軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

458話 蘇生

モンスたちを引き連れて、ホランドの下へと走る。

「悠長にしてる暇はない! 突っ切るぞ!」

「キュ!」

蘇生薬には制限時間がある。迂回している余裕はなかった。危険覚悟で、ビフロンスの足下を通り抜ける。いやー、スリル満点だね!

名称:蘇生薬

レア度:5 品質:★3

効果:プレイヤー死亡後、9秒以内に使用可能。プレイヤー1人を、HP、MPが最大時の1割で蘇生させる。

9秒以内に使用しなくてはならないのだ。ただ、ホランドはすでに消えているけど、使用するってどうするんだ?

見切り発車で飛び出してきちゃったんだけど……。

そう悩んでいたら、ホランドが死に戻った場所に近づくと蘇生薬が明るく光り、目の前にウィンドウが立ち上がった。そこには、蘇生できるプレイヤーのリストが表示されている。

ホランドと一緒に死んだと思われる他のプレイヤーの名前もあった。名前の横には時間が表示されている。5秒、4秒――。

やべ! これ制限時間か!

「ええ? 白銀さん?」

「くっ! 抜け駆けしようとして失敗した俺たちを笑いにきたんだろ!」

「今回も白銀さんに負けるのか!」

なんか周りのプレイヤーが俺の名前を呼んだ気がするけど、今はそれどころじゃない。蘇生薬の制限時間がきてしまう!

えーっと、どう使えば良いんだ? 音声認証いけるか?

「ホランド蘇生!」

そう叫ぶと、蘇生薬が強く輝き、宙に溶けるように消えた。次いで、ホランドが死に戻った場所に再び彼の姿が出現する。まるで転移するような登場だ。

「ええええ? 蘇生薬ぅぅ!」

「まじかよ! 発見されてたのかっ!」

直後、凄まじい歓声が上がった。蘇生薬が使われたことに驚いているらしい。前線でも未発見だったのか?

やっちゃった? ソーヤ君、もしかして隠してた? すまん、ソーヤ君! みんなの前で盛大に使ってしまった!

ただ、今はレイドボス戦が大事なのだ。というか、真後ろにいるビフロンスが、両腕を振り上げている。

『死ねぇぇ!』

「ヒムー!」

ヒムカがなんとか防いでくれたんだが、攻撃は1発で終わらなかった。2発、3発と腕が連続で振り下ろされる。

なんとかうちの子たちが盾になってくれたが、重い攻撃を受けたせいで、硬直が発生してしまっている。5発目の攻撃は、もう防げそうもなかった。

あ、死んだかも? それでも何とか生き延びる為、杖で受けようと試みたんだが……。

「カッタカター!」

「え? 船長?」

「カタ!」

なんと、海賊船長が俺の前に走り込み、ビフロンスの攻撃を弾いてくれていた。なんで俺を助けてくれたのか分からんが、態勢を立て直すチャンスだ!

俺はモンスたちと一緒に、ホランドたちのいる場所まで後退した。周りにはメチャクチャ強そうなトップ陣が揃っている。凄まじい安心感だね!

「えっと……白銀さん?」

「あ、どうも初めまして。ホランドさんですよね?」

「そ、そうです。蘇生薬を使ってくれたって聞いたんですけど、本当ですか?」

「はい、使いました。それで、必殺技って、まだ使えます?」

「必殺技? あー、発動前にキャンセルされたんで、もう1回やれますけど……」

よっしゃ! 蘇生薬を使った甲斐があった! 思わずガッツポーズしちゃったよ。

「じゃあ、お願いします!」

「……え? いいんですか? というか、なんで蘇生させてくれたんですか? あと、蘇生薬って――」

『ぐるあぁぁぁ!』

ダメだ。ゆっくり話してる暇はない。ビフロンスが再び黒い霧を吐き出したのだ。

「キュー!」

リックがナイス投擲でキャンセルしたが、多少の霧はこちらへ振りかかってきていた。

おいおい、ホランドがまた死んじゃったりしないよな?

