軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

815話 エルフの隠れ里

ふ、船が沈む! シルバーサラマンダー号がどんどん水の中に!

慌てて岸に戻ろうとしたんだが、船が傾いたせいでバランスを崩してしまった。投げ出されないように船縁に摑まったけど、意味なかったね! だって、船が横転したせいで川に転落したから!

それでも何とか船を小型化し、インベントリに回収する。こいつを失ったら暫く泣いちゃうからな!

船を失わずに済んで安心したんだけど、試練はこれで終わらなかった。

「フムー!」

ルフレが俺を川から引き揚げようと、腕を掴んでぐいぐい引っ張る。なんでそんなに焦ってるんだ?

ただ、ルフレの見ている方へ視線を向けて、その大慌ての理由がわかった。とんでもない速度でこちらに向かってくる巨大な影があったのだ。三角形のヒレが、川面に突き出している。

さ、鮫? なんで川の中に鮫が! めっちゃこっちに向かって泳いでくるんだけどぉぉ!

やべぇぇ! もう目の前だ!

デカい歯が――。

「ペペペペーン!」

「ペ、ペルカー!」

ペルカのペンギンハイウェイが真横から鮫を吹っ飛ばしていた。小柄なペルカの攻撃で巨大な鮫が空中にかち上げられる光景は、中々衝撃的だ。

しかも、アミミンさんのモンスターたちの反応が凄まじい。鮫へと攻撃が可能と分かった瞬間、一斉に攻撃をし始めたのだ。

遠距離攻撃組の攻撃が鮫のHPを削り、その間に詰め寄った近接攻撃組の連携攻撃が鮫をポリゴンに変える。

その鮮やかな連携に、思わずポカーンとしちゃったぜ。

今日一緒に行動してて思ったんだけど、アミミンさんのモンスたち戦い慣れ過ぎじゃね? うちの子たちだって動きが悪いわけじゃないんだけど、アミミンさんのモンスは常在戦場って感じなのだ。

そりゃあ、向こうの方がレベルも高いし、種族も戦闘向きなのはあるよ?

でも、もっと根本的な、一瞬の判断や技の選択などの部分で差があるように思うのだ。

同じレベルのAIを積んでいるのは間違いないから、戦闘経験の差なんだろうか?

「フムー」

「た、助かった」

「大丈夫ですかユートさん?」

ルフレとソーヤ君が、俺を岸に引き上げてくれる。マジで死を覚悟したぜ……。かわこわい……。

それにしても、シルバーサラマンダー号が沈むとは思わんかった。もしかして、溶岩の川でしか使えないってことか?

小さくした船をインベントリから取り出す。破損したりはしていないんだが、耐久値が大きく減っていた。やはり水には適合していないってことらしい。

「まさか、溶岩専門の船だったとは……」

「残念でしたね」

「本当だよ」

溶岩の川でしか使えない船の値段だとしたら、高すぎたんじゃないか? まあ、買ってしまったもんは仕方ないけど……。

結局、俺たちは大人しく船着き場を探し、川を渡った。船着き場は5分くらいで見つかったし、船に乗ればあっという間に川向こうに辿り着く。

最初からこうしておけばよかったな。なんか疲れちゃったけど、まだ隠れ里にすら辿り着いていない。いや、自業自得なんだけどさ。

「――♪」

「トリリー♪」

「どうした2人とも?」

なんか、歩いていたらサクラとオレアが急にスキップしだした。妙にご機嫌だけど、もしかして俺のことを気遣って? ちょっとでも明るく振舞ってくれてるのか?

「――!」

「トリー!」

いや、違うな! なんか普通に走ってどこかに行ってしまった! よほどいい物を発見したのだろう。

慌てて追いかけると、その先には薄く光る木が生えていた。葉は金色で、幹は白銀。特に伐採ポイントや採取ポイントはないんだが、これで何の意味もないわけないよな?

「これ、なんだ?」

「え?」

「お?」

「あら?」

俺が首を捻っていると、俺以外の3人が驚いたように声を上げた。なにやらウィンドウが立ち上がっているな。

「どうした?」

「この木がエルフの隠れ里への目印みたいです」

「一際長い枝が、汝らの故郷への道しるべとなる、だってさ」

「こんなのあったんだね!」

やはりエルフの隠れ里なだけあって、エルフプレイヤーにはヒントが与えられるらしい。まあ、もう場所知っちゃってるから、意味ないけど。

適当に進んでたら目的地に辿り着いちゃって、あとでヒント貰えるっていうね。ゲームあるあるだよな。

エルフの隠れ里への目印を発見した30分後。俺たちは順調に探索を続け、目的地へと辿り着いていた。

そこは、深い木々に隠された小さな洞窟であった。薄暗い森の中にある、蔦に覆われた崖。その蔦を掻き分けると、隠れ里への通路が発見できるというわけだ。

他の隠れ里は条件を満たせばマップに普通に出現し、発見も難しくなかった。だが、エルフの隠れ里はこの隠し洞窟をまず見つけないといけないのだ。

難易度高すぎじゃね? まあ、だからこその目印の木なんだろうが。

短めの隠し洞窟を抜けると、周囲を崖に囲まれた森に出た。ただの森ではなく、木々の上に多くの家が立ち並ぶ、樹上村だ。

「ようこそ、エルフの隠れ里へ。通行証をお持ちのようじゃね?」

「はい! これです」

「うむうむ。ジェミナの名が記されておるな。問題ないぞ」

入り口に立っていた、お爺さんみたいな喋り方のイケメンエルフに通行証を渡す。実際、見た目が若いだけで凄い年齢なのかね? この世界でもエルフはずっと若いっていう設定らしい。プレイヤーにはあまり関係ない設定だけどな。

いや、そのうち老化系の状態異常でも出てくるかもしれんし、その時はエルフだけ無効みたいなことあるのか?

全員で手続きを済ませ、無事に隠れ里へと足を踏み入れる。入り口の梯子を上ると、太い木々の上に細い通路を張り巡らせた、これぞエルフって感じの村である。テンション上がるね!

そう思ったのは俺だけではないらしい。

「まずは神像を探しましょうよ!」

「なんか珍しい薬草とかないのか? 絶対あるよな!」

「あそこの大きい家、なにかな!」

むしろエルフ3人組のテンションは、俺よりも高かった。エルフを選ぶくらいだし、こういうのが好きなんだろうな。

「トリリ!」

「――!」

ああ、樹精コンビもか。今にも走り出しそうなくらい興奮している。

「はいはい。まずは村を歩いてみような」

ここは俺がしっかりせねば!