軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

698話 樹呪術からの狙撃

俺たちがいる部屋の床に、巨大な魔法陣が出現した。

戦闘中、樹呪術が他のスキルに影響を及ぼすことは知っていたが、こんな大規模な発動ができるだなんて知らなかった!

回避しようにも、どんな攻撃がくるかわからん! というか、攻撃なのか? ああ、もう! どうすりゃいいんだ!

「キュー!」

樹霊リスの甲高い叫びと共に、地面の魔法陣が凄まじい閃光を放つ。そして、俺たちは無数の触手によって絡めとられていた。

「な、なんじゃこりゃぁぁ!」

「――!」

「ヤーヤヤー!」

「キュー?」

魔法陣から百を超える大小の触手――いや、木の根が飛び出し、俺たちに向かって襲い掛かってきたのだ。

かなり速い上に周囲全てどころか足元からも根が上ってくるため、回避する余裕など欠片もなかった。胴体や足に絡みつかれ、地上から大きく持ち上げられる。

それは小さいリックや、空を飛んでいたファウも同様だ。荒れ狂う根に絡みつかれ、動きを封じられてしまっている。

天井がない場所ならファウは逃げられたのかもしれないが、狭い部屋ではどうやっても回避しきれなかったらしい。

「キューッキュッキュッキュ!」

「なんかめっちゃ悪い笑い方してる!」

唯一、敵のリスの周辺だけは根が出現しておらず、安全地帯となっていた。そこからこちらを見上げる樹霊リスは、腕を組んで不敵に笑っていた。可愛い。いや違う。不穏だ。

「キキュー!」

リックがじたばたと暴れながら、何かを樹霊リスに訴えかける。

「キュキュ」

「キーキュー!」

「キューキュ」

だが、敵リスは肩をすくめて、ヤレヤレという仕草をするだけだった。

何を言ってるか分からんが、「はなせー!」「はなすわけなかろう」的な会話がなされているのだろうか?

「キキュ!」

敵リスが指をパチンと鳴らした。この仕草にセリフをあてるなら「やれ!」だろうか?

不敵な表情といい、完全な悪役ムーブだ。しかし、指パッチンは音が上手く鳴らず、ペチンという小さな音がしただけだった。やはり可愛い。

「く、やばい! HPがっ!」

「――!」

「ヤー!」

だが、そのペチンが及ぼす影響は、小さくも可愛くもなかった。

巻き付く木の根が俺たちをギュギュウと締め上げ、ダメージが入り始めたのだ。しかも、それだけではない。

「なんか、吸収されてますよ!」

「MPが!」

凄まじい速度で、MPが下がっていく。カルロが言う通り、MPドレインの効果があるんだろう。

HPとMPが凄まじい勢いで削られていく。あっという間に半減してしまった。

このままじゃ、死んでしまう! 何とか脱出しないと!

だが、腕力ではどうしようもできそうにないし、そもそも腕や足が拘束されていて身動きも取れない。

ならば、魔術だ!

対象を斬り払うことができる、アクア・スラッシュを詠唱する。これで根をぶった切って、脱出してやる!

だが、その直後――。

ドガン!

「え?」

凄まじい衝撃と共に、体が大きく揺れた。同時に、視界がブラックアウトする。

一瞬の浮遊感と共に、視界に映る景色が見覚えのあるものへと切り替わっていた。

「ムムー?」

「ヒヒン?」

庭で追いかけっこをしていたオルトとキャロが近寄ってくる。そう、ここは俺のホームであった。

つまり、死に戻ったのだ。最後、何か攻撃を受けたか? モンスたちも、次々と死に戻ってくる。

「というか、カルロ!」

慌ててウィンドウを確認すると、カルロも戦闘中ではなくなっていた。向こうも死に戻ったのだろう。

フレンドコールをかけると、すぐに繋がる。

『もしもし、白銀さんですか?』

「いやー、死んだなぁ。俺って、最後どうなったか分かる?」

衝撃を受けたことは解るんだが、それが何によるものか分からなかったのだ。

『木実弾ですね。目の前で吹き飛んで、驚きましたよ』

カルロも同様の死に方をしたらしい。大規模な樹呪術でこちらを拘束し、テイマーを優先して狙撃。殺意が高すぎるな。

というか、AIが頭良過ぎない? まあ、最も効率のいい勝ち方を計算してるんだろうが……。

『白銀さん、すみません』

「どうしたんだ?」

『僕が樹霊リスをテイムしたいだなんて言わなければ、勝ててたかもしれません』

カルロはしょんぼりとした声で謝ってくるが、あの感じだと追いつめられたら樹呪術を使ってきたんじゃなかろうか?

「最初から警戒して、速攻で倒さない限り食らってたと思うぞ? あまり気にするな」

『でも……』

「それよりも、次のことだ。このまま負けたままで終わらせていいのか?」

『え? それって、次のチャンスも貰えるってことですか?』

「カルロがいいなら」

まだ1部屋目だったんだぞ? ここで終われるか? それに、あの樹霊リス! あの悪い笑い方のリスにやられたままでいられるか!

『やります!』

「よし! 次こそは、絶対にテイムしてやろうぜ!」