軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

68話 サクラの木工

「ムッムー!」

「クマー!」

「キュー!」

「――!」

逃げていくクレーマーたちの背に向かって、オルトたちが一斉にあっかんべーをしていた。少年の姿をしたオルトがやっていると、凄まじくハマっているな。他のみんなも可愛いぞ。サクラは一応女の子型なんだから、あまりはしたない真似は止めときなさい。

周囲にいたプレイヤーたちも歓声を上げている。いやー、助かったな。

「あの、ありがとうございました」

「ああいう奴らもいるけど、俺たちは応援してるからな!」

「頑張って!」

俺が頭を下げると、皆が励ましの言葉をかけてくれた。何人かはハーブティーの茶葉を買えなかったようだが、文句も言わずに声をかけてくれる。良い人たちだ。

「また、明日もハーブティーの茶葉を販売してくれるんですか?」

「え? まあ一応そのつもりです」

「それまでに何か販売する予定とかあるんですか?」

質問の意味が分からず、俺は聞き返した。

「えーっと、それまでって、どういうことです?」

「いや、ハーブティーはもう売り切れちゃったじゃないですか? で、今は無人販売所で何も販売してないでしょう? 明日、ハーブティーを補充するまでの間、何か違う物を販売したりしないのかと思ったんで」

目から鱗だ。言われてみたら、そうだよな。売り切れのまま長時間遊ばせておくのは勿体ない。

とは言え売れる物なんかあるか? 数がある程度ないといけないよな。ポーションなんかは、ここで売る程の量はない。

あと畑に関係している物といったら……。無人販売所の設定画面を確認しながら、販売可能なアイテムをインベントリの中から探す。

その中で目についたのが、いつの間にか大量に存在していた木工製品であった。食器類が数種類ある。サクラ、いつの間にこんなに作ったんだ。全部合わせたら50個以上あるぞ。

「皿にコップ、コーヒーカップ」

あとはスプーンとフォークに箸もある。練習用だから品質もレア度も低いが、数だけはある。

というか、なんで無人販売所で売ることが出来るんだ? 畑で収穫できたものや、その加工品しか売れないはずじゃなかったのか?

素材の一部が畑で採れたものなら良いはずだが、食器なんて木材を削るだけだろ? どういうことだろう。

「まあ、売れるなら売っちゃうか」

「何か補充するのか?」

「ああ、タゴサックか。木工の練習用に作った食器があるからさ、これとかどうかと思って」

「食器か……。どんな感じなんだ?」

「これとか、これだな」

「ほう」

俺はコーヒーカップとスプーンをタゴサックに渡してみた。それを色々な角度から観察したり、コンコン叩いたり、匂いを嗅いでみたりしている。

「どう思う?」

「悪くないんじゃないか? 色合いもシックで男でも女でも使えそうだ」

タゴサックのお墨付きもらいました! よし、これを無人販売所に並べよう。

帰るタゴサックを見送った俺は、無人販売所に食器を登録するために設定画面をいじっていた。値段は安い。1つ200~300程度だ。でも仕方ないか。材料は雑木の木材だけだしな。複数の茶葉をブレンドしできたハーブティーと違って、食器ではどうすることもできない。

これも一応購入制限を3個までに設定しておくか。値段は最大にしておこう。

すると、いつの間にか無人販売所の周りに人が集まってきている。

え? なんだこれ?

「あのー、ハーブティーの補充じゃないですよ?」

「良いんです良いんです。分かってますから」

「お気になさらず」

「ささ、補充をどうぞ」

皆がどーぞどーぞと身振りで俺に補充を促す。どこぞのベテラントリオ芸人みたいな動きだな。どうやら俺が無人販売所に何か補充するかもしれないと考え、帰らずに周辺で様子をうかがっていたらしい。暇と言えばいいのか、そこまで興味を持ってくれて嬉しいと言えばいいのか。

