軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

610話 完成、毒料理!

毒料理の試行錯誤を始めてから数時間後。

「なんとか、無臭の毒料理ができたぜ」

「そうですね!」

「長かったわ」

ソーヤ君たちは喜んでくれるが、ルフレの姿はもうそこにはない。料理を無駄にする光景を見ているのがつらくなった――わけではなく、仕方なくだ。

実は途中で、調理工程に中間素材として毒を組み込む方法へとシフトしたんだが、そのせいで毒が空気中に混じるようになってしまったのだ。煮たり焼いたりする際に蒸発してしまうらしい。

臭いが大分緩和されたのは良かったが、部屋中に毒が充満して毒が継続して入るようになってしまった。危うく俺たち3人で死に戻るところだったね。

ソーヤ君がガスマスク的な装備品を出してくれなかったら、料理を続けられなかっただろう。モンスはガスマスクを装備できないので、ルフレは退出するしかなかったのだ。

顔を覆う透明なガスマスクを着けた男女が、毒の入った料理を作り続ける光景。ヤバイ実験室にしか見えんね。

ただ、苦労したおかげで、毒そのものは無臭なうえに毒性は非常に強いという、ヤバイ料理が完成した。毒性の強さは、勿論自分たちで試したよ。

麻痺と毒が同時に入るとは思わんかった。そのせいで死にかけたね。というかふーかが即座に救助に入ってくれなかったら、死に戻っていただろう。

「失敗作は……とりあえずしまっておくか。どっかで使えるかもしれないし」

「色々大変でしたけど、面白かったです」

「私も! レイドボス戦頑張りましょうね!」

「器も成功したし、きっとうまくいくわ」

アシハナと作っていた臭いを撒き散らす器も完成したし、有意義な時間だったね。

生産メンバーと分かれた俺は、スケガワを迎えに行った。罠はしっかりと作れたようだ。スケガワが作った罠がいっぱいある。

ただ、ボス戦で通用するかは未知数であるらしい。

「しかも、使い捨てなのに超高価だからな」

「そんな高いのか?」

「前線プレイヤーのメイン武器並みに高い」

「うわ……」

それが使い捨てとか……。因みに、ヤダンさんの罠も使い捨てだ。だったら、なんで池で拾えたのか? そこはまあ、ゲームだからね。

ヤダンさんの罠とスケガワの罠を見比べると、大分違っている。形は同じだが、明らかに輝きが違っていた。素材からして別物なんだろう。

「なんか、綺麗になってますね」

「がははは、頑張り過ぎたかな! 前よりもいいできになっちまった! これならあのデカブツにも効くだろうよ!」

ところどころ錆びていた虎バサミが、新品のようにピカピカになって出てきた。銀色の刃が剣呑に輝き、普通のモンスター程度なら倒せてしまいそうだ。

設置すると、勝手に地面の中に埋められる親切設計であるらしい。目の前でヤダンがスクロールに封印してくれた。

あとはオブジェクトと同じように、このスクロールを地面において使用するだけだ。

「じゃあ、俺は工房に戻るよ。今日は色々勉強になった。ありがとうな」

スケガワはそう言って、帰っていった。明日のレイド戦に合わせて、早めにログアウトしておくらしい。

「俺はこの後はどうしようかね」

「フム?」

「ペン?」

「さすがに今日は釣りにはいかないぞ?」

依頼受けてないし。でも、冒険者ギルドに顔は出しておくか。レイドボスに行く道中にこなせる依頼を確認しておきたい。

「戦闘系の依頼に、採取系と……。新しい依頼があるな」

なんと、サーベラスライオンの討伐依頼が出ていた。姿を確認したから開放されたのか? 失敗してもデメリットはないけど、成功すればお金と村の家がもらえるそうだ。

簡易ホームとして利用が可能ってことなんだろう。転移陣がないなーと思ってたんだが、レイドボスに勝利しないと手にできないようだ。

第11エリアの攻略をしやすいようにってことなのかね?

他にも新しい依頼はないかと物色していると、ギルドの中に狼少女ウェリスが入ってくるのが見えた。

「旅人さんだー。こんばんはー」

「ウェリスちゃん。こんばんは」

俺たちに手をフリフリしながら、カウンターに歩いていく。

「姉ちゃん、肉狩ってきたよー」

「あら? 助かるわ」

狩猟系の依頼を受けていたらしい。NPCも依頼をこなしているんだね。ポリックさんが言っていたように、食料が乏しくなってきているんだろう。

狩人のウェリスが頑張ってお肉を集めているらしい。

「これって、納品するお肉に指定があるのか? 他のフィールドで狩った肉とか魚ならあるんだけど」

洞窟や大荒原で獲れる素材の納品依頼しか掲示されていないが、ただ食料を提供するだけなら他の場所の素材も大量に持っている。

特に肉や魚は、料理のためにストックしてあるからね。

「それはとてもありがたいですね! ただ、あまりお高くは買い取れないので、依頼には出していないんです。それに、ギルドポイントもつきません」

提示された金額は、確かに安かった。NPCのショップに売る方が遥かに高い。しかもこれでギルドポイントが付かないとか……。

でも、もう持ってるって言っちゃったしな。それに困ってるみたいだし、ここは儲け度外視で納品しておこう。

俺は低ランクの肉を多めに、魚や野菜、ハーブなどを受付で提出しておいた。お姉さんもウェリスも、嬉しそうだ。儲けはないけど、いいことしたな。

「ありがとー」

「いや、困ったときはお互い様だ」

「旅人さん、やっぱいい人ー」

好感度が上がったっぽい? こういうのが積もり積もって、なんかNPCからの評価が高くなっちゃってるのかもしれない。

「洞窟の怪物との戦い、気を付けてねー」

「大丈夫だよ。俺たちは死なないし」

「そう言えばそうだったー」

「ボス戦で、なにか注意した方がいいこととかあるか?」

「うーん? 風がよく効くよー」

やっぱ目新しい情報はないかな?

「あと、足元に気を付けてー」

「足元?」

「鍾乳石が生えてるから、足が引っ掛かって転んじゃうかもしれないからー」

「なるほど」

「天井も気を付けてー。鍾乳石が崩れて落ちてくるかもー?」

どうやら、ボス部屋の鍾乳石は、破壊が可能であるらしい。となると、足元のでっぱりに気を付けつつ、天井からの落石にも気を付けなきゃいけないってことかね?

さすがエリア解放ボス。ただ強いだけではないようだった。

「わかったよ。参考にする」

「うんー。がんばー」

NPCとは言え、応援されると気合が入る。初見突破は無理でも、必ずレイドボスに勝ってみせるぞ!