作品タイトル不明
603話 メンバー集めの相談
「白銀さん!」
「コクテン! こっちだ!」
レイドボス戦のアドバイスをもらうため、俺たちは早速コクテンに連絡を取っていた。その結果、第10エリアの黄都で会うことになったのだ。
転移陣前で落ち合った後、アカリの案内で冒険者ギルドに向かう。パーティで使うための会議室があるからだ。
個室のあるカフェとかでもいいんだけど、俺もアカリもコクテンも、そんなオシャレな店知らなかった。
探そうかとも思ったが、コクテンが早く話を聞きたくて仕方がないって感じだったので、すぐに入れるギルドを選んだというわけだ。
会議室に入ると、コクテンは椅子に座りながら急かすように口を開く。
「それで、未発見のレイドボスということでしたが?」
「そ、そうなんだよ。未発見かどうかは分からんけど、大っぴらには知られていないことは間違いないと思う。俺もアカリも聞いたことないし。なあ?」
「はい。私も、全く知りませんでした」
俺たちのようにあそこを発見して秘匿しているプレイヤーはいるかもしれんが、情報が広く公開されてることはないはずだ。
「正直、かなり強そうなボスなんですよ」
「それで、コクテンたちの知恵を貸してほしくてさ」
見開かれたコクテンの眼の迫力に押され、挨拶も早々に会議開始だ。うちの子たちも、ワチャワチャと騒がずに、お行儀よく椅子に座っている。
「ヤ……」
「デビ……」
「クマ……」
コクテンの邪魔をしたら怒られると、本能的に理解したのかもしれない。お人形さんのように静かだった。ああいう、モンスを象った人形やヌイグルミもありかもしれん。アイネに頼んで造ってもらおうかな?
「白銀さん? それで、レイドボスの話ですよ。詳しくお願いします」
「お、おう。そうだったな。最初は、第10エリアで妖怪を探してたんだよ――」
妖怪を探しに行ったら、獣人のNPCと出会ったことや、獣人少女に案内されて洞窟内にある村を発見したこと。そして、その村の先に、レイドボスがいたことなどを語って聞かせる。
すると、コクテンは興奮気味に詰め寄ってきた。
「このレイドボス、エリア解放ボスの可能性が高いです。となると、参加者は勝手に集まると思いますが、どうしますか? お金を取ることも可能だと思いますが」
「エリア解放? 金をとる?」
「あれ? 言われてみたら……そうかも?」
「白銀さんはともかく、紅玉さんも気づいてなかったんですか」
今、このゲームは第10エリアで足踏み状態になっている。
どうしても先の第11エリアに進むためのルートが発見できず、全プレイヤーがここで足止めされてしまっているのだ。
先へ進めない理由としては、ヒントやキーアイテムを取り逃した説や、まだ実装されていない説などが囁かれている。
しかし、多くのトッププレイヤーたちが諦めず、日夜突破するためのルートを探しているらしい。
俺には全く縁がない話だから、完全に予想外の話だった。アカリも、基本はソロでエリアの端やダンジョンの周回をしているらしく、あまりエリア更新は気にしていなかったらしい。
「いや、でも、なんで俺が?」
自慢じゃないが、第10エリアの踏破率も低いし、新ルートを探したこともない。そもそも、それっぽいイベントや情報に遭遇したことだってないのだ。
ある日突然、ウェリスが目の前に現れたのである。
「理由は私にも分かりませんが、白銀さんだけが踏んでるフラグがあるんでしょうねぇ。まあ、そこは検証班に任せて、我々はボス戦の相談です」
「そこは、正直俺には全く分からん。必要なアイテムとかがあれば集めるけど、メンバーに関してはコクテンとアカリ頼みになりそうだ。勿論、俺のフレンドだったら、一緒に声をかけるからさ」
「呼びたいプレイヤーとかもいないんですか?」
「まあ、絶対にこの人を呼んでほしいって相手はいないかな? あと、お金は取らなくていいと思うけど……。アカリはどう思う?」
「私も、参加料まではやり過ぎな気もします。あと、私も親しいプレイヤーはあまり多くないですし、コクテンさんにお任せできたら嬉しいんですけど……」
「2人とも欲がないですね。さすがです。ということなら、私に任せてもらいましょう」
コクテンの言葉が頼もしい! 彼はその場でウンウンとうなりながら、プレイヤーの名前を書き出し始めた。
前衛中衛後衛で、バランスが良いメンバーになるように知人からメンバーを選び出しているらしい。
メモを覗き込むと、知っている名前ばかりだった。俺とコクテンは、意外と交友関係が被っているようだ。
待つこと10分。ようやくメンバーを選び終えたらしい。まだ連絡もしていないので、あくまでも候補だが。
「まず1パーティは白銀さんたちでいいんですよね?」
「やれるだけのことはやるよ」
「そして、約束通り1枠は私たちが貰います」
「むしろお願いします!」
これにアカリを加えた、2パーティ+1人は、初期メンとして確定である。残る枠は2パーティと5人だ。
「あとは、私が連絡しておきますね。明日の朝、一度連絡を入れますので」
ということで、いったん解散だ。完全に任せっきりになってしまうが、コクテン的にはそれも嬉しいらしい。自分の考えた最強メンバーを集めると意気込みながら、スキップで去っていった。
「さて、明日までまた暇になったわけだが」
「ユートさんはこの後どうします?」
「洞窟前の池に行ってみようと思う。釣りができそうだったし」
「私もご一緒していいですか?」
「別に構わないけど、戦闘はしないぞ?」
「構いません。それよりも、新しい魚がゲットできるかもしれないじゃないですか!」
そう言えば、アカリは図鑑埋めとアイテムのコレクションが趣味だったな。
「じゃあ、村に戻りますか」
「はい!」