軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

413話 アリッサさんとジャズカフェ

農村の巨大迷路で遊んだ俺たちは、バザールの町へと戻ってきていた。謎のお爺さんから飼育ケースも買えたし、大満足だ。

一回クリアした後も、何回も遊んでしまった。いやー、楽しかったね。

攻略タイム? 前線攻略組は化け物ばかりですよ! 結局、5分を切ることは1回もできなかったのだ。

「さて、アリッサさんとの待ち合わせはこの辺の――」

「ユート君! こっちこっち!」

アリッサさんの声がした方を向くと、人混みの向こうで見覚えのある猫耳がピコピコと動いていた。

「ここって、カフェですか?」

「そうだよ。中には個室もあって、話をするのに適してるんだ。お茶でも飲みながら話を聞かせてよ」

「分かりました。うちの子たちが食べられるような物もありますかねぇ?」

「それはばっちりリサーチ済みよ。ちゃんとモンスちゃんたち用のメニューも充実しているから」

「おー、さすがですね」

ちゃんと、俺に合わせた店を探しておいてくれたようだ。

アリッサさんに案内されて中に入ると、小洒落た感じの落ち着いた内装である。BGMとして微かにジャズが流れていて、誰もが静かにコーヒーを飲んでいる。

自分だけだったら、絶対に入らんだろうな。

「みんな、絶対に騒ぐなよ」

「クマ!」

「ペン!」

「キキュー!」

「ヤー!」

「フマ!」

みんなが一斉に手を上げて、頷いてくれる。でもね、その時に上げた声がもう騒がしいのだ。

「……ドリモ。お前が頼りだ」

「モグッ!?」

「頼むって! な!」

「モグモ~」

拝むように手を合わせて、小声でドリモに頼み込む。すると、ドリモが「は~ヤレヤレ」って感じで肩をすくめつつ、軽く頭を振った。

そして、他の子たちにジェスチャーと声で何やら指示を出し始める。

「モグ。モグモ」

「クマ」

「キュ」

「モグ」

すると、ドリモ以外のみんなが自分の口を両手で押さえたではないか。無暗に声を出さないように、自ら口を塞いだらしい。

途端、周囲でバタンガシャンと音がなった。お客さんがコーヒーをこぼしたっぽい? 俺たちがうるさくしたせいか? ごめんなさい。

それにしても、この黙りますポーズはメッチャ可愛い。スクショ案件だ。

そう思ったのは俺だけではなかったらしい。

「か、可愛いわね」

「でしょ?」

アリッサさんが何故か難しい顔をして、そう呟いた。可愛いと言いつつ、その表情は驚愕? 戦慄? とにかく、喜んでいるようには見えない。

「なんか、顔怖いですよ?」

「あっと、ごめんなさい。私だけが可愛いモンスちゃんたちの姿を見たって知られたら、後で絶対に文句言われるだろうなーって思っただけだから。気にしないで」

「文句、ですか?」

「ええ。あなたの従魔にはファンが多いから。私の知り合いにも沢山いるわよ。ユート君も知っているとこだと、アメリアとかウルスラとかアシハナとか」

「あー」

確かに彼女たちなら、アリッサさんに「ずるい!」と言いそうだ。

「スクショ、いります?」

「いいの?」

「ええ。後で送っておきますね」

「ありがとう……」

なんてやり取りをした後に、俺たちは個室で向かい合った。モンス達は食事中なので静かだ。こいつらが飽きて遊び始める前に、ちゃっちゃと用事を済ませてしまおう。

「えーっと、お伝えしてた以外にも、いくつか新しい情報があるんですけど、いいですか?」

「……くっ! 予想はしてたけど……!」

「え? アリッサさん?」

急に真顔で俯いて、何やら呟いている。誰かと話してるのか? ああ、情報を追加で買い取っていいかどうか、クランメンバーとコールで話しているのかもしれないな。

「あの、大丈夫ですか?」

「ええ。大丈夫よ! ちょっとアレしそうになっただけだから」

アレ? まあいいや、クランの隠語か何かだろう。

「まずは、アリッサさんに連絡した後の話をしますね」

「ええ、きなさい!」

俺はテーブルマウンテンの頂上で池を発見したことや、その池で様々な古代生物を見つけたこと。あとは周辺で琥珀などが採掘できたということを、包み隠さずアリッサさんに語った。

こっちに戻ってきた後の話もしたぞ。ヒマワリの迷路の謎のお爺さんに、琥珀などが本島でも採取できそうだという情報などだ。

妙に悟ったような表情のアリッサさんは、うんうんと頷きながら話を聞いてくれる。全然驚いた様子はなく、まるで菩薩のような微笑みが崩れることはなかった。

意外と反応が薄い。もしかして、俺が思ったほど大発見じゃなかったかな? アンモナイトやシーラカンスは大発見かと思っていたが、実は他でも発見されているのかもしれない。

「――って感じです」

「池に、古代生物に、琥珀にアンモライトにオオコンニャクに転移装置に――」

「アリッサさん?」

「う……」

アリッサさんが笑顔のまま、固まったかと思うと、プルプルと震え始めた。あれ? 妙に顔色が悪い気がするけど……?

「うみゃー! 分かってたけどーっ!」

おお、きました「うみゃー」。最近、アリッサさんはこの叫びがお気に入りみたいだ。俺が情報を売りに行くと、必ず叫んでいる。

猫獣人のロールプレイの一環なのだろう。最近は俺も、この叫び声を聞くと情報を売りにきたって感じがするのだ。

ただ、出来ればそろそろ普通の会話に戻りたいところだ。でも、ロールプレイヤーに「普通に話そう」っていうのはマナー違反かな?

ちょっと迷っていたら、アリッサさんが急に真顔に戻った。

「ごめんなさい。取り乱したわ」

さすが、切り替えが凄いな! でも、うちの子たちはその様子を見てちょっとビビっている。多分、急に叫んだりするのが怖いのだろう。地面に落ちているセミと一緒なのだ。

その後、少しの話し合いの結果、★5の琥珀や骨付き肉などのアイテムをいくつか売ることになった。色々な検証に必要であるらしい。

「それじゃあ、これが支払いね」

「ありがとうございます」

なんと、アリッサさんから大量に情報を買っても、8万イベトも手に入ってしまった! こんなお高くていいのかと思ったが、今はイベント中だ。順位を少しでも上げるためにも、貰える物は貰っておこう。

それに、8万くらいじゃそこまで大金じゃないのかもしれない。アリッサさんが全然焦った様子がないのだ。

イベントブラキオの撃破報酬が6万イベトだったが、考えてみたら俺がソロで勝てた相手だ。実はそこまで強いボスじゃないのかね? きっと、前線組はもっとヤバいボス相手に何十万イベトも稼いでいるんだろう。

「俺ももっと頑張らないとな!」