そう思っていたら、周辺では全く騒ぎが起きなかった。状態異常が全く発生しなかったらしい。

もしかして、海賊船長が近くにいると、状態異常にかからなくなる?

「話は後で! 今は奴を倒そう!」

「わ、分かった!」

ホランドが俺の言葉に頷くと、再び大剣を頭上に掲げた。

「大剣奥義!」

そう叫んだ直後、白い光の柱が立ち上る。先程までのチャージ状態と同じ姿だ。この状態で30秒も溜めなくてはいけないらしい。

使い辛い技だけど、その分威力は期待できそうだった。なにより、超カッコイイのだ! 黒髪のちょっと影のある王子さまタイプのホランドが、聖騎士チックな白い鎧に身を包み、白い光に包まれている。

もうね、女性陣はキャーキャーですわ。いや、周囲はムサイ男ばっかりで、全然黄色い悲鳴は聞こえんけどさ。そんなイメージだ。

必殺技のチャージはやはりヘイトを集めるらしく、ビフロンスの攻撃がバンバン飛んでくる。しかし、それらがホランドに届くことはなかった。

タンクさんたちは今まで以上に気合が入っているし、うちの子たちや船長までいるのだ。

さらに、南側プレイヤーたちからもこっちに集まってきた者たちがおり、全員一丸となってホランドを守り続けた。

やはり、みんなも必殺技をぜひ見てみたいのだろう。

そして、30秒後。

「シャイニングゥゥセイバァァァァー!」

『ぬがぁぁぁぁ!』

ホランドの振り下ろした光の刃が、まだ3%ほどは残っていたビフロンスのHPを、完全に削りきった。凄い威力だな!

苦労したが、俺たちの勝利だ!

そう思っていたら――。

『くそぉぉぉ! 只ではやられんぞぉぉ!』

倒せてなかった! 本当に少しだけ、見えないレベルでHPバーが残っていたらしい。

『貴様だけでもぉ道づれだぁぁ!』

「え? ちょ!」

ビフロンスがこっちを見ているなーと思ったら、その手が俺に伸びてきた。明らかに俺をターゲットにしている。どうしてだ? どう考えたって、ホランドの方がヘイトを溜めてるだろ!

「ヒムムー!」

「――!」

ヒムカとサクラが俺の盾になるように飛び出した。

「2人とも! 無茶するな!」

イベントブラキオ戦の悪夢がよみがえる。ヒムカもサクラも、俺が不甲斐ないせいで、目の前で死に戻ったのだ。

サクラたちによってビフロンスの巨大な腕は弾かれたが、2人のHPが一気に減るのが見えた。即死ではない。しかし、2人が毒状態に陥ったのが見えた。このままでは死に戻る。

しかし、俺にはもう回復手段が残っていなかった。MPは尽き、ポーション類は使いきってしまっている。

「くそぉ!」

叫ぶことしかできない。せっかく勝利できそうなのに!

だが、今回は前回とは違っていた。大ダメージを受ける2人に対して、周囲のプレイヤーたちから一斉に回復が飛んだのである。

「動画見といてよかった!」

「あの時の二の舞にはさせんぞぉぉ! ヒムカキューン!」

「サクラたんは僕が守るんだなー!」

おかげで、ヒムカもサクラも無事だった。本当に感謝である。

「た、助かった……」

俺がホッと胸をなでおろしていると、リックがアンモライトをビフロンスに向かって投げ付けるのが見えた。

「キュー!」

『くそぉぉぉ!』

アンモライトの光がビフロンスの黒い骨格を白く照らし、そのHPバーが砕け散る。ビフロンスが断末魔の悲鳴を上げながら、崩れ落ちて行くのが見えた。

「キーキュー!」

リックが勝ち誇った顔で、雄叫びを上げる。

「……え?」

「白銀さん! やりましたね!」

「白銀さんのリスが止めを刺したぞー!」

「さすしろさすしろ!」

「……え?」

「キュキュー!」

「「「うおー!」」」

すまんホランド! うちのリックがラストアタックいっちゃったみたいです!