軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54話 サヴェージドッグ

「グルルルル……!」

サヴェージドッグが俺たちを鋭い視線で睨みつけている。

怖! 犬嫌いじゃなくてもこれは怖い! だが、ボスからは逃げることができない。勝つか負けるかしかないのだ。

プレデターモンスターもプレイヤーには徘徊ボスと呼ばれるが、扱いはユニークモンスターなどと同じレアモンスターらしい。だからラージ・ロックアントからは逃げられたのだ。

だが、今目の前にいるのは紛れもなくフィールドボス。戦うしか道はなかった。

「戦法はいつも通りいくぞ!」

俺は掲示板で見たサヴェージドッグのデータを必死に思い出していた。一応始まりの町に隣接する4フィールドのボスに関しては、一通り調べてある。

ただ、最初は西の森のフィールドボスに挑むつもりだったからサヴェージドッグに関してはそこまで詳しくシミュレートをしてないのだ。

一応、動きが素早いので追わず、盾役で引き付けて、弓や魔術で攻撃しろと書いてあったはずだ。

「サクラは攻撃よりも、足止めに専念! クママ、リックはこっち来い」

無理するなと言いたいが、無理しなきゃ勝てない相手だ。オルト達が足止めしてくれている間に、俺はインベントリから狩猟薬を取り出した。そして、それをリックとクママに振りかける。

名称:狩猟薬

レア度:2 品質:★6

効果:16分間。武器に、毒効果・小、麻痺効果・微を付与。クーリングタイム30分。

フィールドボスにも状態異常は効く。耐性もそこまで高くないらしい。まあ、最初のフィールドだからな。ダメージソースが少ない俺たちが奴に勝つには、状態異常に頼るしかない。

「頼むぞ!」

「キュ!」

「クマー!」

激しい戦闘が始まった。

サヴェージドッグの主な攻撃手段は牙、前足、突進である。序盤のボスであるためそこまで特殊な行動はしてこないが、とにかく速い。

俺達の中では耐久の高いオルトやサクラでも、一撃で2割近いダメージを受けている。俺やリックなら一発で半分以上削られるだろう。

俺はいつも以上に丁寧にアクアボールを当てつつ、自分にヘイトが向かないように慎重に立ち回っていた。何といっても俺が死んだらそれで全滅扱いだからな。

これが、リアルで格闘技でもやってる運動神経抜群の奴なら、殴りテイマーとかやれちゃうんだろうけどね。俺は前に出るような危険は冒せない。

クママとリックは威力よりも、状態異常狙いでチクチクと手数多めの攻撃だ。だが、それでいい。

俺も攻撃よりも薬を使ったモンス達の回復を優先させつつ、時機をうかがっていた。

だが、一瞬の油断がピンチを招く。というか、こんなに長時間集中しながら戦ったことがなかったので、ミスが出てしまったのだ。

アクアボールを当てるために前に出過ぎた俺は、サヴェージドッグの体当たりに吹き飛ばされてしまっていた。

「ぐふっ!」

腹と胸に猛烈な圧迫を感じ、フワッと浮く感覚に襲われる。痛みはほとんどないんだが、衝撃で身動きが取れない。

「ガガウ!」

これは死んだ!

「ムムー!」

「ガッ?」

死に戻りを覚悟した俺を飛び出してきたオルトが身を挺して庇ってくれていた。自分よりはるかに巨大な魔犬の牙を、クワ一本で防いでいる。

「ガルルル!」

「ムム!」

サヴェージドッグ相手にギリギリと力比べをしながら、オルトが首だけで振り返って何やら言ってくる。多分、俺が防いでいる内に早く逃げろとか、回復しろって言っているんだろう。

やべー! オルトさんかっけー! マジ漢!

俺は大慌てでポーションを飲み干した。今後はさらに慎重に戦おう。

そうやって何度かピンチに陥りながらも、諦めずに戦い続けている俺たちに、ようやくチャンスが訪れる。毒に侵されてジリジリとHPを減らしていたサヴェージドッグが、遂に麻痺を食らって動きを止めたのだ。

「サクラ、今だ!」

「――♪」

速すぎて当てることが出来なかった樹魔術を、今なら当てることが出来る。サクラは蔦で相手の動きを止めるブランチバインドでサヴェージドッグを完全に封じ込めた。

あとはひたすら一斉攻撃である。俺はアクアボールを打ち続け、攻撃方法を持たないオルトはその小さい手でペチペチ叩く。サクラの鞭、クママの爪、リックの前歯がサヴェージドッグのHPを削っていった。

「ガルルルルルァ!」

だが、HPが10%を切ったことにより狂暴状態になったサヴェージドッグは戒めを引きちぎり、最後の攻撃を仕掛けてくる。

咆哮撃という範囲攻撃スキルで。周囲の敵にダメージを与えるとともに、一定確率で麻痺にしてくる嫌らしい攻撃だ。

「がっ!」

やばい! 体が動かん! 麻痺だ!

しかもアクアボールのダメージが大きすぎたらしく、タゲを取ってしまったらしかった。巨大な黒い塊が突進してくる。

「ガルルオォ!」

巨大な牙を剥き、飛びかかってくるサヴェージドッグ。

あれを無防備に食らったらひとたまりもないぞ! だが、麻痺のせいで全く動けない。

オルトとサクラも麻痺してしまったようだ。クママの速さでは助けに入ることはできないだろう。今度こそ死んだ! そう心の中で叫んだ直後だった。

「キィキュキュー!」

「ガウアァ!」

リックが横合いからサヴェージドッグに跳びかかった。そうだ、リックの赤いマフラーは麻痺耐性があったんだった!

しかも、その攻撃は奇襲扱いになったらしく、サヴェージドッグのHPバーはゼロになり砕け散る。

「ガウゥゥゥ……」

「キュキュー!」

リックが尻尾をピンと突き上げ、雄々しく雄叫びをあげている。かわいい! よくやった! そう言って飛びつきたいんだが、麻痺が解けてくれないのだった。