軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4話 畑入手

俺は再びログインした。

ログアウトしたベンチで目が覚める。

「オルトは……いるな。よしよし」

「ム……」

「どうした?」

「ムムー」

オルトが、しきりに頭を下げている。まるで謝罪するかのように。

「お前、さっきの戦闘のこと謝ってるのか?」

「ム」

「あれは俺が悪かったんだ。お前の適性を見極めもせず、戦闘に突っ走った俺が悪い」

「ムムム」

「もう謝らなくていいって」

「ム?」

「お互いさまってことで。な?」

「ムッ!」

オルトは分かったとでもいうかのように、大きくうなずくと、俺の膝をポンポンと叩いた。

「ふう。ステータスは異常ないな……いや、満腹度が減ってるか」

これが0になると、ステータス低下と、継続ダメージが入るようになってしまう。なので、ゲーム内でも食事が必要だった。初期アイテムの携帯食料を取り出して齧ってみる。

「不味い! 味もないし、固いし」

満腹度も20%しか回復しないし。

「早く他の食料を手に入れないとダメだな」

それも速やかに。テイマーにはモンスの食事用に料理スキルがあるからな、材料さえあれば作れるだろう。

「あ、そうだ。お前もこれ喰っておけよ?」

「ム!」

オルトには蜜団子を進呈だ。これはテイマーの初期アイテムで、モンスター用の食事だ。睡眠を必要としない使役モンスターだが、毎日1回、モンスターに食事をさせないとステータスの低下がある。忘れないようにせねば。

「よし、じゃあ行くか。戦闘はダメでも、お前が活躍できることはいっぱいあるんだからな?」

「ム?」

俺は、南区のはずれに向かった。マップでは、農業地区とあったからだ。そこには一面の畑が広がっていた。ここは、ファーマー系のプレイヤーが畑を買って、実際に栽培を行うことができる場所らしい。

もちろん、俺の目的も畑だ。

「あそこが農業ギルドだな」

畑の真ん中に、冒険者ギルド並ではないものの、そこそこ大きな建物が立っていた。紛れもない、農業ギルドだ。獣魔ギルドよりも先に農業ギルドに来るとは思ってもみなかったぜ。

「すみませーん。畑が欲しいんですけど?」

「おう、よく来たな。ただ、お前さんはギルド員じゃないみたいだな。畑は、ギルドに登録しないと買えないぜ?」

窓口のおっさんNPCが教えてくれる。

なるほど。まあ、それはそうだよな。今後も利用するだろうし登録しておいた方が良いだろう。

「じゃあ、登録します」

「あいよ。じゃあ、ステータスウィンドウをかざしてくんな」

「はい」

「――よし、登録完了だな。クエスト掲示板はあそこ。受付窓口はあそこだ」

登録はあっさりとしたものだった。まあ、ゲーム内だし、書類を書かされるとは思っていなかったけどさ。

「じゃあ、改めて畑が欲しいんですけど?」

「グレードはどうする?」

「グレード?」

「おう。土の質や施設によってグレードが変わるぜ」

NPCのおっちゃんが、地図を出して、詳しく説明してくれた。農業系のプレイヤーがまだそれほど多くないので、畑は大体希望通りの場所が買えるだろうという事だった。

お金を払えば買った畑をグレードアップもしてくれるらしい。朗報だ。なら、よく吟味しないとな。

最も安いのは1面2000Gから。グレードアップの度合いによって3000G、6000G、10000Gとなる。まあ、10000Gは論外だ。なんか、納屋みたいな小屋も付くらしいけど、とても手が出ない。

一番安い畑は、特に何もいじらない普通の畑だ。土が悪くて作物の生育が遅く、質も下がってしまう。

「となると、3000Gなんだよな」

6000Gにも足りないしね。だが気になるのはその格差だ。さすがに倍違うだけあって、6000Gの畑は非常に優良だ。土が良いらしく、作物の育ちが大きく違うんだとか。また、初回サービスで井戸を設置してくれるらしく、それは魅力的だ。

「どう考えても、6000Gの方が良いんだが」

今の手持ちは3000G。やはり3000Gの畑しかないか……。いや、待てよ。ここで妥協するのか? 俺は農耕系テイマーとして生きていくことを決めたんじゃなかったのか?

ならば不必要な物を売ってしまい、資金を作ればよいのだ。

「少し待ってもらえますか?」

「いいぜ。でも、早くしないと良いところは売れちまうかもしれねーぜ?」

「急いで戻ってきます。ちなみに、この辺で一番近い道具屋は何処です? 武具屋でもいいですが」

「じゃあ、通りを出て少し北に行ったところに万屋があるぜ。農具を扱ってるんだが、薬や武器も少し置いてあったはずだ」

「ありがとうございます!」

俺はダッシュした。オルトは短い足で難なく付いてくる。むしろ俺より速いか? さすがに俺よりも敏捷が高いだけある。

「すいません。売りたいんですけど」

「はーい。いらっしゃいませ」

万屋の店番である、年配の女性に話しかける。とりあえず売れそうなものは……。

「これ、売れますか?」

「少々お待ちください」

俺がカウンターに提示したのは、初期ボーナスで獲得した黒檀の杖だ。特殊な能力はないが、魔力をアップさせてくれる杖である。

「これなら、1050Gで買い取らせていただきますが?」

全然足らん! となると、次に売るべきは……。

『胴体防具の装備が外れます。よろしいですか?』

「構わん」

俺が次に提示したのは、銀糸のローブだ。装備がないと言いつつ、アバターには服が着せられている。裸じゃなくて良かった。女性もターゲットにしているゲームだし、当たり前だが。まあ、防御力はゼロだけどね。

