軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

811話 魔司書

落下騒ぎの後、俺たちは橋へと上るための階段を上っていた。

いやね? どうしようか悩んでいたら、落下した男性のパーティメンバーが「悪いのはアイツだから気にしないでください」と言いにきてくれたのだ。

そのお言葉に甘えて、俺たちはそそくさとその場を後にしたのだった。ああ、一応お見舞い代わりに、マグマサーディンを1匹あげておいた。

一応レア度6だし、珍しくはあるだろう。マグマニードルフィッシュ捕獲の過程で、釣りや漁は試されているだろうから、激レアってわけじゃないだろうけどね。

で、その直後、メールが入ったのである。発信者を見ると、ソーヤ君からであった。

メールの内容は「上を見ろ」である。なんだこのホラーゲームみたいなメールは?

「上?」

疑問に思いつつ上を見る。橋の上のプレイヤーさんたちが目に入ってくるが……。

「あ!」

なんと、その中にソーヤ君が混じっているではないか。相変わらずの青髪ショタエルフが、橋の上から顔を出してこちらに向かってにこやかに手を振っている。

ホラー展開じゃなくてよかった。ただの遊び心でした。え? なんかソーヤ君に怒られるようなことしてないよな?

というわけで、俺は橋の上に戻ったのであった。野次馬たちが遠巻きにしている中で、ソーヤ君に声をかける。

「どうしたんだこんなところで」

「偶然通りかかりまして」

「へー、奇遇だな」

「本当ですよ!」

散歩している最中に人だかりを発見して、俺が何かやっていると分かって見学していたらしい。

「っていうか、ソーヤ君。それ……」

「ふふふ。気づいちゃいましたか?」

気付いちゃいますよそりゃ! 本が浮いてるんですもの! メッチャ目立っているのだ。

「魔司書のスキルなんです」

「まししょ?」

「魔の司書って意味ですね。僕が発見した新職業です」

嬉しそうに笑いながら浮かんでいる魔本をツンツンとつつくソーヤ君だったが、俺はある重大な事実に気付いてしまった。

「錬金術師やめちゃったの?」

「はい!」

いい笑顔で「はい」って……! マジで錬金術師ではなくなっていた!

蘇生薬発見者でトップランナーのソーヤ君が、錬金術師やめちゃったのって結構大問題なんじゃない?

少なくとも錬金術師業界は大騒ぎなんじゃないか? だって、この前会った時は本浮かせてなかったよね?

「今日、転職したばかりなんですよ」

「はー、なるほどー」

ソーヤ君といい、アシハナと言い、あっさりと転職したり転生したりしちゃうんだな。

町を歩きながら、ソーヤ君から話を聞く。

「錬金術師じゃなくなっちゃって、生産は?」

「まあ、生産能力は多少落ちましたね。でも、器用さも魔力もむしろ増してますから、思ってたほど酷くはないですよ?」

そうは言っても、品質が少し下がれば性能も下がるのが生産アイテムだ。今後、錬金術師としてはかなり苦労するだろう。

「大丈夫ですよ! 魔司書は魔本の扱いに特化した職業なので!」

大丈夫、なのか? え? 何が大丈夫なんだ?

でも、元々魔本が作りたくて錬金術師を選んだって言ってたくらいだし、魔本特化職業を発見したら転職しちゃうか……。

「そりゃあ、少しは悩みましたよ? アイテムの売り上げも落ちるでしょうし、攻略にも少し影響出るかもしれないですし」

「それでも転職するくらい、魔司書が強いのか?」

そう思ったけど、それも違っていた。

「まだ分からないですねぇ。戦闘もちょっとしかやってないんで。慣れるまでは結構大変かもしれないです」

「マジ?」

「マジです」

「だ、大丈夫なの?」

「はい。ある人の影響で、楽しさを一番に考えるって決めてるんで」

「へー」

まあ、楽しいのが一番だよね。俺も見習いたいもんだ。

「あはは、というわけで今日は魔司書の慣らし運転中なんです」

何故か苦笑いのソーヤ君が、ファウが乗った魔本をスイスイと動かして見せてくれる。

「ヤヤー!」

「フマー!」

「デビー!」

ファウがもっと速くというように、右手を突き上げる。それをアイネとリリスが追いかけるが、いい勝負になるくらい速く動かせるようだった。

「魔司書はああやって本を遠隔操作できるのか?」

「はい。普通に殴って攻撃もできますよ。耐久値がかなり減っちゃいますけど」

魔本の角アタック? あの速度だったら、結構痛そうじゃね? 少なくとも俺が殴るよりは威力が出そうだ。

「これからどうするんだ?」

「この周辺の探索も兼ねて、少し戦ってみようと思ってまして」

おお! つまり、魔司書の戦闘が見られるって事? 超興味あるんだけど!

「つ、付いてっちゃダメか?」

「え? むしろいいんですか? 性能検証するだけですよ?」

「それがいいんじゃないか! 勿論、手伝えることは何でもやるから!」

「僕としても護衛役がいてくれるのはありがたいんで」

守るよ! 超守る!

「みんな! ソーヤ君の邪魔をしないようにしながら、守るんだ!」

「ペペン!」

「フム!」

「ヒムー!」

まあ、この面子なら、護衛任務もなんとかなるかな? このフィールドならヒムカが超頼りになるし。