軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

40話 熊? 蜂?

孵化を待ち始めて1時間後。

ハーブティーの実験も終わってしまい、今はどんぐりの殻を剥いて水に晒していたところだ。リアルだと1日置けばいいらしい。

卵の亀裂はすでに9割ほどを突破し、孵化目前だ。

ゲーム内掲示板を確認してみたが、孵化に立ち会う必要性は未だに議論されている最中だった。

関係ないと言う者もいれば、マスクデータで存在する愛情度に関係するのではないかと言うプレイヤーもいた。まあ、余程急いでいるんじゃなければ、立ち会う方が良さそうな感じではある。

「ム!」

「おお、生まれるか?」

オルトの声に我に返る。卵に視線を戻すと、ちょうど亀裂が卵を一周したところだった。卵と孵卵器が青白い光を放つ。

「眩し!」

思わず目を覆ってしまう。それにしても、どんなモンスが生まれるのか? ハニービーとリトルベアの卵だからな。蜂か熊か。それとも全く違う何かなのか。

光が収まると、卵の殻と孵卵器は光の粒となってキラキラと輝きながら消滅していった。残されたのは、1匹のモンスターだ。

「熊、だな……」

だが、リトルベアか? アミミンさんのページで紹介されていたリトルベアは、茶色い子グマの姿をしていた。

だが、目の前でこちらを見上げている円らな瞳の熊は、派手な黄色の体毛だ。黄色い熊と言っても、「ハチミツ食べたいなー」とか言いそうなメタボ熊ではなく、完璧にテディさんである。黄色いテディベア。それが卵から生まれたモンスターの姿であった。

大きさはオルトよりちょっと大きい程度かな。熊とはいえ、前衛を任せられそうには見えないが……。

『従魔術のレベルが上がりました』

『使役のレベルが上がりました』

へえ、卵を孵すと経験値が入るのか。まあ、ある意味テイマーとして一番大きな行動だしな~。でも、これで従魔術はLv10だ。使役できるモンスターの数が1増えて5体になったぞ。

それに、従魔術がLv10に上がると、モンスター・ヒールという、自分の従魔限定の回復術が使えるようになるのだ。サクラとオルトの壁がより硬くなるね。

おっと、今は目の前の黄色いテディベアのが重要だ。

「撫でてもいいか?」

「クマー」

そっと触れたその毛並みは、完全にヌイグルミだった。フカフカで、リックとはまた違った気持ちよさがある。

「おおおお、新たなモフモフがっ!」

「クーマー」

すっげえ可愛いな。でも、戦闘ができるのか本当に不安になる外見だな。とりあえず鑑定をしてみよう。

名前:未定 種族:ハニーベア 基礎Lv1

契約者:ユート

HP:27/27 MP:18/18

腕力10 体力8 敏捷5

器用8 知力4 精神3

スキル:愛嬌、大食い、嗅覚、栽培、爪撃、登攀、毒耐性、芳香、養蜂

装備:なし

未見の魔物だった。ハニーベア? ハニービーとリトルベアのカップリングだからか? 黄色くて熊で養蜂って、完璧狙っているとしか思えんが。

だが、悪くない。前衛もこなせるステとスキルな上、生産も出来るっていう事だからな。

「クマー?」

「お、何だ?」

「クマクマ」

「ムム」

「――!」

「キュキュ」

何やら従魔たちが訴えてくるな。特にクマは俺の手にそっと自分のヌイグルミハンドを添え、じっと見上げてくる。何かを訴えているようだ。

「うーん? どうした」

「クックマ!」

次は何やら怒っている? ああ、そうか。

「もしかして名前か?」

「クマ!」

「うーん。そうだなー。ルーズ、ウィニー」

どうするか。こんな可愛いヌイグルミが生まれるとは思ってなかったからな。熊用に考えていたアカカブトという名前が使えん。

「――よし、お前の名前はクママだ!」

「クマ!」

おお喜んでるな。そのまんまだって? 良いんだよ、名前なんてインスピレーションなんだし。俺が気に入った名前が一番だ! だって俺が一番名前を呼ぶんだし。

「よしよし、改めてよろしくなクママ」

「クーマ~」

俺は頭を撫で、その後は全身を撫でていく。クママは撫でられるのが嫌いではないのか、仁王立ちで撫でられるがままになっていた。

しかしモフモフだな。リックが短毛でフニフニなビロードタイプのモフモフだとすると、クママはやや毛が太めののタオル地っぽさのあるモフモフだった。

リックと同じく、お日様の匂いがする。よくいうお日様の匂いがダニの死臭だという話は忘れる。ここはゲームの中なのだしね。

「そい!」

「クマ?」

モフモフしている内に我慢できなくなった俺は、クママをコロンと転がした。腹を上に向けた状態で、首を傾げるクママ。

「か、可愛い」

辛抱たまらんのだ! 俺はクママの黄色い腹毛に顔を埋めた。

「フスーフスー」

「クマママ?」

「ああ、至福だ……」

やばい、これはハマる。ケモナーの気持ちが分かってしまいそうだ。

「ム」

「――……」

「キュ」

はっ! 少々テンションが上がり過ぎた! オルト達が悟ったような目で俺を見ている。

やばい、主人としての威厳が……。

「さ、さーて! クママのスキルに養蜂があるし、ちょっと情報を仕入れにいきますか!」

「ム……」

「――……」

「キュ……」

なんとか誤魔化せ――てないな。ああ、みんな! そのジト目はやめて! 高性能なAIが今だけは恨めしい!