補充を終えた俺が販売所から離れると、早速購入画面を開いている。

「おい、何が売ってるんだ?」

「木工製品だな。食器とか」

「俺、ハーブティーを飲むためのカップが欲しいんだけど」

「カップもないのになんで買ったんだよ!」

「ノリと勢い?」

「第2エリアでコップ落とす奴いなかったっけ?」

「ザコゴブリンが割れたコップ落とすな」

「あれってメッチャ汚いじゃないか?」

「NPCショップでティーカップ売ってる店あるぞ」

「まじ? おれ割れたコップ使ってた」

一応は喜んでもらえてるかな? だったら良かった。

「さて、あとは気になることを調べておくか。サクラ、ちょっといいか?」

「――?」

俺はサクラに木工の過程を見せてもらう事にした。なぜ無人販売所で売れるのか、分かるかもしれないと思ったのだ。サクラが納屋に備え付けてあった道具箱から木材と、簡易木工セットを取り出してくる。それは分かるが、あの小さいバケツみたいなものは何だ?

鑑定してみたら、なんと雑草水だった。雑草水で満たされた木桶だ。これを木工に使うのか?

サクラがガタガタと椅子を引っ張ってきてくれた。ポンポンと椅子を叩いて、俺を見上げてくる。座れと言ってくれているらしい。

「ありがとな」

「――♪」

俺が椅子に座るとサクラは、今度は俺の隣に椅子を運んできてそこにチョコンと腰かける。そのまま俺の隣で並んで作業を始めた。

サクラは鼻歌交じりで木材を削り始める。凄い早さで木材が形を変えていくな。形からして、ティーカップを作っているようだ。途中で樹魔術を使ったりもしている。どうやら木材を強化する術みたいだ。細い取っ手の部分が折れたりしないようにしてるんだろう。

10分もすると、サクラの手の中にはティーカップが出来上がっていた。木目調の地味な白木のティーカップだ。

「これで完成か?」

「――♪」

どうやらまだ作業が残っているらしい。サクラはフルフルと首を横に振っている。これ以上何をするんだ? そう思いながらカップをサクラに返すと、なんとティーカップを雑草水の桶にドボンと浸けたではないか。しかもそのまま放置である。

「え? ちょ、サクラ? これ平気なのか?」

「――?」

「そんなガッツリ雑草水に浸けちゃって、飲むときに苦みが出たりしない?」

「――――♪」

あの激苦雑草水だぞ? だが、俺の心配をよそにサクラが大丈夫と言う風に頷く。でも、なんでこんなことしてるんだ?

10分後。サクラが雑草水に浸けていた食器を取り出した。そして、今度は汲み上げてきた井戸水でジャブジャブと洗い出す。だが、食器は雑草水の茶色が付いたままだった。これでお茶を飲んだら雑草エキスみたいなものが染み出してきそうなんだが。

サクラが再び樹魔術を使った。乾燥させているみたいだ。樹魔術はそんなことも出来るんだな。

「――♪」

どうやらこれで完成らしい。出来上がったティーカップを頭の上に掲げて、笑顔で俺を見つめている。何かを催促するような目だな。大丈夫だ、分かってるぞ。

「よく頑張ったな」

ヨシヨシと頭を撫でてやると、サクラはほっぺをピンクに染めてはにかんだ。うーん、可愛い過ぎる! ロリコンプレイヤーに気を付けなくては!

俺はサクラが渡してくれたティーカップを色々な角度から観察してみる。乾燥させたからなのか、色合いがさっきよりも落ち着いたかな? そうか、雑草水に浸けて色を付けたのか。茶色に染まったティーカップは、白木の物よりもシックで高級そうに見える。

「ちょっと試してみるかね」

俺は完成したばかりのティーカップに水を注いで飲んでみた。

「ズズズ……。ふむ、特に臭いも味もしないな」

どうやら雑草水を染料に使っても大丈夫なようだな。良かった。これなら売った食器にクレームが来ることもないだろう。安心した。

それに、上手くやったら絵とか模様も書けたりして? サクラにそう聞いてみたら、パチパチと手を叩いてコクコクと頷いてくれた。どうやら賛成してくれたらしい。どんな模様の食器が出来上がるか、楽しみだな。

そして分かった。どうやら畑の除草作業で抜いた雑草を使って作った雑草水を使っているので、一部材料が畑で収穫した物という扱いになっているらしい。そのおかげで無人販売所で販売可能なんだろう。

「さてと、やることやったし、獣魔ギルドでクエスト探してくるか」