軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

608話 ポイズンクッキング

コクテンと分かれた後、俺たちは獣人村で聞き込みを行っていた。レイドボス戦で役に立つ情報をゲットするためだ。

「アイネ、落とすなよ? そーっとだぞ?」

「フマー……」

「そう! その調子だ!」

「フマ!」

俺たちがいるのは、薬師のおばあさんの庵である。レイドボスの情報が聞きたいと言ったら物置部屋を綺麗にするように頼まれたので、皆で手分けして掃除をしているところである。

高いところはアイネに任せていたんだけど、壺やら何やらどかそうとしている姿が危なっかしくてしょうがないのだ。

意外と力はあるし、大丈夫なのは分かってるんだけどさ。幼女が自分の体と同じくらいある壺を「ふんぬー」って感じで持ち上げている姿は、心臓に悪かった。

「フム?」

「お、そっちの水洗いは終わったか? じゃあ、この水槽に水を補充してくれ」

「ム!」

「――!」

「薬草の仕分も終了したのか? 早いな。さすがだぞ」

「ムッム!」

「――♪」

モンスたちの頑張りのお陰で、部屋はあっという間にピカピカだ。おばあさんも大喜びで、情報を教えてくれた。

「洞窟の奥に居座った奴は鼻も利くらしくて、煙幕や幻影、隠密も通じないらしいよ」

「隠れられないってことか」

「そうそう。隠密が得意な狩人があっさり見つかってたからねぇ」

忍んでの奇襲は難しいようだ。ただ、おばあさんの情報はこれだけではなかった。

「あれだけ部屋を綺麗にしてくれたお礼が、こんな話だけっていうのも申し訳ない。もう1つ、いいことを教えてやろう」

「いいことですか?」

「うむ。儂が作り上げた、特殊な毒の製法じゃよ。あのライオンに効くかどうかはわからんが、そこらの魔物はイチコロじゃろうて」

「おお! それは凄いですね!」

「そうじゃろうそうじゃろう。ほれ、これをもっておいき」

おばあさんが渡してきたのは、特殊な毒のレシピと、その完成品であった。これは有難い。

その後も村を巡り、いくつかの重要情報をゲットできた。

「火が効きにくくて、風が弱点か」

「あと、薬師のおばあさんが言ってた、毒の話って……」

「効くかどうか分からないって言ってたけど、レイドボスに有効な毒なんだろうな」

レイドボスの弱点属性に行動パターン、攻撃方法。そして、最初にゲットした毒情報。

「じゃあ、私は聞いた情報をまとめておきますね」

「俺は毒を作ってみるよ」

「あー、楽しそうですけど、今は情報整理の方が優先ですよねぇ。そっちはお願いします」

ということで、ホームに戻ってきた俺は、工房で料理に取り掛かる。

「やってまいりました。ポイズンクッキングの時間です」

「フム?」

「レイドボスに有効かもしれない、猛毒入り魚料理を作る!」

「フム……」

魚料理が好物だという情報に、薬師からの毒情報。この2つから導き出される結論は、「毒料理を作ってボスに食わせる」だ。

「ルフレ。確かに魚が好きなお前にとっては、食材を無駄にしているように思えるかもしれない。だが、これもレイドボス戦に備えてのことなんだ」

「フム……!」

「そうだ。ただでさえ足手まといなんだからな。せめて、こういうところで貢献しないと」

やること自体はそう難しくはない。料理を作って、毒を入れるだけなのだ。まずは実験として、すでにある料理に、おばあさんから渡された毒を使ってみることにした。

「使うのは、これだ!」

「フムー!」

ルフレの好物の1つ、アクアパッツァである。ルフレを仲間にしたばかりの頃に作った低品質のなんちゃってアクアパッツァではなく、リアルとほぼ同じ作り方の高品質品だ。

「フム……」

「ちょ、よだれ! これ、今から毒入れるんだからな!」

「フム!」

「縋りつくなって! まだストックあるから大丈夫だから! 材料も一杯あるから!」

海の魚はインベントリに大量に入っているし、オリーブやハーブ類、野菜は自家栽培だ。そう説得すると、なんとかルフレが離れてくれた。

「この毒、粉末タイプだから振りかけたらいいかな?」

俺は白い粉末をアクアパッツァに振りかけてみた。すると、名前がアクアパッツァ(毒)と変化する。

「成功――か?」

「フム?」

効果が分からないな。ただ、すぐに俺は問題点に気づいた。

「ちょっと臭いがあるな」

「フム!」

毒薬の独特な臭いが、アクアパッツァからしてくるのだ。レイドボスは確か鼻がいいんだったよな? だとしたら、これではダメかもしれない。

「つまり、振りかけるんじゃなくて、工夫して仕込めってことか……」

毒自体を作るのはそう難しくはない。まあ、材料が結構高価で、普段使いは難しそうだが。一応、うちの畑で揃う物ばかりだ。

「ようやく量産が始まった火炎草と水泳草を使うことになるけどさ」

おばあさんがくれた毒薬の名称は、魔力毒薬。物質的な毒ではなく、魔力に作用する毒で、普通の毒耐性では防げないらしい。

恐ろしいものがあったもんだよ。いずれ敵が使ってくることも考えると、解毒薬は多めに常備しとかないと。

「仕方ない。色々と試行錯誤してみよう」

「フム……」

「ほら、そんな切ない目でアクアパッツァ見るなよ。毒入りなんだから、食べれないからな?」

「フム」

本当に分かってる?