軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

394話 しつこいティラノさん

「ガオオォォォォ!」

「くそっ! まだ追ってくるか!」

イベントラプトルをやっと倒したと思ったら、今度はイベントティラノだよっ!

ただ、曲がりくねった坂道が走り辛いらしく、俺たちとティラノの距離はほとんど縮まっていなかった。それだけが唯一の救いだろう。

それにしても、マジでどうしよう。

このまま坂を上りきったとしても、そこはイベントブラキオの鎮座する広場だ。前門のブラキオ、後門のティラノ。どっちにしろ死地というわけだ。

いや、待てよ。もしかして肉食恐竜と草食恐竜だったら――。

「ガアアアアアァァ!」

「うわっ!」

俺の真横を何かが凄まじい勢いで通り過ぎて行った! よく見ると、それは一抱えもある岩だ。

「こんな攻撃もあるのか……!」

ティラノが前足を使って崖を叩き、砕かれた岩がその勢いで飛来したらしい。

「仕方ない! このまま広場に突入するぞ!」

「ム?」

「あとはもう、その場その場で判断するしかない!」

ぶっつけ本番。出たとこ勝負。とにかく、やれるだけやってやる! それでダメなら死に戻るだけさ! 延滞料金をこれ以上支払わなくて済むんだから、むしろ望むところだ!

まあ、あまり怖い死に方は嫌だけど。ティラノにパックンチョされるのとか、ブラキオの巨岩のような足でメキョッと踏みつぶされたりするのはノーセンキューである。

「広場に入ったら、岩の陰に隠れるんだ!」

「フム!」

さて、どんなことが起きるかな?

理想は、ティラノとブラキオが潰し合う事。

最悪は、両者に追い回されること。あとは、ボス戦扱いになって、閉じ込められるのも嫌だな。

「見えた! 広場だ!」

「ムッムー!」

「ペーン!」

俺たちは最後の力を振り絞ると、躊躇せずに広場に駆け込んだ。そのまま近場の岩へと駆け寄り、そのまま影に身を潜める。

「はーはー……。どうだ?」

「――」

「フムー」

息を整えながら、ティラノの様子をうかがう。

「ガルルル……」

俺たちを見失ったか? 入り口で足を止め、しきりに周囲を見渡している。鼻がヒクヒク動いているところを見ると、匂いを嗅いでいるようだが……。

「ガオオオ!」

「げぇ! 見つかった?」

ティラノの顔がこっちを向いた。直後、凄まじい勢いで駆け寄ってくるではないか。完璧に発見されていた。どうやら嗅覚に優れているようだ。

「走れ走れ! こうなったら、ブラキオに突撃だっ!」

「ペン!」

「モグッ!」

「あ、でも攻撃するんじゃないぞ? ティラノを擦り付けるんだ!」

「ヒムー!」

俺たちは岩の陰から飛び出すと、最後の賭けに出るために全力で走った。

ティラノのちょっと生臭い口臭を背中に感じながら、昼間にブラキオがいた場所へと逃げ続ける。

「いたっ! 寝てるのか!」

ブラキオは広場の中央に座り込み、微動だにしなかった。一見すると巨大な灰色の岩に見える。

これはチャンスなんじゃないか?

「一気に出口に向かって走れ!」

「――!」

俺たちは寝息を立てている巨大恐竜の脇を通り抜けると、テーブルマウンテンの頂上へと通じる道へと向かう。

そして、運命の女神は俺たちに微笑んだかに見えた。

「ガオオオオオォォ!」

「ブモオオォォ?」

ティラノがターゲットを変更して、ブラキオに襲いかかったのだ。折り畳むように体に乗せられていた長い首に、ティラノが巨大な口で噛み付いているのが見える。

このまま広場を抜けることができたら――。

だが、運命の女神は性悪だった。助かったと思ったら、即ピンチですよ!

「何で急にボス壁が!」

あと数メートルで広場の出口と言うところで、突如出現した透明な壁が、出口を塞いでしまったのであった。

逆側を振り返ると、入り口も同様に微かに光るボス壁によって封鎖されているのが見える。

急にボス戦が始まった? なんでっ?

「もしかして、ブラキオが起きたからか?」

「ブモオオオ!」

「ガオオオ!」

巨大な2頭が争っている振動が、俺たちの足下をグラグラと揺らす。これは、マジで全滅の危機なんじゃないか?

あんなのに巻き込まれたら、俺たちなんて一巻の終わりだ。

「み、みんな! 少しでも離れるぞ! 巻き込まれるな!」

「モグ!」

「フムー!」

大慌てで、争う2匹から距離を取る。

とはいえ、そう大きくはない広場だ。一番遠い壁際に移動しても、恐竜たちとの距離は精々40メートルくらいだろう。

奴らにとっては、そう遠い距離ではない。安全とは言い難いのだ。

いっそ、玉砕覚悟で攻撃に転じるか? だが、地響きを立てながら暴れるティラノとブラキオを見てしまうと、その勇気も出なかった。

「こうなったら、少しでも生き延びて、戦いを見届けてやる」

というか今気付いたけど、メッチャ迫力のある動画が撮れそうだった。せいぜい、長く撮ってやろう。