「これは2180Gで買い取らせていただきますが?」

よし、ノルマ達成だ。オルトの能力を底上げしてくれる獣使いの腕輪は売りたくなかったから、本当に助かった。

「両方売ります」

「では、合わせて3230Gですね」

アイテムが店員さんによってしまわれる。するとチャリーンという音が響いた。ステータスウィンドウを確認すると、ちゃんと所持金が6230Gに増えている。

俺は再びダッシュした。今度は農業ギルドへ急いで向かう。

「すいません! 畑ください!」

「はいよ。で、どこのが欲しいんだい?」

「場所は広場から近くて、冒険者ギルド、農業ギルド両方に行きやすいと嬉しいです」

「おう。ならここだな」

おっさんが地図でおすすめの場所を教えてくれる。確かにここなら立地が完璧だ。

「じゃあ、ここで。グレードは6000Gでお願いします」

「ありがとうよ」

チャリーンという音がまた聞こえた。所持金が残り230Gだ。

「場所は地図にマッピングしておいたぜ」

なるほど。案内はしてくれないと。

「あの、畑にまくための種とかって、どこで買えますかね?」

「種なら、うちでも扱ってるぜ」

「見せてください」

そこであることに気づいてしまった。金、足りるか? そう思ったが、おっさんに見せてもらった2種類の種は両方とも100Gだった。

「食用草の種と、傷薬草の種だな? 2点で、200Gだ」

100Gずつで買ったのは、5粒入りの種袋が2つだ。携帯食の原料になる食用草と、傷薬の原料となる傷薬草である。傷薬は初期だけ使う、ポーションの下位薬だった。下級ポーションの半分ほどの回復量だが、序盤では便利だ。

残り30Gか。どうせだから何か買っちゃおうか? そこで目についたのは肥料だった。

「これは?」

「畑にまくと植物の栽培にボーナスが付くぜ。効果は5日間だ」

「ほう。じゃあ、これを」

「おう、畑1面分で30Gだ。ありがとうよ」

これで完全に一文無しだ。初日から何やってるんだろうな俺。なんか楽しくなってきたぜ!

「さて、畑に行くか」

「ムムッ!」

畑は本当にすぐそばだった。歩いて3分もかかっていない。

「おお、畑だねぇ」

「ム」

「頼むぜ、オルト」

「ム!」

オルトが自分の胸をドンと叩く。これは完全にわかる。任せろ! だろうな。

「畑は1面につき、20個まで作物を育てられるわけか」

今ある種は食用草が5粒。傷薬草が5粒。計10粒だ。うん、畑が余ってしまうな。

「そうだ。これを植えられないか?」

さっき死に戻りしたときの唯一の戦利品。薬草だった。これを畑で栽培できたら、かなり便利なんだが。

「ムムムームゥムムー」

ポン

俺の目の前で、オルトが持っていた薬草が消えた。代わりにオルトの小さい手の中には、種が2粒残されている。鑑定してみると、薬草の種だった。

「おお! 今のが株分スキルか!」

「ムームムー」

オルトが念じるように呟くと、足元の土が盛り上がった。

「ああやって土魔術を使うのか」

オルトはそのままクワでザクザクと土を掘り起こし始めた。オルトは作ったばかりの畝に指でチョコンと穴を開けると、株分で生み出した種をまいていく。

「ほほう。見た目も完全に農業だな」

土をかぶせてポンポンと軽くたたき、井戸から水をくんできて、上から撒く。うん、魔法的な感じが一切ないな。大丈夫なのか少し不安になるが、農業スキルもあるんだし大丈夫だろう。

そう思ったら――。

「はぁ?!」

「ムッ?」

「いや、驚かせてすまん。でも、もう芽が出るのか?」

「ムー」

自慢げに胸を張るオルトの頭を撫でながら、俺の視線は畑に釘づけだった。

なんと種を植えてからほぼ一瞬で、新芽がピョコンと顔をのぞかせたのだ。いくら何でも早すぎないか?

だって、さっき見た農業掲示板には種を植えてから芽が出るまで最低24時間かかると書いてあったのだ。それが一瞬? どういうことだ?

「オルトのおかげなのか?」

「ムム」

やはりそうらしい。農耕スキルが高いのか、栽培促成exが思った以上のスキルだったのか。はたまた土魔術で何かしているのか。

ともかく、オルトがいてくれたら畑は大丈夫そうだな。と言うか、24時間が一瞬とか今後が楽しみになってきた。

「オラ、ワクワクしてきたぞ!」

もっと草があれば、さらに畑で栽培出来るのだろうか?

「外で採取か?」

待てよ? とんでもないことに気づいてしまった。

俺のペナルティなしの死に戻りは、まだ2回残っている。ならば、とにかく採取しまくればいいんじゃ? 死に戻っても、手に入れたアイテムはなくならないし。むしろ、手早く町に戻ってこられる、簡易転移だ! ペナルティなしのデスルーラがあと2回可能ってことか。

ワイルドドッグに噛み殺された恐怖はまだ残っているが、大丈夫だ。やってみせる。

まあ、無謀な挑戦の前に聞き込みだけどな。俺は農業ギルドで何か情報が得られないかと考えた。窓口のおっさんに、畑で育てられる草の種類を聞いてみる。

「農耕のレベル次第で、どんな草だって栽培できるぜ!」

なるほど、オルトならこの辺の草は問題なさそうだ。ならば草採取弾丸死に戻りツアーの決行である。

「オルト。畑は任せたぞ。俺は、仕入れに行ってくる」

「ムム!」