの村で聞き込みをすると、エリアボスの情報はすぐに手に入った。

誰に話を聞いても、「村から先へと進んだ場所にモンスターが巣食ってしまい、通ることができなくなってしまった。エルフの町との交易が滞っている」的な情報を手に入れることができるのだ。

そのボスのいる場所にしても、即座に判明している。というか、この周辺は崖に囲まれているので、村から先にいける道なんて1つしかないのだ。

その道にしても、両サイドが崖になっており、一本道である。

エルフの村に到達するまでが他の村よりも難しい分、ボス探しは簡単になっているらしかった。

そうして村から先へ進むと、そこには谷を塞ぐように、巨大な植物が生えていた。しかも、癒されたり可愛く思ったりするようなタイプの植物じゃない。

それは、全長10メートル近いハエトリグサであった。本体と思われる巨大なハエトリグサと、その周辺から生える無数の小さいハエトリグサ。小さいと言っても、3メートルくらいはあるが。

名前は『ヘルグリーン』となっていた。トップパーティである早耳猫のハイウッドたちでさえ1度は死に戻ったという強敵だ。

特に危険な攻撃が、周囲に毒を吐き出すポイズンブレスであるらしい。付着しただけで猛毒にしてくるうえ、フィールドに滞留する性質があった。

簡単に言うと、一度使われただけで毒フィールドに変えられてしまうのだ。毒霧を完璧に回避することは難しく、回復を何度も使わないといけなかった。

これに手を取られるせいで攻撃頻度が下がり、最後はジリ貧で追いつめられたという。超強いボスと猛毒フィールドで戦わなきゃいけないとか、最悪だよね。

まあ、俺たちはもう情報を買って、対策済みなんだけど。全員で毒耐性薬を呑む。これで、毒霧は大丈夫。まあ、それで楽勝になるほど甘い敵ではないが。

「動かないですが、遠距離攻撃の手数も十分らしいです。気を抜かないで」

「あれ見て気を抜くやつなんかいないよ。きもいし……」

ソーヤ君の言葉に、マッツンさんが両腕で自分を抱きしめながら体を震わせる。どうやらヘルグリーンの姿形を受け付けないらしい。

だが、アミミンさんが頬を膨らませて言い返している。

「えー? そんなこと言ったらあの子が可哀そうだよ! 結構可愛いと思うけどなぁ」

「あんたは何にだって同じこと言うでしょうが! ゾンビにだってスライムにだって! とにかく、私はアレを許さない!」

マッツンさんが青い顔で力強く宣言した。やる気があるのはいいことかね?

「じゃあ、始めましょうか」

「おう!」

「あ、ああ」

「がんばろー!」

初手は俺たちの攻撃だ。投擲ができる者全員で爆弾を構え、一斉に投擲する。

総計で10個の爆弾が弧を描いてヘルグリーンに飛んでいき、同時に大爆発を起こした。

システムのお陰で衝撃波や爆風が弱められているはずなんだが、それでも踏ん張っていなくては転んでいただろう。

「ニュニュー!」

飛ばされそうになったメルムを慌てて掴んだよ。

「やったね!」

「こら! フラグ!」

「まあまあ、これで倒せないのは最初から分かってますから」

爆風が晴れると、ヘルグリーンの体力が2割ほど減っているのが見えた。さすがボス、体力オバケだ。

「じゃあ、ここからが本番です。ユートさん、アミミンさん、お願いします」

「おう! やってやるさ!」

「任せて!」

ここから爆弾攻撃を続ければ勝てそうな気もするが、それは難しいらしい。あの無数の小型ハエトリグサが爆弾を掴んで、投げ返してくるそうだ。

しかも、毒液や溶解液をバンバン吐き出してもくる。遠距離攻撃でのやり合いは、最終的にはプレイヤー不利になってしまうらしい。

さらに厄介なことに、ヘルグリーンは再生能力を持っていた。回復するボスって、クソボスの代名詞だよね。

ということで、ここからは接近戦だ。いや、接近するための戦いである。

「みんな、アミミンさんたちを守りながら、進むぞ!」

「フマ!」

「――!」

「ニュー!」

作戦としては、最初はうちのパーティが前に出て、盾となる。ヘルグリーンの遠距離攻撃は状態異常のオンパレードだが、威力はそうでもないので俺たちでも一撃死はしないのだ。

そして、状態異常に対しては俺もソーヤ君も、様々な対抗策を揃えている。

実際、アミミンさんとマッツンさんがほとんど戦わずとも、ジリジリと前に進むことができていた。ハイウッド的アドバイスとして、ここで焦って一気に距離を詰めようとしてはいけないらしい。慎重堅実が一番なのだ。

「ペペーン!」

「いいぞペルカ!」

「フムー!」

「ルフレ、助かった!」

時折噛みつこうとしてくる小型ハエトリグサは、ペルカのペンギンハイウェイで弾き飛ばし、ダメージはルフレが即座に癒す。それでもピンチな時にはパーティメンバーを入れ替え、俺は何とかその役目を全うした。

「どうだ! ここまでくれば十分だろ!」

「はい! あとは任せてください!」

「ははは! ようやく暴れられるね!」

「みんなー! 頑張ってくれたユート君たちのためにも、頑張るよー!」

このヘルグリーン、動かない代わりに特殊な能力を持っていた。彼我のダメージが距離で増減するのだ。離れていれば離れているほど、与えるダメージも与えられるダメージも減少する。

逆に、接近すればするほど被ダメ与ダメともに増加する。つまり、このヘルグリーンに勝利するには、接近してからの全力攻撃が正解だった。

温存していた皆の奥義が発動し、ヘルグリーンに大ダメージを与えていく。そこからはあっけない物であった。接近するまで10分もかかったのに、倒すまでは1分かからなかったんじゃなかろうか?

「勝ったー!」

「やりましたね!」

「……ああ。でも……」

大勝利したのに。マッツンさんがなぜか沈鬱な表情だ。どうしたんだ?

「はやく村に戻るよ! このまま先に進めるかい! なんで倒したのに、ネバネバが残るんだよ!」

「あー……」

ヘルグリーンの溶解液は、装備品の耐久値を減らし続ける効果がある。つまり、洗浄しない限り残り続けるのだ。マッツンさんは何故か大量に浴びせられたため、全身溶解液塗れだった。

何とも言えない表情で、震えている。

「そ、そうだね。とりあえず村に戻ろうか?」

「で、ですね。神像にもまだお参りしてませんし」

「お、おう。買い物とかもしたいしな」