軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

433話 怪魚釣りとイベントモサ

怪魚を狙って釣り糸を垂れる。

「イベントモサが怖いから、できれば早く釣れてほしいなー」

「ヒムー」

「いや、そう言えば、モサの姿が全然見えんけど……」

湖の対岸の方にいるのか? まあ、こないなら楽でいいんだけどさ。

そんなことを考えながらボーッと湖を見つめていると、不思議な光景が目に入ってきた。

対岸に、大勢のプレイヤーが集まっていたのだ。かなり遠いので、何をしているかはよく分からない。ただ、長い棒――釣り竿を持っているのは分かるな。

あんな大勢で固まって釣り? だが、釣りをしているのは20人くらいで、その後ろにいるプレイヤーたちは突っ立ったままだ。だべっている様子もなく、無駄に動く素振りもなく、湖を見つめている。

釣り見学会? それとも何か理由が?

しばらく彼らを観察していると、急にバタバタと動き出すのが見えた。魔術の詠唱をしているらしく、エフェクトが見える。

そして、全員がいきなり湖に向かって攻撃を開始した。魔術や弓だけではなく、投石を行っている者たちもいる。

「うわっ。ド派手だな。でも、何してるんだ?」

いや、今ちょっとだけ背中が見えた。イベントモサだ。奴に攻撃を仕掛けたらしい。

「モサと戦ってんのかねぇ?」

「もしかして、掲示板見てないかんじっすか?」

「え?」

「どもども。お久~」

振り返ると、そこにいたのは青紫色のチャラそうな青年だった。眼の下の星型ペイントも健在である。

「サッキュン!」

「チョリーッス」

トップサモナーにして格闘スキル上級者のプレイヤー、サッキュンであった。チャラ敬礼しながらウィンクしてくる。

相変わらずチャラい。むしろ、装備品のキラキラ具合がアップして、よりチャラくなっていた。

「サッキュンも釣りか?」

「いや、俺はあの集団に参加してるんすよ」

「え? そうなの?」

「まあ、白銀さんを見かけたんで、代表して挨拶に来たってわけです」

「代表してって……。俺に挨拶?」

「そうなんすよ。モサ狩りの目途が立ったのも、白銀さんのおかげっすからねぇ」

「ああ、あの配信か」

「そうそう」

何でもあの集団は、琥珀餌を使ってのイベントモサ狩りを狙っているらしい。

やることは簡単で。まずは普通に釣りをする。そこで、モサが寄ってきたら遠距離攻撃を加え、琥珀餌を垂らす。

そうすることで、普通の釣り→モサ寄ってくる→遠距離攻撃→琥珀餌でイベントモサを追い返す→また普通の釣り、というパターンを確立したらしい。

これで本当にイベントモサを倒せるなら、かなり楽だろう。むしろ、そんな簡単でいいのだろうか?

「白銀さんも一緒にどうすか? 一狩りいっちゃいません?」

「いや、俺は怪魚を釣り上げたいから」

「あー、なるほどなるほど。オッケーっす。もし気が変わったら、あっちまできてくれたら歓迎するんで」

サッキュンがそう言って去っていった。いくら情報の発信源だからといって、準備にも参加せずに美味しいとこだけいただくのは良くないと思うんだよね。

それに、絶対に普通の攻撃だけじゃ終わらんだろう。どこかで何かが起きるはずだ。それに巻き込まれるのも怖かった。

まあ、向こうでモサを引き付けておいてくれるなら、俺たちは釣りが楽になるだろう。

「今の内に怪魚を釣り上げちまおう」

「ムム!」

「フム!」

そうこうしている内に、何十分か経過してしまった。相変わらず対岸ではモサ狩りが続けられている。もう何度攻撃が繰り返されたのか、途中から数えるのを止めてしまった。

「フム! フムムー!」

「ヒムヒム!」

「うん? どうした――って! 引いてる! しかもスゲー強い!」

モサ狩りの様子を見ていたら、いつの間にか俺の竿にヒットしていたらしい。ルフレとヒムカが騒ぐ様子で気づいた。釣り糸が凄まじい勢いで引かれている。

この引きの強さはアンモナイトではないだろう。最低でもシーラカンス。もしくは――。

「よーし! 絶対に釣り上げる!」

「――!」

「ムム!」

「サンキューサクラ! オルトも助かるぞ!」

以前のように水の中に引きずり込まれることがないように、サクラが俺と手近な木を蔦で結んでくれた。

オルトは土魔術で俺の足下を盛り上がらせる。高さは縁石程度だが、これに足を掛ければかなり踏ん張りやすくなるだろう。

「フマ!」

「モグモ!」

気の早い二人は、すでにタモを構えて準備万端だ。掬い上げるのは自分たちに任せろと言っているようだ。

「ぬおおおぉぉ!」

「フーマ! フーマ!」

アイネの応援を背に、俺は怪魚と格闘を続けた。

なんか遠くから凄まじい爆音や「グロオオォォ!」という咆哮が聞こえる気がするが、今は全部無視だ!

「どおおおぉぉりゃぁぁ!」

「モグ!」

影が見えてきた。もうちょっとで湖面に出てくる。普段はクールガイなドリモが興奮して飛び跳ねるほど、そのサイズはデカイ。

これは怪魚で間違いないだろう。

「もう少しで――」

「グロオオオォォォ!」

「え?」

だが、俺の目の前で、信じ難い事件が起こった。

巨大なワニのような口が、俺の釣り糸の先にいたはずの怪魚をあっさりと飲み込んでしまったのだ。それはもう豪快にパクリンチョしてくれやがった。

「グロロォォ!」

「はぁぁぁぁ!?」

イベントモサだった。え? なんで? あっちで戦ってたんじゃないの? どうして?

「ちょ、俺の怪魚ぉぉぉぉぉ!」

「グロォォォ!」