軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

543話 ムーンポニー

「ヒヒン!」

「黒い、仔馬?」

「ヒン」

透明化を解除してその場に姿を現したのは、やや青みがかった黒い毛並みの、小さな馬であった。

馬なんだけど、リアル寄りではない。どちらかというとデフォルメされた、あっさり顔の木馬とか、顔が可愛いマキバ〇ーとか、そんな感じだ。

サイズは、リアルにいるミニチュアホースと同じくらいかね?

「キュートホース?」

だが、毛並みが聞いていた色とは違う。情報源は、見習い騎士の森の入り口にいるおっさんだ。ここに来る度に少し雑談をしているんだが、その話の中でキュートホースはクリーム色の毛並みだと教えてもらっていた。

個体ごとに体の模様が少し違うそうだが、基本の色が変わることはないだろう。

ユニーク個体か?

「鑑定――うえぇぇぇ?」

とりあえず馬を鑑定してみたら、変な声が出てしまった。だって名前が『ムーンポニー』となっていたのだ。

月毛の馬って、もっと黄色っぽい色じゃなかったっけ? ああ、よく見たら額に黄色い三日月柄の模様が入っている。これがムーンか。

「ヒン?」

「えっと、どうしたらいいんだ?」

とりあえず、敵対はしていないっぽい。こちらに攻撃を仕掛けてくる様子はなかった。想像よりもちょっと小さいけど、お馬さんを仲間にするチャンスか?

ただ、ノンアクティブモンスターだとすると、テイムをしようとしたら戦闘状態になってしまう可能性が高いだろう。

勝てるかな?

このフィールドの適正レベルに合わせているなら、戦っても楽勝だろう。だが、特殊なモンスターとして、この馬だけレベルが高い可能性もある。

そもそも、戦闘してテイムできるような相手なのか? イベントモンスだったら、テイム不可能なことだってあるだろう。

「やべー、分からん」

「ヒン?」

「……とりあえずもう少し時間あるし、それまでは毛並みを堪能しようかな」

今は特に警戒もせず、撫でさせてくれているのだ。もうちょっとだけ、遊んでおこう。

「キキュー!」

「フママー!」

「ヒヒン!」

俺がムーンポニーの頭を撫でていると、リックたちも纏わりつきはじめた。リックが頭に乗り、アイネは背中だ。

楽しげなのはうちの子たちだけではなく、ムーンポニーもだった。リックたちを乗せた状態で、俺の周囲をゆっくりと回り始める。

パカパカと良い足音を鳴らして並足で歩くムーンポニーは、まるでスキップをしているように見えた。

他の子たちも、我も我もとポニーに群がる。それを嫌がることもなく、ポニーは順番に乗せていった。

オルトやオレア、リリスはともかく、クママはデカ過ぎやしないかと心配になったんだが、全く問題はないようだった。

小さくとも馬。重い物を乗せて移動することが得意なんだろう。さらに、クママを乗せて広場を一周したムーンポニーは、俺の前にきて軽く鳴いた。

「ヒン!」

「もしかして、乗せてくれるって言ってるのか?」

「ヒヒン!」

正解だったようで、ムーンポニーは前足を高々と上げる。やる気満々らしい。

俺はその言葉――ではなく、嘶きに甘えて、その背に乗ってみることにした。ステータス制限に引っかかるかもしれんが、物は試しなのだ。

俺が乗ると、潰してしまわないか心配になる。だが、さすがは馬だ。涼しい顔をしていた。

「これって、ステータス制限は問題なしってこと?」

「ヒン!」

「重くないか?」

「ヒヒン!」

俺の言葉に応えるように、ムーンポニーが駆け出した。モンスたちと同じように並足なんだが、背に乗っていると意外に速く感じる。

それでいて、思ったほどは揺れないのだ。揺れなしとまではいかないが、ちょっと上下する程度だ。感覚で言うと、ちょっと揺れる自転車くらい?

もっと速く駆けたら分からないが、並足だったら全く問題はなかった。あー、こうやって騎乗を体験してしまうと、ぜひこの子を仲間にしたくなってしまうな。

「なあ、うちの子にならないか?」

「ヒン?」

「テイムされてくれないかってことなんだが。勿論無理強いするつもりはないんだ」

戦闘しろって言われても、ここまで楽しく遊んでしまった相手となんて、戦いづらくて仕方がない。

戦闘せずにテイムできるなら、それに越したことはなかった。リリスなんかも戦闘なしだったし、有り得なくはないと思うのだ。

「うちの子になったら、野菜はたくさん食べれるし、友達もいっぱいだぞ?」

「ヒーン」

背中の俺を振り返りつつ、器用に首を傾げるお馬さん。これは、脈あり? 考え込むような素振りをしている。もう一押しだ!

「うちはモンスターもマスコットも妖怪もたくさんいるし、ホームもあるからいつでもみんなと遊べるんだ。寂しくはないぞ?」

そうやってうちのモンスになった場合のメリットを語りつつ、首筋を撫でていると、ムーンポニーに変化があった。

突如、その体が輝き始めたのだ。この光、見覚えがあるぞ!

そして、ポニーが可愛らしく嘶いた。

ピッポーン。

『ムーンポニーをテイムしました』

きたー! マジで成功しちゃったよ!

「うちの子になってくれるんだな! よろしく!」

「ヒヒーン!」