軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

667話 四鬼

「狂化です! 白銀さん! 気を付けてください!」

「おう!」

隠形鬼に敗北した翌日。

ログインした俺は日課を済ませ、浜風たちとともに再びクエストに挑戦していた。

前日と同じように謎の影を発見し、戦闘に突入する。既に1度戦ったこともあり、死に戻りもなく順調に戦えていた。

だが、奴のHPが残り1割になった頃、その姿が未見のものへと変貌を遂げる。赤いオーラを纏った、狂化状態だ。

「ウオオォォォォォ!」

「怖っ!」

般若のような顔で咆哮する隠形鬼は、凄まじい迫力があった。しかも、その動きは格段に速くなっている。これはマズい。

そう思ったら、浜風たちの連携の方が上手であった。

「召喚、ノンビリモノ!」

「のん」

浜風が、ノンビリモノを呼び出す。当然と言うかなんというか、彼女たちはすでにノンビリモノ、ワンパクモノと友誼を結んでいた。

早耳猫に、妖怪に連なる情報は最速で売ってくれるよう、頼んであるらしい。

「のーん」

浜風の召喚したノンビリモノが、戦場に似つかわしくないのんびりした声で鈍重陣を発動する。敵味方全てに、素早さ低下のデバフを与える能力だ。

隠形鬼の動きが、目に見えて遅くなる。

そして、そこにこちらの遠距離攻撃が集中した。なるほどね。

敵を遅くして、こちらはあまり速度が関係ない魔術で攻撃か。これなら、鈍重陣のデメリットを最小限で済ませられる。上手い使い方だった。

最後は、浜風の狐さんが狐火を叩きつけ、隠形鬼は悲鳴を上げながら消え去るのであった。

「ふぅぅぅ。勝ったな!」

「いえーい! やりましたー!」

「よ、良かったですー」

今回はちゃんと戦場も選んだし、なんとか勝てたな。

ただ、俺たちは喜び合うのもそこそこに、すぐに身構えた。

隠形鬼が消滅した場所に、再び何かが出現したのだ。だが、隠形鬼が復活したわけではない。

そこに出現したのは、一人の男性だった。

なんか、西洋ファンタジー作品には場違いな、和風な出で立ちである。鎌倉武士とかそんな感じ? ただ、頭には兜ではなく、貴族とかが被っているような長い帽子を被っているのだ。烏帽子ってやつ? そのせいで、貴族っぽさの方が強いかな?

「汝らの力は示された。オンギョウキを従えるに足る」

『オンギョウキと友誼が結ばれました』

なんか、今までの妖怪関係のイベントとは、違う雰囲気のイベントだぞ!

お貴族さんがふっと笑うと、その隣に隠形鬼が出現した。先ほどまでの荒ぶる姿が嘘のように、静かに佇んでいる。顔も体つきもちょっとシュッとしてない? イケメン鬼だ。

「我が配下の四鬼を探せ。全ての鬼を従えた時、汝らには新たな力が示されるだろう」

お貴族さんは、それだけ言うと姿を消してしまう。なんか、オンギョウキ以外にも鬼がいるっぽい感じだったな。

だが、すぐに俺は違うことに気を取られてしまう。

『おめでとうございます。全プレイヤー中、最速で友誼を結んだ妖怪の数10種を達成しました。『最速の妖怪探索者』の称号が授与されます』

なんと、称号を得てしまったのだ。浜風たちも同時に喚声を上げているところを見るに、同じ称号を得たのかな?

「最速の妖怪探索者ですよ! やった!」

「し、称号! 久しぶりですぅ!」

陰陽師でもない俺だけが最速にならないでよかった。俺だけゲットしてたら、絶対にこの後気まずかったもんな。

称号:最速の妖怪探索者

効果:賞金50万G獲得。ボーナスポイント4点獲得。妖怪からの好感度が上昇。

称号ゲット時に貰える賞金が結構多い。多分、全体の進み方で、貰える金額が増えるんだろうな。以前は1万以下とかだったし。

できればボーナスポイントも増えてくれればいいのに、こちらは変わらないらしい。

「白銀さん! ありがとうございました! お陰で称号ゲットできました!」

「いやいや、こちらこそだ。浜風たちに誘ってもらわなかったら、絶対に隠形鬼はゲットできてなかっただろうし」

「そ、そんなことないですよ! ノンビリモノちゃんとワンパクモノちゃんを見つけてくれましたし! そ、それに、白銀さんならきっとこのイベントもなんやかんやで見つけてたはずですよ! 絶対!」

「ははは、陰陽師専用イベは俺じゃ見つけらんないって」

ロクロネック、すんごい俺を持ち上げてくれるんだよな。俺が彼女たちを手伝っている形だし、接待的な感覚なんだろうが……。

ここまでヨイショされると、どう返していいか分かんないよね。嫌な気はしないけどさ。俺も、今後は接待ゴルフとかの時に気を付けよう。過剰接待される側の気持ちが、初めて分かったのだ。

話を変えるため、俺は疑問だったことを浜風たちに尋ねてみた。

「あと3体、鬼が居るっぽいよな?」

「そうでした! 四鬼ですって! しかも、1体が隠形鬼ってことは……」

「い、今の人、藤原千方ってことですか?」

「絶対そうじゃない?」

「ですよね! うわー、凄いです!」

浜風とロクロネックには、お貴族さんの正体も想像がついているらしい。

「ふじわらのちかた? 誰?」

えーっと、俺にも説明してくれんか?

興奮した浜風たちが交互に語ってくれた話をまとめると、藤原千方という有名な実在の人物らしい。俺は知らないけど、歴史で習ったっけ? 浜風とロクロネックは知っていて当然って感じなんだよな。

ともかく、千方さんは四体の鬼を駆使して、朝廷の軍と戦ったそうな。その時の配下に、隠形鬼、金鬼、水鬼、風鬼という四体の鬼がいたという。

なるほどね。オンギョウキ、四鬼、貴族風の人物。言われてみると、色々と当てはまる。今回のお貴族さんがその藤原千方さんである可能性は高いだろう。

「じゃあ、残りの3エリアに、その鬼たちがいるってことか?」

「多分そうですよ! ああ、探しに行かないと!」

「白銀さん! いきましょう!」

「えーっと、俺も一緒でいいの?」

「もちろんです!」

「し、白銀さんが一緒なら、きっと探し出せますよ!」

むしろ俺の方がお願いしたい。なんせ、陰陽師じゃないとクエスト受けられんし。でも、人見知りのロクロネック、この後もずっと俺の接待し続けて、精神的にもつの?