軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

47話 精霊様との再会

アリッサさんたちを精霊の祭壇に案内するため、俺は広場に向かおうとしたんだが……。

「へぶっ!」

何かに足を取られてコケてしまった。顔面強打ですよ! リアルだったら絶対に鼻血が出てるだろう。

「いたた。サクラなにするんだよ?」

俺の足にサクラの鞭が巻付いていた。

「――!」

何やら身振りで訴えているな。自分を指差している。

「何だ? サクラも行きたいのか?」

「――♪」

胸の前で手を組んで、コクコクと頷くサクラ。考えてみりゃ、精霊様はサクラのお母さん的な存在なのかもしれん。

「精霊様に会いたいのか?」

「――♪♪」

正解か。ここまで行きたいアピールしてるんだし、サクラを連れて行ってやるか。という事でお留守番はクママだ。逆にクママが落ち込んでしまったが、サクラが頭を撫でてやったら機嫌が直ったようだった。おお、お姉ちゃんしてるじゃないか。

モンス達の仲が良いのはいいことだね。

「こんばんは」

「いらっしゃい。待ってたわよ」

「一緒に行くのって、ルインさんとメイプルさんでしたか」

早耳猫のメンバーで、武器屋のルインと、農業系の店をやっているメイプルが、アリッサと一緒に待っていた。

「おう、よろしく頼むぜ」

「よろしくー」

「じゃあ、早速パーティを組みましょうか?」

「あ、ちょっと待って。パーティを組まなくても入れるかどうか知りたいから、まずはこのまま行きましょう」

なるほど、そこから検証したいのね。

祭壇までは遠くない。入り口のある橋まではすぐに到着した。ただ、プレイヤーの目を避けるために、機会を窺う。橋の上で固まって世間話とか、むしろ目立ってる気もするけどね。

待つこと20分。ようやっとチャンスが訪れた。

「今なら誰もいないわ」

アリッサさんの索敵スキルで周辺が無人であると確認し、俺たちは行動を開始する。

「よし、行きましょう!」

「本当に水路に入るんですねー」

「足は着くのか?」

水路を見るルインの顔が引きつっているな。水が苦手なのか?

