軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6話 東の平原

畑に植える草を求めて俺がやってきたのは、東の平原だ。出現モンスターが弱く、初心者向けと言われるフィールドである。平原に足を踏み入れて、直ぐに緑マーカーに気づいた。茂に紛れて生えていたのは、紫色の毒々しい色をした草だ。

「毒草か」

触り難い色だが、触っても平気だろうか。俺は恐る恐るその草を鑑定してみる。

名称:毒草

レア度:1 品質:★1

効果:服用者に低確率で毒効果。

触っても平気みたいだな。これ単体だと大した効果は得られないが、調合で毒薬にすると色々と使えるらしい。これも育てられたら便利そうだった。モンスターに出くわさないよう、慎重に歩く。

「お! 麻痺草だ!」

数分後に見つけたのは、黄色い葉の、タンポポに似た草だ。これも調合に使える草の一種、麻痺草である。

名称:麻痺草

レア度:1 品質:★1

効果:服用者に低確率で麻痺効果。

調合、料理スキルのお蔭で、8つの調合レシピを初期から取得できている。ポーション、傷薬、携帯食、狩猟薬、毒薬、麻痺薬、蜜団子、サラダの8つだ。

レシピがなくても自分で材料を混ぜて薬を作ることは可能だが、失敗する恐れもある。レシピからのオート作成は、品質は低いが100%成功というメリットがあった。

どちらも一長一短だが、俺としては自分で調合して、ガンガン新レシピを開発したいところだ。その方が面白そうだし。

次に見つけたのは、緑マーカーすら出ていない木の棒だった。このゲームは基本的にどんな物も採取可能だが、特殊効果の無い物には緑マーカーが出ない仕様である。

これに目を付けたのは、形が杖っぽかったからだ。今の俺は無手だからな。できれば何か武器になるものが欲しかった。

「杖の代わりにならないかな?」

名称:木の棒

レア度:1 品質:★1 耐久:30

効果:攻撃力+1 耐久回復不可

重量:1

なんと装備できてしまった。まあ、何も無いよりはましだろう。本当に気休めだが。

30分後。

俺は平原を駆けながら、一瞬だけ腰をかがめて足元の草をもぎ取った。これで採取品は6つめだ。

「はぁっはぁっ! また傷薬草かっ!」

「ギュウゥゥ!」

「うわっ。あぶねぇ!」

俺に飛びかかってきたのはでかいネズミだった。モルモットとかジャンガリアンとか、夢の国のマスコットみたいな可愛い奴じゃなく、めっちゃリアルで不気味なネズミだ。ドブとかにいるタイプの。しかも中型犬サイズ。

「この! この!」

「ヂュヂュ」

「今の絶対笑っただろ! チクショウ!」

木の棒で応戦するが、全然当たらない。アーツ? 当たらねーよ! 杖アーツ『スイング』を使っても、速いネズミにはあっさりと躱されてしまうのだ。

「雑魚モンスターのくせに! くせに!」

「ギュウゥ!」

「ぬごっ」

野郎、腹に突進してきやがった。毛玉のモフモフした感触が残ってやがる。それでいてHPが1割ほど持っていかれた。

俺を追い詰めているネズミは、LJO最弱の魔物と呼ばれる、初期の経験値こと牙ネズミであった。ぶっちゃけ雑魚だ。そして、その雑魚に殺されかけてる。うん、俺って雑魚以下ってことだな。

そもそも防具は売り払ったし、体力最低の後衛職。しかもLv1。まあ、紙耐久というのは俺のためにある言葉だ。

「うりゃ!」

「キュルッ」

「当たった!」

だが、やつのHPバーは2割くらいしか減らない。

「やっぱ逃げるしかないか!」

テイムも全然効かないしな!

俺は再びダッシュした。牙ネズミは追ってくるが、ジグザグに走って、なんとか的を絞らせない。それでいて視線は草を探して地面を見ていた。

自分の往生際の悪さを褒めてやりたいね。そして牙ネズミによって殺される寸前、俺は滑り込みで草をゲットし、倒れ込んだ。ふわっと浮くような感覚とともに、始まりの広場に戻ってくる。

「……死に戻り完了」

悔しくなんかないもんね。予定通りだし。本当に悔しくなんかないんだ! とりあえず悔しさは忘れて、最後に手に入れた草を見てみる。

名称:陽命草

レア度:1 品質:★1

効果:ポーションの素材。満腹度1%回復。

ポーションの素材だ。これはかなり嬉しい。すでに薬草の栽培ができることは分かっているし、この草も栽培できればポーションの量産に一歩近づく。

ざわざわ。

おっと、死に戻りが珍しいらしく、かなり見られていた。まあ、初日に死に戻りしてくる奴なんて、俺だって見ちゃうよ。

俺はそそくさと広場を後にする。いいさ、これが俺のやり方だ。広場から畑までは5分ほどである。近くて便利だな。

「オルト、戻ったぞ。ほら、お土産」

「ムウム!」

「どうだ、育てられるか?」

「ム! ムームームムー」

俺が渡したのは、毒草、麻痺草、陽命草である。それぞれ1つずつ渡してみた。すると、オルトは次々と種に変えていく。

「おお、さすがオルト」

「ムッムー」

「しかし、もう見た目は完璧に畑だな」

俺が採取に行っていた1時間ほどで、オルトは畑を耕し終わっていた。更地だった畑には形の整った畝が作られている。

「ムーム」

オルトが畝にチョンチョンと穴を開け、種を播いていく。やはり芽が出るのは一瞬だ。

普通だったら芽が出るのに1日~4日。成長に1~10日程かかるらしい。だが、この速さだったら1日で収穫まで行けちゃうんじゃないか? だとしたら、毎日収穫も夢ではない。やばい、テンション上がってきたぞ。

「オルト、畑は任せた!」

「ム!」

俺は再び仕入れだ。次はもう少しレア度の高い物が欲しいところである。

「その前に回復アイテムを用意しないといけないよな」

回復手段があれば、もう少し長い間探索ができるだろう。だが金もないので、自分で用意しないとならない。

俺は採集してきた傷薬草4つを、調合スキルで傷薬にすることにした。オルトが働くのを横目に、俺は井戸から水をくむ。そして、システムの指示に従い、傷薬草と水を簡易調合セットに付いていたすり鉢に移すと、ゴリゴリと混ぜていく。

本当に簡単な作業だ。魔法も必要ないし。数十回混ぜ合わせると、傷薬草がペースト状に変化する。そこに魔力を注ぐと、すり鉢が僅かに輝いた。そして、ポンという可愛い音とともに、傷薬が出来上がっている。

ご丁寧に、薬包に包まれていた。この紙、どこから現れた。まあいい、これで傷薬の完成だ。

名称:傷薬

レア度:1 品質:★1

効果:HPを10回復させる。クーリングタイム10分。

下級ポーションよりも更に下位の回復アイテム。しかも最低品質だが、俺には十分だ。

「よし、行くか」

次に向かうのは西の森だ。東の平原と同様、初心者向けのフィールドである。

でも、その前に情報収集だ。これを忘れて痛い目に遭ったんだし。重要だ。行くのは安心の農業ギルドなのだが、今日だけで何回来てるかな。

ゲーム内時間は17時を回っている。モタモタしていたら夜が来てしまう。夜はモンスターが増えるのだ。しかも、群れで襲ってくるらしい。俺みたいな貧弱なボーヤ、瞬殺されてしまうだろう。しかも暗いと草も探しづらいし、良いことなんて何一つない。

「夜が来る前に探索を終えないとな」