軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外 another ending 1

「ごめんな!」

「えっ?」

突き飛ばすことになる子供に謝りつつ、オープンカーの方を見る。運転席の男は相変わらず馬鹿笑いを上げながら、こちらを見てはいなかった。

ダメだ。どうやっても車は回避できん!

あー、これは死ぬな……。

そう覚悟を決めた俺に向かって、赤い車体が突っ込んで――。

「うん?」

あれ? 痛くない? というか、ここどこだ? 周囲が全部真っ白で、まるで天国みたいな……? 自分が立っているのか、座っているのか、浮いているのかさえ分からない。

痛みを感じるまでもなく、即死したってことなんだろうか?

「少し落ち着くがよい」

「うぇ!?」

いきなり女の人の声が聞こえたので、思わず振り返る。するとそこには、人とは思えないほどに美しい、不思議な格好をした女性がいた。

和服と言えば、和服なのだろう。ただ、古風な感じではなく、安っぽいコスプレ感のあるクノイチ風ミニスカ和服って感じだ。漆黒の生地に、裾や衿、帯が朱色なのもゲームやアニメのキャラっぽい。

着る人間を選ぶ衣装だが、この女性には驚くほど似合っていた。

「えーっと、どちら様でしょうか?」

明らかに尋常な存在ではない。鈍感さには定評のある俺にだって、それはよく分かる。

「名乗る前に一つ言わせてもらうが、この姿は儂本来のものではないぞ? 安っぽいコスプレ感があるのは、お主のイメージが混ざったせいじゃ」

「……もしかして、心が読めてる的な?」

「うむ」

「すんませんしたー!」

もう決定! 確実に人じゃない! あれだ、神とか天使とか悪魔とか、とにかく死後に現れる敵に回しちゃいけないやつだ! ああ! 心読まれてるんだっけ! すいません! 混乱してるだけなんです! 決して逆らおうとか貶そうとか思ってないんで! マジで!

「……お主、忙しいのう。まあ、よい。我はこことは異なる世界を治めし神の一柱。これは、お主と話をするための仮初の姿じゃ」

「え? 神、様……?」

「うむ。お主に分かりやすく言えば、冥府を司る神じゃな」

「め、冥府の神様……。じゃあ、やっぱり俺は死んだんですか?」

「うむ」

俺みたいな一般人のところに何で神様が? いや、俺たちが知らないだけで、死んだ人間のところには必ず神様がやってきて、ケアしてくれるってことなのだろうか?

「そんなわけあるまい。今回は特別じゃ」

「え? いやいや、だって俺なんか普通の人間ですよ? 一般人の中の一般人というか……」

「まあ、そうじゃのう。それは正しい認識じゃ。だが、間違ってもおる」

「はぁ」

「我がやってきた理由は、お主にある権利の行使を提案するためじゃ。断ってくれてもよいがの」

どういうことだ? ともかく、女神様がやってくることは特別なことで、何かが起きようとしているというのは分かった。

「平行世界という概念は知っておるな?」

「似たような世界がいっぱいある的なやつですよね?」

「ざっくりとしとるのう。まあ、今はその認識でよい。それでじゃな――」

女神様が語った話は、俄かには信じられないものだった。何と、平行世界の俺の中に、異世界に転生した俺がいるというのだ。

ただ、勇者や救世主的な、チート転生ではないっぽかった。もう少し過酷めの転生だったそうだ。それでも、その平行世界の俺は神様に頼まれていた仕事を見事に達成し、報酬を与えられることになった。

来世がちょっと幸せになるという、メッチャアバウトな感じの報酬だ。

だが、そこで問題が起きる。平行世界の俺は異世界に定住することを望み、その報酬を辞退してしまったのだ。しかし、報酬はすでに準備されてしまっており、消去するのは勿体ない。

「という訳で、我がお主の下へとやってきたというわけじゃ」

平行世界の同一人物であれば、宙に浮いたその報酬を使うことが可能であるそうだ。

でも、いいのかな? たとえば、平行世界の俺の家族が死んだときに使うとか、そういうんじゃダメなの?

「それは無理じゃ。この報酬は、お主が世界を渡る権利なのじゃ。他の誰にも使えん。しかし、1人分の権利はすでに発生しておる。破棄してしまってもいいのじゃが、それはそれで面倒なことがあってのう。我らとしては、この力を誰かに使ってほしいんじゃ」

「それで、俺のところにきたってことですか? つまり、異世界に転生する権利をくれる……?」

「そう思ってもらって構わん」

ま、マジかよ! 急な転生展開! 平行世界の俺! ありがとう!

ただ、素直に喜んでいいのか? だって、異世界だよ? 「チーレム展開カモーン!」とは言わんが、このまま転生したってすぐ死んじゃうぞ?

「……転生する先って、どんな感じでしょう?」

「我らが管理する世界。まあ、平行世界のお主が転生したものと同じ世界じゃな。ただし、時代は大きくズレておるので、自分と出会うことはないじゃろう。お主の認識でいう、剣と魔法の世界で間違いはない」

「な、なるほど……。魔獣がいて、盗賊がいて、命が安い世界ってことで、間違いないです?」

「うむ。概ね正しい認識じゃ」

「言葉とかは?」

「その辺はサービスで喋れるようにしてやるのじゃ。それに、ファンタジーの世界と言っても、地球を参考に作り上げておる。動植物の中にはお主が見知ったものも多いはずじゃ。まあ、普通に魔獣が闊歩しておるし、命が軽いと言われればそうじゃがな」

うわー、平行世界の俺、よくそんな世界で生き延びて、使命を達成したなぁ。自分のことながら、尊敬してしまうぜ。

「お主の場合、魂の力が増した状態で送られるからのう。チートとは言わんが、それなりに強い状態にはなるのう」

「え? マジっすか?」

「うむ。与えられる力は、お主の願望と魂に沿ったものとなるが――」

「いてて……」

転移って、もっとワープ的なもんじゃないのか? いきなり穴に放り込まれた時には、死ぬかと思ったぞ?

「……ここが、異世界?」

一見すると、何の変哲もない森に思える。本当にここが異世界なのか? 植物とかも普通に思えるけど……。

「ム」

「え?」

「ムムー!」

「おわ! ちょ、オルト、いきなり抱き着くなって。痛いだ――え? オルト?」

「ム?」

オルトだよ。オルトがいるよ! マジで? しかも、LJOを始めたばかりの頃の、普通のノームの姿である。

「本当にテイマーの力がそのまま貰えたのか」

ここの場所が現実であることは間違いない。痛みも感触も匂いも、ゲームではあり得ないほどにリアルなのだ。

そんな現実の世界に、ノームの少年が立っている。

「……オルト」

「ム?」

「色々と大変なこともあるかもしれないけど、またよろしくな?」

「ムムー!」

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