軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

571話 再びのムーンポニー

「いやいや、楽しいボス戦でしたね」

「久々にスピードタイプと戦ったな! やっぱ速い敵は面白いぜ」

しばらくボス戦はごめんだと思っている俺の横で、コクテンとセキショウが楽しげに笑っている。

他のメンバーもどうにか連れてきて、ボス周回をしたいなんて話しているのだ。

さすが、戦闘をするためにこのゲームをやっていると言い切る、トップパーティのメンバーだけあるね。

「ドロップはどうでござったか? 拙者、素材だけではなくアブミが手に入っているのでござるが?」

「僕はブラシが入っているね」

「俺は手綱だな」

見習い騎士の森のボスなだけあり、ドロップには馬具が出現するらしい。連れている騎乗モンスターが馬じゃなければ、そのモンスに相応しいアイテムになるのだろう。

ただ、コクテンとセキショウのドロップに、その手のアイテムは入っていなかった。騎乗モンスがいるかどうかで変化するらしい。

やはり、騎乗スキルのために用意されたフィールドなのだろう。

「それに加えて、ランダムアイテムボックスだね」

「それは私たちにもありますよ」

ランダムボックスは全員入手だった。タッチして開封を選ぶと、インベントリの中にアイテムが追加される。

俺がゲットしたアイテムは、『首領森狼の牙剣』だ。

名称:首領森狼の牙剣

レア度:6 品質:★10 耐久:620

効果:攻撃力+208 魔法力+45

対獣与ダメージ上昇・中、樹属性付与・小

装備条件:敏捷40

重量:13

属性付きだからゴーストにもダメージ入るし、獣系のモンスターに対してダメージ上昇効果も強い。全体的に、獣系の敵は多いからね。

だが、うちには使える者がいなかった。剣を使うものもいないが、そもそも装備できないのだ。装備条件が敏捷40ってなんだよ。重量もかなりあるし。

「僕はメイスだね。使わないなぁ」

「私はポーション詰め合わせです。悪いモノではないですが……」

「俺は斧だ! うちのパーティには使い手がいない武器なんだが」

俺が、装備すらできない剣。ジークフリードが馬上では使いにくいメイス。コクテンがポーション類。セキショウがパーティでも必要のない斧か。全員、引きが悪すぎないか?

そんな中、ムラカゲが当たりを引き当てていた。

「拙者は外套でござるな。匂い消しと、森での偽装効果付きでござる!」

ニンジャとしては、非常に有用な装備だろう。防御力も高いらしく、ムラカゲが小躍りして喜んでいる。

「妻へのいい土産ができたでござるよ」

「あれ? アヤカゲにあげちゃうの?」

「そろそろ結婚記念日でござるからな」

結婚記念日にゲームのレアアイテムって、それでいいのか? 余程のゲーマーなら喜んでくれるだろうが……。

皆も俺と同じことを考えたらしい。口々にアドバイスし始める。

「ムラカゲさん。結婚記念日のプレゼントをゲーム内のアイテムで済ますのは、どうかと思いますよ?」

「ムラカゲ君。ちゃんと現実でもプレゼントを用意するんだよ?」

「勿論、リアルでも贈り物は用意しておりますぞ。拙者を何だと思っているのでござるか。しかし、このゲームをやれているのも妻のお陰ゆえ、感謝の気持ちを示したいのでござるよ」

なんでも、アヤカゲがβテスターで、その報酬でムラカゲの分のソフトを確保してもらったそうだ。

夫婦でソフト当てるなんて運がいいと思っていたら、βテスター報酬だったのか。しかもアヤカゲの方が。

俺のイメージだと、忍者オタクでゲーマーの夫に付き合ってあげてる妻って感じだったけど、どうも違うらしい。実際は、忍者夫とゲーマー妻という組み合わせだったらしい。

「確かセキ君が、シュエラ君のβ特典でゲームを始めたと言っていたはずだよ」

「へー、そうなのか」

家族や友人、知人同士でゲームを遊んでいる場合、そのβテスター特典を使っている確率が高いのかもしれないな。友人同士でログインできているツヨシやタカユキは、その枠なのかもしれない。

そんなやり取りをしていたら、ハイヨーが何かに気づいたらしい。

「ブヒン?」

「どうしたんだい?」

「ブヒッヒン!」

「キキュー!」

同じ様に反応したのはリックもだ。ハイヨーの頭の上に駆け上ると、ヒクヒクと鼻を動かす。

この反応、見たことあるぞ!

俺は、リックたちが反応している方角を注意深く観察した。すると、微かな違和感がある。

周囲の風景に溶け込んでいるが、明らかに何かが動いているのが分かる。透明化していても、草の動きなどで何となくわかるのだ。

そして、その存在は草の茂っている場所でその動きを止めた。座り込んだのだろう。

これは間違いない。

「みんな! その場を動くな!」

「え? どうしたんだいユート君」

「この広場に、ムーンポニーがきている」

「ま、まじでござるか?」

「ああ。そこを見ろ」

俺は指さしてムーンポニーの位置をみんなに教えた。だが、中々理解してくれない。俺は一度見たことがあるので辛うじて分かるんだが、ジークフリードたちには普通の草むらにしか見えないようだった。

まあ、既に日が落ち始めていて薄暗いし、仕方ないけどな。

俺はみんなにその場に座るように促すと、インベントリからニンジンを大量に取り出した。刺激しないように、ムーンポニーのちょっと前あたりに山のように積み上げる。

そのまま静かに様子をうかがっていると、一番上のニンジンがカリッという音と共に齧られるのが見えた。

「よし食べた!」

俺たちが見守っている前で、ムーンポニーのお食事が終了する。ここまでくれば、コクテンたちにもそこに何かがいると分かっているようだ。

「いいか? 静かーに近づいて、優しくモフるんだ。絶対に攻撃しちゃダメだぞ?」

「わかったよ」

「楽しみでござるな!」

「透明化するモンスターか」

「戦う時に厄介そうだなぁ」

こんな時もブレない物騒なコクテンたちに念を押しつつ、俺たちはムーンポニーへと近寄っていくのであった。