軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

411話 西の農村

西の農村は、非常に長閑な村だった。村内の至る所にチューリップやヒマワリ、アジサイやラベンダーなどが咲く季節感のなさと、村の中を駆けまわる犬や猫たち以外は、ごく普通の村である。

まあ、今は多くのプレイヤーがその犬猫たちを撫でまわしながら、至る所でだらしなく笑っているという、ちょっと異様な光景が広がっているけどね。

「アリッサさん情報だと、確かこの辺にあるはずなんだが……」

「クマー!」

「モグモ」

「おお! 見つけてくれたか! さすがだな!」

俺が探していたのは、村にあるという香水屋であった。花から作った香水が売られていると聞いたのだ。

あとは雑貨屋もあり、そこでは植物標本が販売されているらしい。綺麗な瓶の中に綺麗な花などを入れた、ハーバリウムってやつである。

植物標本瓶というアイテムが売られており、島で採取した花などはこの中に入れて飾ることができるようだ。

飼育ケースの花版ということなんだろう。

「クマクマ!」

「モグ」

クママとドリモが、扉の前でフンフンと鼻を動かしている。どうやら匂いで探し当てたらしい。さすが動物の鼻だ。

「確かに、いい香りがしてくるな」

中に入ると、花のような香りがより一層強まる。現実だとこれだけ強い匂いを嗅ぐと不快に感じるだろうが、ゲームの中では心地良いから不思議だ。

ハーブティーと同じで、現実とは感覚が多少違っているからだろう。

店の中にはたくさんの種類の瓶が置かれている。アールデコ風の瓶から、装飾の少ないシンプルな物まで、色も形も様々だ。

それを見ているだけでも楽しいのだが、なんとここから好きな形の瓶を選ぶことができるらしい。そして、好きな香水と組み合わせることで、オリジナルの香水瓶となるというわけだ。

正直、香水とか興味はない。だが折角きたんだし、1つ購入してみようかね?

「瓶は……」

「ヤー!」

「キュ!」

「何だよ? ファウはこっち推しで、リックはこっちがお勧めってことか?」

「ヤ!」

「キキュ!」

瓶を吟味していると、ファウとリックがそれぞれ瓶を抱えて戻ってきた。自分の一押しの瓶を俺にお勧めしているらしい。

ちびっ子たちが、自分と同じくらいのサイズの瓶を頭上に掲げる姿は、今にも落としてしまいそうでハラハラするぜ。

「ふむ……。こっちは妖精の絵柄で、こっちの図案はリスか?」

こいつら、自分と関係ある絵が描かれた瓶をしれっと持ってきやがったな。しかもファウたちの行動を見て、他の子たちも瓶を選び始めてしまった。

「フマ……」

「ペン?」

「クックマ!」

その真剣な表情を見ていると、選ぶなとは言えなくなってしまう。仕方ない、気が済むまで選ばせるか。

10分後。

「……では、発表します! 瓶-1グランプリ優勝は――」

「モグ」

アシスタント役のドリモが、1つの瓶を頭上に掲げる。

「ドリモの選んだ、黄色の香水瓶です!」

「ペペン!」

「クマー!」

クママたちが納得いかないと抗議の声を上げるが、仕方ないじゃないか。ドリモ以外の奴らは、全員が自分に似た絵が描かれた瓶を持ってきたのだ。まさかペンギンの瓶まであるとは思わなかった。

それに対して大人のドリモは、江戸切子のような幾何学模様の描かれた瓶を持ってきたのである。他のを選んだら贔屓っぽくなるし、最初から選択肢などなかったのだ。

「じゃ、これに入れる香水は――」

「ヤー!」

「フマ!」

「ちょっとまてー! 今度はもう選ばなくていいから! 俺が決めるから!」

もう1回チャンスがあったとばかりに飛び出していこうとしたモンスたちを、慌てて引き止める。

次も選ばれなかったら本格的に拗ねるやつが出そうだからな。

そんなこんなで従魔たちに引っ掻き回されながら、俺は村の店を回っていった。結局、ハーバリウムは全員が選んだ分を買うことになってしまったぜ。

まあ、香水よりはこっちの方が興味があるからいいんだけどね。透明な液体の中に色とりどりの花が浮かぶ植物標本は、見ているだけで癒される。

「買い物も済んだし、例の場所に行きますか!」

ここは香水や動物で有名になりつつある村なのだが、実はそれだけの場所ではない。情報に従って村の中心部に向かうと、その様相が一変した。

「おー、話に聞いてた通りだけど、改めて目にするとスゲーな!」

「モグー」

「ペンー」

俺たちの目の前には、背の高いヒマワリが一面に咲き誇る小高い丘があった。ヒマワリは俺たちの身長などよりも遥かに高い。何せ3メートルオーバーだ。

その丘を上から眺めることができる見晴台が設置されており、俺たちはそこからヒマワリの丘を見ていた。

うちの子たちも手すりに張り付いている。モンスでもこの光景は感動するらしい。普段はクールなドリモでさえ、少し興奮気味に見えた。

ペルカも目を輝かせているな。手すりから頭を突き出して、ジッと花畑を見下ろしている。

「じゃ、このまま挑戦するか」

「ペン!」

「クマ!」

実はこの丘、ただの花畑ではない。なんと巨大な迷路になっているのだ。参加費は無料で、踏破するとジュースがもらえるらしい。

食料は間に合っているんだが、普通に面白そうだからね。ぜひ挑戦して見たかったのだ。

「目指すは最速タイムだ! いくぞ!」

「ヤヤー!」

「キキュー!」