作品タイトル不明
677話 毒キノコ料理
俺が配ったのは、通常の赤テング茸と白変種を使った、紅白のキノコソテーとスープである。
実物のキノコも、籠に載せて皆に回す。こうやってディスプレイすると、妙に高級感が出るから不思議だ。マツタケっぽい感じに見えるからかね?
「これは、白い茸?」
「いや! 鑑定してみろよ! 白変種ってなってるぞ!」
「それがこの量って……」
「ユート! もしかして、量産に成功したのか?」
第二陣のファーマーさんたちだけではなく、メイプルとタゴサックもメチャクチャ驚いてくれている。驚愕の表情っていうのは、まさにこの顔のことだろう。
やはり白変種の量産は、まだ誰も成功していなかったか。トップファーマーたちにここまでリアクションしてもらえるんなら、ここで提供した甲斐があるというものだ。
ただ、戸惑っている人もいるな。
毒抜きのことを知らないファーマーさんたちだろう。分かっていなければ、俺がとち狂って毒料理を提供したように見えるし。
初対面で毒キノコのスープって、姑の嫁いびりが可愛く思える所業だ。場合によっては、プレイヤー間トラブルに発展するだろう。
うん、俺が迂闊だった。前置きなしで毒素材は駄目でした。
「えーっと、これは赤テング茸と、その白変種を使った料理だ。毒はちゃんと抜いてあるから、安心してほしい」
「ど、毒入り食べさせられるかと思った」
「毒入りがうめーんだよ的なこと言い出しそうだもんな」
「白銀さんなら全員に解毒薬配れるし」
俺が毒抜きしてあると説明すると、明らかにホッとしてるね。
「因みに、白変種は量産に成功した。まあ、オルトが頑張ってくれたおかげだけどな!」
「ムム!」
俺はタゴサックたちに白変種の量産の仕方を語る。確実ではないけど、幾つかの条件は間違っていないと思う。
それに、最悪俺と同じ条件を揃えるのは、そこまで難しくはないだろう。水臨樹の水なら、融通してもいいし。
驚くタゴサックたちだったが、水臨樹の水を販売しても大丈夫なのかと心配気だ。
言われてみると、あの水って限界はあるんだろうか? うちの畑や生産で使う分さえ確保できていれば、売ったって構わないが……。
まあ、見た感じ大量だし、ファーマー仲間に少し渡すくらいなら問題ないだろう。
「まあまあ、とりあえず食べてみてくれよ。メッチャ美味いから!」
「はぁぁ。そうだな。ユートだもんな」
「これがサスシロ」
「やべー、爆弾投下の瞬間見ちゃった」
何故か皆がため息をついて、もそもそとソテーを食べ始めた。なんか期待してた反応と違うな?
ただ、すぐにその顔に驚きの表情が浮かぶ。よしよし、この顔が見たかったんだ。
「どうだ?」
「白変種ってだけで、これほど食感が変わるとは思わなかった」
「美味いっす!」
「スープもうまー!」
よし、毒キノコの提供で盛り下がりかけた空気が、元に戻ったぞ!
しばらく、ハチミツ料理とキノコ料理を食しながら、色々な質問に答える。よし、このまま次の出し物にいくか。
「じゃあ、次は――」
「――!」
いい雰囲気のまま流しそうめんで畳みかけようかと思ったら、サクラが戻ってきた。
「それ、なんだ? 木の像?」
「――!」
サクラが抱えているのは、高さ50センチくらいはありそうな木製の像である。サクラが高々と掲げる像をよく見ると、どうやら水臨大樹の精霊様を象った物であるようだ。
台座もかなり凝っていて、細かい蔦のような模様が彫り込まれている。短時間で作ったとは思えないほど、よくできた木像だった。
「水臨樹の素材で作った、精霊様の木像か」
畑に生えている樹木からは、枝や葉、木材が手に入ることがある。それは水臨樹も例外ではなく、毎日ランダムでアイテムが入手できるようだった。
まだ実は生っていないが、葉や枝も色々と利用できそうなので楽しみにしているのだ。サクラが使用したのは、水臨樹の木材だろう。
像を鑑定すると『水臨大樹の精霊の木像』となっている。
「えーっと、インテリアじゃなくて、設置オブジェクト?」
「――♪」
「設置って、どこに設置できるんだ?」
俺が尋ねると、サクラが水臨樹の方へと走って行ってしまった。木像を頭上に掲げたままタタタと走るサクラにファーマーさんたちの目も釘付けだ。
「ユート、あれは?」
「えーっと、サクラが水臨樹の木材で、何か作ったらしい。俺もちょっと詳しいことは分からないんだが、どこかに設置して使うと効果が発揮されるみたいだ」
「なるほどね。まあ、木材から作った加工品だって、品評会の出品物には相応しいしな。いいんじゃないか?」
「走る樹精ちゃんかわいい」
「白銀さんに褒められて笑顔になる樹精ちゃん尊い」
「俺も樹精ちゃん欲しい」
「あー、ぴょんぴょんするんじゃー」
見守る俺たちの前で、サクラが精霊様の木像を水臨樹の根元に設置した。すると、像が緑色に輝き出し、その光は水臨樹全体へと広がっていく。
「おー、綺麗だな」
「ああ、スッゲー光景だ」
美しくも幻想的な光景に、全員で魅入る。ただ、すぐにこんなことしている場合じゃないと思い出した。まだどんな効果があるかも分かっていないのだ。
俺は水臨樹の根元へ走ると、木像を再度鑑定した。すると、効果に新しい表記が追加されているではないか。
「なになに? 水臨樹に捧げられた信仰の力を、神精へと捧げることができる?」
どういうこっちゃ?