軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

82話 村のギルドにて

途中で他のプレイヤーやNPCとも挨拶をかわしつつ、村をだいたい回り終えた。広場に留まらずに村に散ったプレイヤーたちなので、もっとがっついた感じの怖い人たちを想像していたんだが、皆結構フレンドリーだったのでホッとした。中には俺やモンスに笑顔で手を振ってくれる人までいたしね。

村には店は5つしかなく、どこもラインナップは始まりの町とほぼ同じだった。初見のアイテムは果物屋さんの紫柿くらいかな?

最後に、冒険者ギルドに行ってみた。

「混んでるな~」

混んでると言うか、もう暴動寸前だった。

ギルドの建物がメチャクチャ小さいのだ。村にある他の民家の倍程度の大きさだろう。中に20人も入ったら満員だと思われた。

その建物の入り口の周りを、50人近いプレイヤーたちが取り囲んでいる。順番待ちをしているんだろうが列などはなく、押し合いへし合いで怒号が飛び交っている。

「あそこに加わる勇気はないな」

「ム?」

「キュ?」

「オルトたちが踏み潰される未来しか見えん」

「クマ~」

「――……」

ハラスメントブロックのおかげで本当に潰されることはないが……。あの混雑の様子を見ていると、強く押せば相手を動かしたりはできるみたいだ。ダメージはないと思うけど、やっぱり怖い。

にしても、あんなに険悪な雰囲気で、今後協力し合うとかできるのか? 依頼の数が限られてたりしたら、競争になるだろうし。絶対に足の引っ張り合いになると思うんだが。これも運営の罠なんだろうか?

別に上位とかは狙ってないけど、いがみ合ってサーバーポイントが下がっちゃうのは馬鹿らしい気がするんだけどな。

そんなことを考えていたら、オルトが人垣に近づいていってしまった。何をしているのか気になったようだ。

「あ、オルト近づきすぎると危ないぞ!」

「ム?」

慌ててオルトを引き留めたんだが、ちょっと遅かった。

「うおぉぉ?」

「ムムー!」

人垣から弾き飛ばされてきたガタイの良い男性プレイヤーにぶつかられ、オルトが吹き飛ばされたのだ。3メートルくらい転がって、目を回しているオルト。

「大丈夫か!」

「ム~ムム~?」

HPなどは減ってない。大丈夫なようだ。良かった。にしてもここは危険だな。さっさと離れよう。そう思っていたんだが――。

何やら、オルトを吹き飛ばした男が数人の女性プレイヤーに囲まれている。

「ちょっと! なにノームちゃんに酷いことしてんのよ!」

「そうよそうよ!」

「ノームちゃんが怪我したらどうすんの!」

凄い剣幕で男を責めているな。同時に何人かの女性プレイヤーが心配そうな顔で、近寄ってきた。

「あのー、ノームちゃん大丈夫ですか?」

「え? はぁ、大丈夫ですけど」

「良かった! でも、白銀さんもこのサーバーなんですね」

「やった、1週間ノームちゃんと一緒!」

どういうことか話を聞いてみたら、なんとこの人たちはオルトのファンらしい。ちょこちょこ動くオルトの可愛い姿を見て、いつもほっこりしているんだとか。

やっぱりうちのオルトの可愛さは万人に伝わるんだな。でも、ここまで人気があるとは思ってもみなかった。

そして、俺の白銀さんという呼び名が全然消えない理由もよく分かった。どうも、ノームの飼い主の白銀さんということで密かに認知されているようなのだ。

もういいんだけどね。馬鹿にしてくる人も減ったし。むしろ有名プレイヤー気分が味わえて嬉しいくらいだ。まあ、あくまでも気分を味わえるだけなのが虚しいところだが……。

「うちのオルトの心配してくれてありがとうございます。少し目を回しただけなんで、大丈夫ですよ。な、オルト?」

「ムー」

大丈夫アピールでオルトがピッと挙手すると、女性プレイヤーたちから黄色い悲鳴が上がった。まじでアイドル並の人気だ。

「あ、あのー。すいませんでした……」

そこに、オルトを吹き飛ばした男性プレイヤーがしきりにペコペコと頭を下げながらやってきた。その後ろには般若の顔をした女性プレイヤーたちが並んでいる。

男がすがるような目で俺を見ていた。

うわー、なんだかこの男性が気の毒になってきてしまったぞ。わざとやったわけでもないし、そこまで怒らんでも……。そう思ったら、自然に男性を庇う言葉が口をついて出ていた。

「あの、何か被害があったわけでもないですし、謝ってもらえばそれでいいですよ」

「そ、そうか? ありがてぇありがてぇ!」

男が本気の感謝の眼で俺たちを見ているのが分かる。目も半泣きだし。

「ムム!」

「ほら、オルトも平気だって言ってますし」

オルトが男の足をポンポンと叩き、サムズアップする。それを見た女性たちからは再びの黄色い悲鳴が、男性からは安堵の息が漏れた。

お? オルトがまた何かジェスチャーをしているな。

「ムッムッムー」

両手を体の脇に付けて、小さな前ならえ的に前に突き出す。そして、その場でピシッと背筋を伸ばした。

「?」

「??」

他のプレイヤーは、オルトの突然のジェスチャーにポカーンだ。だが、俺には何が言いたいのかわかるぞ。

「あの、やっぱりああやって押し合いになるのは色々と危なそうだし、ちゃんと並んだ方が良いんじゃないですか? オルトもそう言いたいんだと思いますよ?」

「ムー!」

やっぱり正解だったか。オルトがウンウンと頷いている。すると、女性プレイヤーたちが途端にやる気になったらしい。

皆で一致団結して、他のプレイヤーにキチンと並ぶように言い始めた。オルトを吹き飛ばした男性プレイヤーもだ。

中には余計な真似をするなと怒り出すプレイヤーもいたが、大抵のプレイヤーはその誘導に従い始める。

皆、この混雑をどうにかしたいと考えていたんだろう。それに凄い剣幕の女性陣に逆らえる男なんてそうはいないし。周囲のプレイヤーが大人しく列を作るのを見て、何となく並び始めた者もいる。日本人だねー。

うちのモンスたちも手伝っている。やっぱり可愛さは武器なのか、クママやサクラに誘導されると、大抵のプレイヤーは従ってくれる。

5分もせずに、冒険者ギルドの前には綺麗な列が出来上がっていた。

「じゃあ、俺たちは行きますね」

さすがに今から並ぶのは、時間が掛かりすぎるだろうし。空いてるときに来ることにしよう。

「またねー白銀さん!」

「オルトちゃんもばいばーい!」

「サクラたん可愛い!」

「クママちゃんちょうだーい!」

「リックちゃんモフモフ!」

何か、色々と声をかけられたぞ? もしかしてオルト以外にもファンがいるのだろうか? 嬉しいような、怖いような……。