軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

59話 始まりの町よ、私は戻って来た!

「アクアボール!」

「キュキュイー!」

俺たちの攻撃で、ロックアントが倒される。もう、1、2匹だったら問題なく対処できるな。

因みに、アカリの提案でパーティは組んでいない。そうすると経験値がアカリに分割されてしまうからだという。アカリは辻アタックで敵を削って支援してくれることになっていた。この辺の昼間に出現する敵は、プレデター以外はアカリなら範囲攻撃一撃で全滅させられるので、これで問題ないらしい。

アカリと共に始まりの町を目指して出発してから3時間後。

俺たちは問題なく町へ戻ってきていた。

「始まりの町よ! 私は戻ってきた!」

一時は死に戻りを覚悟したが、無事戻ってこれたな。

アカリが微妙な顔をしている。これは別に、俺のガトーさんネタに引いている訳じゃないぞ? いや、違うよね?

アカリが項垂れているのは、ほとんど護衛の必要が無かったからだ。運が良いのか悪いのか、俺たちだけで対処できるモンスターしか出現しなかった。朝だからなのか、レッサー・ゴーストも出現しなかったしね。

ぶっちゃけ、護衛とか必要なかった。

ただ、アカリが居てくれることで安心して戦えたのも確かだ。後ろにアカリが控えていると思えば、多少無理して攻撃にも転じられる。そのおかげで撃破速度は上がり、結果としてダメージも減るという好循環が生まれていた。

そのことを伝えても、アカリはやはり微妙な顔だ。もちろんアカリもモンスターを大量に葬っているが、雑魚ばかりだったし。

アカリとしても元々始まりの町に戻るつもりだったからそのついでに護衛を受けたのに、護衛としての仕事が全くなく、ただ普通に始まりの町に辿りついてしまった。全然仕事をしていないのに、尻尾を売ってもらって良いのかという思いがあるらしい。

値段を釣り上げようと思えば幾らでも釣り上げられる状態で、俺からボスレアドロップを適正価格で売ってもらえるということだけでもありがたいのだとか。

すでに値段の交渉は済んでいる。一応、6500Gで売ることになっていた。第一エリアで手に入るアイテムの中では断トツで高額だ。

だが、他のプレイヤーやショップで買おうとしたら、場合によっては20000G以上は吹っ掛けられるんだとか。

また、サヴェージドッグレガースのレシピが早耳猫で売られ始めてから、さらに値段がつり上がり始めているらしい。本公開されたらさらに上昇するだろう。

「しかも、それで手に入ればいいけど、売ってない事の方が多いし」

今後はさらに入手困難になるだろうという事だった。

「今はまだ少ないですけど。数日後にはサヴェージドッグランニングをするプレイヤーでこの辺が溢れかえるはずです」

サヴェージドッグレガースは、高防御力で軽いうえ、攻撃力上昇と敏捷上昇、ダメージ軽減効果があるらしい。聞いただけでも凄まじいな。

その性能の高さから、物理アタッカーであれば誰もが欲しがる防具なんだとか。

「しかも、サヴェージドッグの尻尾は、レガースだけじゃなくて他の防具に使う混合素材にもなりますから。どこでも常に引っ張りだこなんです」

「混合素材って?」

「何と言いましょうか……。防具を作る時に混ぜ込むことで、普通の防具にボーナスが付く素材の事です」

アカリが分かりやすく説明してくれる。

例えば俺の装備しているワイルドドッグシャツは、ワイルドドッグの毛皮×4に、鉱石系素材が1つで作成できる。普通はここには余計な素材を混ぜ込むことができない。

だが、混合素材と呼ばれる素材であれば、レシピ外の素材であっても武具作成時に新たに追加で混ぜることが出来るのだ。

サヴェージドッグの尻尾の場合、武器であれば攻撃力上昇、防具であれば敏捷上昇効果が見込める。それは誰でも欲しがるかもね。重量が増すらしいから、俺にはあまり魅力的には思えないが。

「レガースを作らなくても、作成時に使いたい人が多いんですよ」

「だから高騰する訳か」

「はい。6500Gは安すぎるんです」

「それだって、NPCショップに売った時の倍近いんだろ?」

「ですが、プレイヤーに売ればどれだけ安くても10000Gはいきます」

そう言われても、俺としては長時間拘束したうえ、道中の採取やモンスタードロップも少し多めに譲って貰ってしまったので、申し訳ないくらいなんだけどね。

そもそも尻尾だって適正価格で売るっていう条件なんだし、俺には全く損が無い。

「まあまあ、俺が良いって言ってるんだし」

「むぅ。ならいいですけど」

俺たちは町の入り口に辿りついた時点で、報酬の受け渡しをした。俺からは尻尾。アカリからは6500Gだ。

アカリは最後にうちの子たちを心行くまで撫でまわし、友人に会うと言って去って行った。

「そうだな……獣魔ギルドに戻る前に、あのレッサー・ゴーストの情報を仕入れに行くか」

こういう時こそ情報屋さんだ。俺は皆と一緒にアリッサさんの露店に向かった。

「おはようございます」

「いらっしゃい。何か新情報?」

「どうでしょう? 実は初見のモンスターに出会いまして」

「へぇ? 場所は?」

「第2エリアの入り口です。北の平原の先にある森で」

「牙の森ね。もしかしてレッサー・ゴーストに出会ったの?」

「あ、知ってます?」

思ったよりも食いついてきたな。もしかしてレアモンスター?

そう思って聞いたら、既に遭遇報告が何件も寄せられていたらしい。魔術しか効かないことや、物理ではヘイトが溜まらないことなど、俺が持っている情報は既に他のプレイヤーによって売られた後でした。残念。

ただ、牙の森での遭遇報告は初めてだという事で、俺の知らないゴーストの情報と交換してくれた。

ここ数時間程度で第2エリアに出現し始めたという事。聖属性が弱点だという事。どうやら、レイドボス攻略がキーになっているのではないかという推測。

解放された一部システムというのが、出現するモンスターの種類の増加なんだろう。ある程度ゲームが進んでプレイヤーの強さが上がってきたという判断がなされ、少々手強い敵が追加されたという事らしい。

「迷惑な……」

「ただ、新素材なんかが出回るだろうし。生産を頑張ってるユート君には恩恵もあると思うわよ」

「だと良いんですけどねー」

落ち込んでいても仕方がない。気を取り直して、獣魔ギルドに孵卵器を買いに行こう。そもそも冒険に出たのはそれが目的だったんだしな。