「大丈夫ですよ。一番深い場所でも腰くらいまでしかありませんから」

「なら大丈夫か……」

「でも、ドワーフだからって泳げない訳じゃないでしょ?」

ファンタジー小説なんかだと、ドワーフは泳げないっていう設定はよくあるけど、LJOにそんな設定無かったはずだ。

「多分な。だが、俺は現実でもカナヅチなんだ。こっちで泳げるかどうかも分からん」

あ、そういう事ね。水泳スキルもなく、リアルで泳げないんじゃ、LJOの中でも泳げない可能性はある。

俺は水泳スキル無しでも軽くは泳げたので、リアルスキルの影響はあると思うが。

「クママを連れて来なくてよかったかもしれん」

見た目が動くヌイグルミだからな。水を吸って沈みそうな気がする。いや、大丈夫だとは思うけど。リックは俺の首に巻きついているから問題なかった。

「こっちです」

「ワクワクするわね」

「おお、扉があるな」

皆が橋の下に入ったことを確認し、俺は隠し扉に鍵を差し込む。扉は問題なく開いてくれた。

だが、アリッサさんたちには扉が閉まったままに見えているらしい。なんか俺が何もないところで手を動かしているように見えているようだ。うーん、間抜けな姿だ。

「やっぱり無理みたいですねー」

「じゃあ、パーティを組んでみましょう」

すると、アリッサさんたちにも扉が開いて見えたようだ。やはりパーティを組んでいなくちゃいけないんだな。

「本当に階段がありますー」

「灯はあるのね」

「はい。ただ薄暗いので足元に気を付けて」

階段を下りて、祭壇へと向かう。途中で二股になっているが、祭壇がある右へと進んだ。アリッサさんは興味深げに左の通路を覗き込んでいるな。

「あっちは何があるのかしら?」

「先に進むとさらに下る階段がありますね。その先には進んでないので何があるかは分かりませんが」

「多分、ギルドへ通じてるんだろう」

「でも、気になるわね。βから変更があるかもしれないし」

「じゃあ、祭壇に行った後、階段を下ってみますか?」

「いいの?」

「俺も予定がある訳じゃないんで。ただ、戦闘力は当てにしないでください」

「私たちはこれでもβテスターよ。そこは任せておいて」

いつも町に居るイメージだが、アリッサさんたちはクランメンバーと交代しながらちゃんと攻略も進めているらしい。基礎レベルを聞いたら、当然の如く全員俺より高かった。

そうこうしている内に、祭壇のある部屋の前に到着する。

「ここが祭壇のある部屋?」

「はい。開けますよ」

その扉はやはり簡単に開いた。部屋の中には以前見たのと変わらぬ、巨大な水臨大樹の根と、その根に囲まれる祭壇があった。

「えーっと、精霊様、いらっしゃいます?」

「はい。お久しぶりですね冒険者よ」

「あ、どうも。一週間ぶりです」

「おおー、精霊だ」

「綺麗ですねー」

「私達にも見えるわ」

感動しているアリッサさんたちはすぐに目的を思い出したのか、自分たちでもお供え物を出来るか尋ねている。

どうやら問題ないらしい。

「じゃあ、私はこれを供えるわ」

アリッサさんが祭壇に供えたのは、何かの鱗だった。鑑定すると、レッサー・レックスの逆鱗となっている。

「今入手できる魔物素材の中でも、かなり上位の素材よ。何せエリア3のフィールドボスのレアドロップだからね」

「ええ? いいんですか? そんなすごいもの」

「検証の為よ」

「ではあなたに祝福を授けましょう。これをお持ちなさい」

「これは……アイアンインゴット?」

名称:アイアンインゴット

レア度:3 品質:★6

効果:鉄で出来たインゴット

なんかショボくない? 強そうなモンスターの鱗が、鉄のインゴットに変わっちゃったんだけど。

だが、残念そうに思ったのは俺だけだったらしい。

「す、すごいわ!」

「え? どこが?」

「あのねぇ! アイアンインゴットっていったら、トップ鍛冶プレイヤーの中でも、ほんの一握りのプレイヤーがようやく作れるようになったのよ? それも低品質の物を! それが★6? 誰でも欲しがるわ!」

「おう! これは、楽しくなってきたぞ!」

寡黙なルインが興奮して叫んでいるぞ。どうやらかなり凄い物みたいだな。

「今はまだブロンズ系、カッパー系が主流でアイアン系はほとんど流通していない。ここでアイアンインゴットが手に入ると分かったら、かなりの奴が来たがるぞ。金を積めば手に入るってもんじゃないしな!」

詳しく話を聞いてみると、防具や特殊効果の付いたアイテムを作るには鱗の方が適しているらしい。だが、単純に性能だけを見ればアイアン装備の方がかなり上なんだとか。だがその原材料になる鉄鉱石は、第3エリアのレアモンスターのレアドロップらしく、欲しくても手に入らないのが現状らしい。

興奮冷めやらぬ2人を横目に、メイプルさんが祭壇に近寄る。マイペースな人だね。

「じゃあ、次は私ですー。はい、これー」

メイプルさんが祭壇に置いたのは、俺と同じ高級肥料だった。同じものを供えて、何が貰えるかという検証らしいな。

そして、メイプルさんが与えられたアイテムは、水臨樹の実ではなかった。その代わりに与えられたアイテムは綺麗なピンクの花びらだ。

名称:水臨樹の花弁

レア度:3 品質:★7

効果:合成に使用すると、元の素材の品質を1つ上昇させる。最大で★7まで。変異率上昇。

「へえ面白いですね」

確かに面白そうだ。合成で品質を上げるのは、品質が上がるにつれて難しくなっていくし。俺も欲しいぜ。でも、なんで違ったんだ?

