軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

484話 イカルのノーム

噛み噛み金髪少女イカルが、頭を下げたままプルプルと震えている。多分、噛んだことが恥ずかしいのだろう。

どうやって声を掛けようか迷っていたら、イカルの後ろから緑色の髪をした少年が顔を覗かせた。

「ムー?」

「おお、ユニーク個体のノーム」

プレイヤーが連れているのを見るのは珍しいのだ。

「ムムー?」

「ムー!」

こちらを窺うように可愛く首を傾げるノームに、オルトがトテトテと駆け寄って声をかけた。シュタッと手を挙げるオルトに、同じ動作で挨拶し返している。

そのままムームームムーと楽しげに会話が始まった。

イカルのノームは、うちのオルトに比べると、ちょっと垂れ目かな? 髪の毛も、少しだけパーマがかかったようなフワフワヘアだ。

オルトよりおっとりした感じの、ゆるふわ系ノームである。

「ムー!」

「ムムー!」

「ムー?」

「ム!」

イカルのノームはまだ進化していないので、装備などで見分けられるし、混乱はしないだろう。

オルトたちをホッコリとした顔で見守っていたら、イカルがいつの間にか隣に立っていた。ニッコニコの笑顔で、オルトたちを見ている。

すると、俺の視線に気づいたらしい。一瞬俯いたが、意を決した表情で顔を上げると、再び挨拶してくれた。

「あ、あの、イカルです」

「俺はユートだ、よろしく」

「は、はい!」

ノーム同士の可愛い触れ合いを見て、緊張も少しは解けてきたようだ。まだ少し声が震えているが、今度は噛まなかった。

「で、あそこで君のノームと遊んでいるのが、オルトだ」

「うちの子の名前は、エスクです」

「そうか。エスクも可愛いな」

「そうでしょう? でも、オルト君も可愛いですよ」

「だろ?」

それから数分ほど、うちの子可愛い談議で盛り上がってしまった。

実家にいる頃、飼い犬のフランを散歩させている時に同じような状態に陥ったことを思い出したぜ。

犬の散歩中のご近所さんと犬の話で盛り上がってしまうのは、犬飼いあるあるだよね。

「あー、2人とも、そろそろ出発したいんだがいいか?」

「おっと、済まんタゴサック」

「す、すいません!」

「はっはっは! イカルが初対面の男とここまで普通に会話できるなんてな! やっぱり、同じノームテイマー同士、話が合うんだな」

やっぱり人見知りなのか。俺がイカルとすぐに会話できたのは、タゴサックが言う通り一緒に盛り上がれる話題があったからだろう。

実際、道中ではノームの情報を交換し合って、話が非常に盛り上がった。

なんと、イカルのエスクは最初から散水exスキルを所持していたらしい。

散水exを使うと、植物の育ちが僅かに良くなり、作物の育成条件が緩和されるそうだ。

例えば、特定の品質以上の水が必要な場合や、畑の土の栄養状態などが関係する場合も、散水exがあれば育てることができる。

畑の状態はマスクデータなので詳しくは分からないが、肥料などを蒔かなくては育たない作物も、問題なく成長したらしい。

うちの場合はオルトが頑張ってくれてるから、今まで枯らしてしまったことはない。ただ、もっとレア度の高い作物が手に入るようになったら、活きてくるスキルだろう。

さらに、アカリも加わり、ハーブティーの話題で盛り上がる。

「アカリは、ハーブティーを自作してるんだな。ブレンドはしてるのか?」

「私の場合は、美味しかったハーブティーの真似をしているだけで、オリジナルはないかなー」

「私もです。でも、きっといつか美味しいハーブティーを自作してみせます!」

「私も!」

2人とも、ハーブティーに中々のこだわりがあるようだ。アカリの場合、俺のハーブティーを飲んだことが理由だっていうんだから、ちょっと嬉しくなってしまう。

他のプレイヤーに影響を与えるだなんて、トッププレイヤーみたいじゃないか? そんなことを言ったら、イカルが自分もだと言い始めた。

「私も、ユートさんの影響受けてますよ」

「え? でも、イカルは第二陣だよな」

「はい。第一陣に落選して、それでも諦めきれずにネットの動画をいっぱい見て……。それで、オルトちゃんに心を奪われたんです!」

なんと、ゲーム開始前からオルトの動画を見ていたらしく、ノームを狙っていたそうだ。オルトのようなノームを手に入れて、半テイマー半ファーマープレイをしたかったのだという。

うむうむ、オルトは可愛いからね! その気持ちは分かるよ!

「だから、私もなんですよっ!」

「そ、そうか。う、嬉しいよ」

それって、俺の影響っていうよりはオルトの影響なんじゃね? そう思わなくもないが、オルトは俺の従魔だからな。

オルトの功績は俺の功績。オルトの可愛さも俺の手柄なのだ。いや、運営とデザイナーさんの手柄か。まあ、俺がオルトの可愛さをより引き出したおかげってことで。

そうこうしている内に、あっと言う間に土霊の街だ。

俺たちにはもう見慣れた光景でも、イカルにはまだまだ新鮮な場所であるらしい。眼をキラキラさせながら、エスクと一緒に町を見ている。聞いてみると、まだ3回目であるらしい。

そりゃあ、こうなるよな。俺も初期のころはくるたびにワクワクしたものだ。

「はぁー、凄いですよねぇ」

「ムー」

その姿を見ていると、俺もなんかワクワクしてきた。いやー、初心を取り戻した気がするね。

「ムムー」

「ム?」

「ムームム」

「ムー!」

オルトがエスクに町の説明をしてやっているらしい。オルトがドヤ顔だ。

「はうー。オルトちゃん、可愛いですねぇ」

「だろー? 素直に驚くエスクも可愛いけどなー」

「ですよねー」

「2人って、放っておくといつまでもお互いのノーム褒め合ってそうですね」

チャームが、なぜか呆れたような目で見ていた。