軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

676話 属性ハチミツ

「……!」

「さてもう少しで俺の番だな」

「……!」

「うん?」

品評会に出すアイテムを準備しようとしていると、何か遠くから声が聞こえた気がした。なんだ?

「どうしましたユートさん?」

「いや、誰かに呼ばれたような気がしたんだが……」

「え?」

俺がキョロキョロしていることに気付いたのか、ヒジカタ君が声をかけてきた。そして、俺と同じように周囲を見るが、やはり何も聞こえないらしい。

俺ももう聞こえないからなぁ。

「声にならない声みたいなのが聞こえた気がしたんだけどな」

「え~? オカルト的な話ですか? やめてくださいよ!」

「いや、そういうつもりじゃなかったんだけど……」

ビデオテープに取り付く怨霊とかいるくらいだし、ゲームの中に出没する幽霊くらいいてもおかしくないのか?

え? そんなわけないよね?

「閑静モードにしたせいじゃないですか?」

「あー、なるほどー」

イカルの言葉で、完全に思い出しました。

品評会の邪魔にならないように、外部からの音を遮断していたのだ。

ただ、完全遮断ではなく、少しだけ音が入る閑静モードってやつを選んでいる。別に完全遮断でもよかったんだけど、なんとなく無音って苦手なんだよね。

多分、畑の外で誰かが騒いでいて、その声が本当に微かに聞こえたんだろう。いやー、失敗失敗。うっかりしてたぜ。

「あ、あはは」

「い、いいテヘペロだと思いますよ?」

慰めないで! 笑って! ヒジカタ君とイカルの優しさがつらい!

この寒い空気をどうすればいいのか分からずテヘペロ状態のまま固まっていると、救いの声が聞こえてきた。

「次、ユートの番だぞ」

「お、俺の番だっ! いかないと!」

タゴサックありがとう!

「が、頑張ってください」

「フ、ファイトです!」

2人に見送られて、みんなの前に出る。なんか、すっごい見られてる? もしかして、今のテヘペロ事件を目撃されてた? あかん、俺の第一陣プレイヤーとしての威厳が!

ここは、プレゼンで取り戻さなくてはっ! ハチミツ、白変種、水臨樹の水。パンチが弱くはないか? 珍しい物ばかりだけど、用意したのはハチミツの加工品、キノコ料理、そうめん。なんかあっさりしたものばかりな気がする。

ここはもっとドーンとしていてバーンといく、パンチ力の強い品物がなきゃダメなんじゃないか? い、今すぐ用意できて、パンチ力のあるもの……。

「サ、サクラ、何かないか? みんなが驚くようなもの!」

「――?」

「うちの畑で採取できたもので、一番珍しいのってなんだっけ? それで、すぐ用意できる加工品ないか?」

無茶振りなのは分かっている。正直、期待はしていなかったんだが……。

「――!」

「え? なんかあるの?」

「――♪」

サクラは頷くと、どこかへと去って行ってしまった。何かを準備しにいったのか? まあ、サクラを信じて待つしかないか。

戻ってくるまで、俺が場を繋がなくては。

「じゃあ、最初はこれ! クママが最近になって作れるようになった、新しいハチミツだ!」

「クマー!」

「「「おおー」」」

驚いてはいてくれるけど、驚愕って程でもない。養蜂自体がまだあまりメジャーじゃないから、仕方ないけど。

「4種類あるので、順番に回していってくれ」

「え? 4種?」

タゴサックが疑問の声を上げてくれたので、説明もスムーズに進む。まあ、赤青緑黄の4属性があるってだけだが。

「多分、普通の養蜂だと作れないと思うんだ」

「ほう? 何か特殊な方法で作ったと?」

「ああ。養蜂箱の周囲の植物を属性で固める必要がある。あと、クママが手に入れた蜂の王っていうスキルの影響もあると思う」

「ち、ちょっと待ったぁ! そんな重要な情報、教えちまっていいのか?」

「まあ、養蜂スキルってあまり広まってないし、みんなにも興味を持ってもらえたら嬉しいからな」

嘘です。いや、養蜂スキルを持ってる人が増えてくれたら嬉しいっていうのは、本当だ。でも、第二陣のファーマーさんに「凄い」って思ってもらいたい気持ちもあるんです!

それに、属性ハチミツの検証とか、俺だけじゃ全然手が足らないし。養蜂持ちが増えて、研究してくれたら有難いのだ。

「別に俺が損する話じゃないし」

「いやいや! だからって――すまん。ちょいと取り乱したな。ユートだもんな」

「? まあ、落ち着いたならいいよ」

タゴサックが大きく息を吐いて、イスに深く座り直す。まあ、ここまで驚いてくれたんなら、情報を公開した甲斐があるってもんだ。

ハチミツで作った加工品も、皆に提供していく。

ただ、第二陣のファーマーさんたちの反応が鈍い気がする。もしかして、新しいハチミツって俺の想定以上に地味だった? 料理しない人からすれば、ちょっと色が付いてるだけのハチミツだし。

あっちに座ってる子は黙ってハチミツを見つめてるし、あっちの子なんか目のハイライトが消えている。よほどつまらないんだろう。

それに、使用した料理はおいしいけど、普通のハチミツ料理に比べて何が違うって言われたら、ちょっとの差でしかないもんな。

よし、ここは畳みかけよう!

「次は、この茸だ」

赤テング茸・白変種カモーン!