精霊様に聞いても教えてはくれなかったが、アリッサさんたちは初回ボーナスのようなものではないかと推測していた。

「最後は俺か。これを供えるぞ」

ルインが置いたのは普通の銅鉱石だ。多分採掘したのをそのまま持ってきたんだろう。供えるにしても、もう少しましな物があるんじゃなかろうか?

「え? そんなので良いんですか?」

アイアンインゴットを狙えばいいのに。

「最低でも何が入手できるか、調べんといかんからな」

検証の為だったらしい。確かに俺も何が貰えるか気にはなるな。

ただ、ルインに与えられたのはアイテムではなかった。なんと、12時間満腹度が減少しないというバフだったのだ。

「まあ、クズアイテムではたいした見返りはないってことね」

わざわざ8週間に一回しか使えない祭壇に来て、このバフはさすがにないよな。良かった、俺は水臨樹の実が貰えて。あの時高級肥料を持ってなかったら、ルインコースだったかも知れん。

「あ、そうだ。俺も試したいことがあったんだ」

それは従魔がお供えをできるかどうかという実験だ。従魔だってパーティメンバーなんだし、もしかしてと思ったんだが……。

無理でした。さすがに欲張り過ぎだったらしい。

「じゃあ、サクラ。精霊様に挨拶しとけ」

「――♪」

「あら。私の眷属ね。精霊を育むとは、天晴です。ふふ、こちらへいらっしゃい」

「――♪♪」

喜んではもらえてるかな? サクラも精霊様に頭を撫でてもらって、ニッコニコだ。従魔の中ではお姉さんなんだけどな。こうしてみると外見相応の少女に見える。

「その子を連れて、また来てください」

「はあ」

「必ず来てくださいね?」

「わ、わかりました」

それで終わりでした。特別なイベントとか、クエストもない。本当にサクラは精霊様に会いたかっただけらしいな。まあ、喜んでいるみたいだしいいか。

サクラと戯れている精霊様に、アリッサさんが質問をする。

「あの、ちょっと聞きたいんですけど。鍵を持っているユート君に頼めば、誰でもここまで来れるってことかしら?」

アリッサさんの疑問に、精霊様が頷いた。

「ええ、その通りです」

「それって凄いわよ? ここに連れてくることを商売にできるかも?」

さすが商売人だなアリッサさん。発想が凄い。ただ、さすがにその商売は俺には無理かな……。性格的に向いていないと思うし、結構な時間を拘束されちゃうだろうしね。

さらに、精霊様の発した次の言葉でアリッサさんの計画は無理だったと分かる。

「ただし、1つの鍵は所持者以外に5名までしか登録できませんが」

「え? 登録?」

「はい」

精霊様の言葉を聞いて、俺は鍵を確認してみた。鍵を取り出して、鑑定してみる。すると、所持者:ユートの表記の後に、登録者の名前が追加されており、そこにはアリッサ、ルイン、メイプルの名前が記載されている。

「これって、登録解除はできないんですか?」

「できませんね。ですが、複数の鍵に登録することは可能ですよ。祝福を得る回数が増える訳ではありませんが」

ということは、この鍵にはあと2人しか名前を登録できないってことか。

「ごめんなさいユート君」

「まさかこんなことになるとは……」

アリッサさんたちは謝ってくれるが、正直俺ってフレンドもほとんどいないし、連れてくるような当てもない。そこまで残念でもないんだけどね。

「何か代価を払うわ」

「いや、そこまでしてもらわなくてもいいですって」

「ダメよ。情報提供してもらって、損失まで与えちゃったら情報屋の沽券に係わるもの」

「でも、もう情報料の後金で4000G貰っているわけですし」

「それじゃ全然足りないわ!」

ということで話し合った結果、水臨樹の花弁とアイアンインゴットまで貰えることとなってしまった。

まあ、俺だって欲しくない訳じゃないし? 貰える物は貰っておくことにした。なんか逆に得したんじゃないか?