作品タイトル不明
754話 北の第12エリア
ファウの進化も気になるんだが、ここで離脱するわけにもいかない。俺はジークフリードたちとともに、周辺を探索した。
だが、雪原の周囲は高い岩山で囲まれていて、通れそうな道はない。岩山を登ろうとしたんだが、ある程度の高さから上は吹雪いていて先へは進めなかった。
どうやらシステム的に進めない仕様になっているようだ。
「一度村に戻りますか。ここを登らなきゃ先へ進めないとは思えませんし」
「ぬふふ。そうですねぇ。一部のプレイヤーは、ボスを倒せたのに進めないということが起きてしまいそうですからね」
ジークフリードとレーの言う通りだろう。あの吹雪の中を登攀でつっきらなきゃいけないってなったら、先へ進めないプレイヤーが続出しそうだもんな。
リチャードたちも頷く。
「そもそも、ワールドアナウンス流れなかったじゃん? それってまだ新エリアが開放されてないってことだろ?」
「そもそも、狩場をどうにかしてくれって話で、先へ進む通路の話じゃなかったしな」
それもそうだな。村長さんには、狩場に出現した怪物の退治を頼まれただけだった。
ということで村へ戻ったんだが、村長さんが満面の笑顔で出迎えてくれる。
「怪物の断末魔の叫びが此処まで聞こえたぞい! ありがとうのう!」
「いえ、やれることをやっただけですから」
おおー、騎士だよ! 爽やか騎士さんだよ! この手のセリフをさらっと言えて嫌みがないの、すげーな。さすがジークフリード。
「こちらはお礼ですじゃ。それと、あなた方はここからさらに先へと進むつもりですかな?」
「ええ。そのつもりなんですが……」
「それでは、難儀しておるのではないですかな? この辺は道が複雑ですからのう。北の山の抜け道を教えておきましょう」
きた! 村長の言葉の直後、俺たちのマップに新たな点が記される。
それは、この村からさらに北に行ったところにある行き止まりのハズの場所だった。高い山脈が邪魔をして北へ行けないはずなんだが、そこに何かがあるらしい。
俺たちは村長にお礼を言うと、早速その場所へと向かった。
激戦の後だというのに、誰も疲れを見せない。むしろ、全員がハイテンションで先を争っている。
大発見がもう目の前まで来てるわけだし、仕方ないけどね。
「あれ! 洞窟がある!」
最初に発見したのはジークフリードだった。直後には、俺たちにも見えてくる。今までは何もなかったはずの山肌に、大きな洞窟が姿を現していた。
フラグを立てることで、見えるようになったんだろう。
「ユート君。先頭を頼めるかい?」
「え? 俺?」
「僕ら、夜目があまり利かないし、狭い洞窟内は苦手だからね」
「ぬふふ。私は昏いところは苦にしませんが、やはり狭い場所はちょっと……」
確かに、騎乗してると洞窟は戦いづらいか。しかも、騎乗特化の騎士たちは、降りたら弱体化するし。
「じゃあ、オルト召喚!」
「ムム!」
「何が出るか分からない洞窟だ。先頭を頼む」
「ムー!」
オルトはやる気満々で、クワを振り上げた。そして、皆の先頭に立って洞窟に足を踏み入れる。
ずんずんと進むオルトと、警戒しながら歩く俺たち。
なんか、オルトに率いられている感半端ないな。オルト探検隊?
そうして進むこと10分。
「ムム!」
「どうしたオル――光だ! この先、外に繋がってるぞ!」
「ム!」
洞窟の先から光が差し込んでいた。最後まで気を抜かずに、それでいて急いで先へ進むと、外の景色が見えてくる。
結局、敵も罠も存在しなかったな。
「抜けたぁ!」
「ムムー!」
《北の山の回廊を踏破したプレイヤーが現れました》
『第12エリアに到達したプレイヤーに、突破者報酬が与えられます』
ワールドアナウンスがきた! 間違いなく、今俺たちが立っているのは第12エリアなんだろう。
最速での第12エリア到達はホランドたちなので、称号とかはなかった。ただ、突破した報酬としてボーナスポイントやお金が貰えたのだ。
それに、そんなことよりも重要なことがある。山の中腹から見下ろす先には、大きな町が見えていたのだ。
「海だ……。海だよユート君!」
「ぬふふ、荒れた北の海もよいものですねぇ」
「でっかい港町あるじゃん!」
「船もあるぞ! でっかい帆船だ!」
海はすでに見つかっているんだが、あれ程大きな港町はまだ発見されていなかった。
それに巨大帆船もだ。小さな漁船は見たことあるが、遠洋航海ができそうなサイズの船は俺も初めて見たのである。
「絶対に美味しい魚介類あるだろ」
「フムー!」
ルフレが喜びのあまりピョンピョン跳ねている。女子高生くらいに育っても、中身は相変わらずか。だが、気持ちは分かるぞ!
北の海とくれば、蟹、海老、ホタテ、ホッケ、サケ、ウニ、イカ、タコ――なんでも美味しいに決まってる!
「早く港町行こうぜ!」
「フムー!」
「ははは! そうだね!」
「ぬふふ。ハナズオウたちも狭い洞窟でフラストレーションがたまっていますからねぇ。思いきり走りたがっていますよぉ!」
どんな敵が出るかも分からない新エリアだ。本当は慎重に行動しなくちゃいけないんだろうが――。
洞窟をようやく抜けたうえ、新エリアを発見した直後だ。そのハイテンションの赴くまま、騎士たちは誰彼ともなく全力で駆け出し始めていた。
「俺が一番のりだぜぇ!」
「いや、俺だ!」
「私ですよ!」
「僕も負けないよ!」
「ちょ、早い早い! オルトたちは送還だ! また後でな! キャロ! やつらを追え!」
「ヒヒーン!」