作品タイトル不明
386話 古代の島
巨大トンボを追いかけること10分。
俺たちはついに虫取り網で捕獲することに成功していた。
「とったぁー!」
「ムッムー!」
「偉いぞオルト!」
まあ、捕まえたのはオルトですが。
ああ、俺たちが使う虫取り網は、専門家が使うような大きいタイプだ。中型犬サイズでも捕獲できるだろう。これが、子供用のちゃちな虫取り網だったら、翅が外に飛び出てたかもな。
超巨大トンボが翅を大きく振るわせて抵抗する姿は、凄まじく迫力がある。いやーこれは中々テンション上がるね!
「はっはぁ! メッチャデカいな!」
「ムー」
「よし、そのまま網をかぶせておけよ?」
「ム!」
オルトに網を抑えておいてもらいつつ、俺は中にそっと手を入れた。
「……噛まないよな?」
「ムー?」
「……ええい、ここまできて、何ビビってるんだ! 男は度胸!」
そのまま俺は巨大トンボ――メガネウラの胴体を掴むと、そのまま一気に網の中から引きずり出した。
ブブブブブブ!
翅がバイブモードのスマホくらい激しく振動している。体も凄まじい勢いで蠢くが、さすがにもう逃げられないのだ。あと、噛んではこなかった。よかった。
「オルト、籠を頼む!」
「ムー!」
「よし、このまま入れて……蓋を閉める!」
「ムム!」
捕獲完了である。土を敷き、シダや枝を入れた最大サイズの大型飼育ケースの中で、メガネウラがその羽を休めている。最大サイズの飼育ケースは、熱帯魚用の水槽くらいの大きさがあった。
そもそも、このサイズの巨大網と巨大ケースが売っている時点で、それに見合ったサイズの獲物がいると、予想しておくべきだった。
中で暴れまくったらどうしようかと思っていたが、どうやらケースに入れると落ち着く仕様になっているらしい。さすが飼育のためのケースだな。
「カッコイイなぁ」
「ムー」
オルトと一緒に飼育ケースを覗き込む。ヤバい、童心に帰ってしまうぜ。久々に虫取りなんてしたからか? 小さい頃、友達と一緒にセミやバッタを捕まえたことを思い出した。
「これ、インベントリには――仕舞えるな。よかった。持ち運びも可能か」
「ムー!」
「よしよし、他にも探してくれよ。たくさん捕まえるからな!」
「ム!」
そのまま巨大トンボを捜して砂浜を歩く。
この砂浜、両サイドに切り立った崖があり、それほど広くはないのだ。そんな砂浜を端から端まで歩いてみると、途中に不思議な物を発見していた。
トンボじゃないよ? そもそも、生き物ではない。
それは、砂浜と森の境界に、静かに鎮座していた。
「石碑? いや、文字っぽい物はないか。ただ、絶対に人工物だよな?」
「――?」
形は、四角柱。高さは俺の胸くらいだ。一辺は30センチくらいかな?
白い石材なのだろうが、今は元々鼠色だったのかと思うほどに黒ずみ、下半分は分厚い苔で覆われている。
そして、柱の一番上には丸い窪みがあった。何かを嵌めるっぽいかな?
ゲーム的に考えれば、キーアイテムをここに置くと何かイベントが進むのだろう。だが、心当たりはない。
イベント中に丸いアイテムなど手に入れていないのだ。
「他にトンボもいないし、森に入って見ないとダメか。この台座のヒントも探さないとダメだし」
「――!」
「よし、森に突入だ――」
「フムムー!」
だが、先程のヒムカに続き、再び俺の決意表明を遮る声があった。
「ルフレ。どうした? メガネウラがいたのか?」
「フムー! フム!」
「海?」
ルフレがしきりに海を指差している。だが、そこには何も――いや、デカい影が海中を泳いでいる。
こっちに向かってくる様子はないが、浜の近くの海中を悠然と横切っていた。もしかして、俺たちを襲ってきた例の謎の怪物か?
息を飲んでその影を見つめていると、その影が濃くなっているのが分かった。どうやら、さっきよりも海面に近づいているようだ。
そして、見守る俺たちの前で海が大きく波立ち、海面を突き破って巨大な影が姿を現した。
「ギシャアア!」
「えええええ? まじ?」
「フムムー!」
一見すると、巨大な海蛇が海中から飛び上がったかのように見える。
だが、そうではなかった。
そいつには、巨大な胴体があったのだ。フォルム的にはトドやアシカに近いだろうか。その胴体から、蛇のような長い首が生えていた。
「首長竜……?」
そうなのだ。そこにいたのは紛れもなく海竜の一種、首長竜であった。ギリギリ鑑定が届いたが、名前はイベントプレシオとなっている。
そして、敵を示すマーカーが表示されたのだった。間違いなく、あれが俺たちの船を襲った謎の怪物の正体だろう。
「す、すげー。首長竜見ちゃったよ!」
俺はそこそこ恐竜が好きだ。特に首長竜なんて超メジャーな海竜だし、興奮しない訳がなかった。
かつてないほど素早くスクショを撮ってしまった。モンス達の可愛いショットを収める時よりも、動きが良かったかもしれん。
いやー、このゲームをやってて本当に良かった。こんな間近でプレシオサウルスを見れるだなんて!
「待て。となると、このシダの森って……」
勝手に古代風の森とか呼んでたが、本当に古代の森なのだろうか? メガネウラが居ることを考えれば、その可能性は高いだろう。
「……ティラノとか、居ちゃったり?」
メッチャ怖い。だけど、メッチャ見たい! これは、死に戻り覚悟で探検するしかないだろう! だって、恐竜だよ?
「これは燃えてきたぁぁ!」
絶対に恐竜を見付けてやる! そして、スクショを撮るのだ!